#011「想像力」
#011「想像力」
@シュエットの家、ビッキーの部屋
フィッシャー「ビッキーの力加減を調節できるスイッチがあれば良いのに」
東海林「本体に付属してると、操作するときに危険ではありませんか? 自分なら、リモートコントロールできるようにします」
フィッシャー「アッ、それが良いな。――何で、こんな話になったんだっけ?」
東海林「ビッキー怪力伝説の件からですよ、フィッシャー。泥酔した勢いで、空手チョップの要領でリビングのガラステーブルを粉々にして、そのままソファーで熟睡した話に」
フィッシャー「あのときは、怪我の手当てに一苦労したんだ」
東海林「聞きました。――それから、留守に忍び込んで胸ポケットに貴重品を隠匿してたカンガルー亜人を撃退しようと、踵落としと回し蹴りで肩甲骨と肋骨に罅を入れ、大手柄だが過剰防衛だと厳重注意された話に」
フィッシャー「撃退後に帰ってきたシュエットは、思わず床で苦悶する犯人に同情したんだ。忍び込んだ先が悪かったとしか言えないよ。犯人も、ツイてない」
東海林「それも聞きました。計画的な犯行の割には、リサーチ不足の感が否めないところです。――あとは、本棚の中身を入ったまま持ち上げ、書斎の配置転換を短時間で終了させた話」
フィッシャー「書斎の模様替えでは大活躍だったけど、そのあとに俺の部屋も片付けようとしたのは、いただけなかった」
東海林「自分としても、そのまま片付ければ良かったと思いますけど?」
フィッシャー「駄目だよ。俺の基地は絶妙なバランスで保たれてるんだから。デリケートに扱ってくれなくっちゃ」
ビクトリア「オイ。私を起こすという任務を忘れてないか?」
東海林・フィッシャー、ビクトリアのほうに注目。
東海林「アッ、おはようございます」
フィッシャー「目を覚ましたな、スプラッタ娘。このクリーチャー・バスターが相手だ。狼の毛皮をストールにしてやる」
ビクトリア「猪口才な小僧め。貴様の鰭こそ、姿煮にしてくれるわ。覚悟しろ」
東海林「捨て身すぎませんか、二人とも」
――映画の世界観を引き摺ってる。朝からパワフルだな。超展開すぎて、ついていけない。
*
@シュエットの家、テラス
シュエット「特異体質の身体を役立てるにしても、フライにされるのは嫌ですから、再生される羽毛で勘弁して欲しいところです」
東海林「大丈夫ですよ、シュエット。孤立無援状態になることは、まず有り得ませんから」
♪固定電話のベルの音。
シュエット「あくまでフィクションとして楽しむに限りますね。電話に出てきます」
シュエット、立ち上がり、リビングに戻ろうとする。
東海林「出版社からでしょうか?」
シュエット「どうでしょう。原稿の進捗状況については、この前すべて話したので、違うかもしれません。いずれにせよ、出てみるまで分かりません」
――蓋を開けるまで判別できない。シュレーディンガーの猫だったかな? いや、違ったか。まぁ、ここは「神はサイコロ遊びをしない」ということで。




