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第96話「選ばれし少女、エレノイア(1)」


 原初の神殿を訪れた俺は、テオと共に神殿の一室へ通された。


 案内してくれた年配の男性神官によれば、「エレノイア様は現在『神託の間』にて、日課である『昼の祈り』を捧げておられます。こちらでしばらくお待ちくださいませ」とのこと。



 部屋に入ってすぐ俺の目を引いたのは、美しいグラデーションのステンドグラスが上部にはめ込まれた、アーチ状の大きな窓。

 午後の柔らかな日差しがステンドグラスで色づき、優しく室内へ降り注いでいる。


 上品なクロスがかかったテーブルや椅子など、置かれている家具の感じから判断すると、おそらく来客用として使われている部屋なのだろう。




 神官が用意してくれた良い香りの紅茶を片手に椅子にかけ、のんびり雑談しつつ待つうち、俺はふと「なぜテオがエレノイアに会いに来たのか?」という理由を知らないことに気付いた。


「なぁテオ、お前の用事って何なんだ?」

「んー……エレノイアから、ちょっとした依頼クエスト引き受けててさー」

依頼クエストって?」

「ないしょ! 冒険者には守秘義務ってやつがあるから、詳しくは依頼主の許可なしじゃ教えらんないぜっ」

「そうか……」


 いったいどのような依頼クエストなのか少し気になる俺だったが、無理に聞き出すのもどうかと思い、それ以上は何も聞かなかった。





**************************************





「お越しいただき有難うございます、タクト様、テオ様」


 20分ほどで、先程の神官に付き添われた神託の巫女・エレノイアが姿を見せた。

 お互い形式的な挨拶を済ませたあと、テオが用事を切り出す。


「とりあえずコレ、今回分ねー」

「まぁ有難うございます!」


 テオが魔法鞄(マジカルバッグ)から取り出したのは、大人が両手で抱えても余るほど大きな大きな紙包み。それを目にしたエレノイアは、パッと顔をほころばせた。


「詳しい説明は、一緒にメモで付けといたから。今回も色々と掘り出し物あったし、たぶん気に入ると思うぜっ!」

「楽しみですわ。報酬はいつも通り、冒険者ギルド経由でお受け取りください」

「OK! 次回はどうする?」

「そちらもいつも通りでお願いできれば。急ぎではありませんので、気が向いた時にでもまたよろしくお願いいたしますね」

「りょーかいっ」


「そうそう、別件でタクト様へお話したい事がありまして……」


 エレノイアは付き添いの男性神官に、受け取った包みを預けて下がるように命じ、部屋にはエレノイアと俺とテオだけが残った。






 改めて3人が席についたところで、俺がたずねる。


「エレノイア様、お話ってなんでしょうか?」

「はい……」


 少し気まずそうな顔をしたエレノイアは、意を決したようにうなずいてから、ゆっくりと口を開いた。



「……先日神殿にいらしたダガルガ様より、小鬼こおに洞穴ほらあなの浄化の経緯いきさつなどについて、色々と伺ったのですが……わたくしがタクト様へ、ご自分の正体をダガルガ様へも明かさぬよう申したばかりに、かえって事態を混乱させてしまったようで……心よりお詫び申し上げます」


 深く頭を下げるエレノイアに、俺は戸惑う。


「そんな謝らないでください! エレノイア様は悪くないですよ、むしろ俺が――」

「いえ、責任は全てわたくしにございますわ! わたくしがもっとダガルガ様を信用してさえいればこのような事態には――」

「それさー、俺もダガルガに言われた!」


 テオが苦笑いしながら言った言葉に、きょとんとするエレノイア。


「あら……テオ様も?」

「うん。『水くせぇんだよ! 最初っから頼れ!』って、すっごい怒られた」

わたくしもですわ!」

「え?! ダガルガさん、エレノイア様のことも怒ったんですか?」

「そうなんです。あの時のダガルガ様は……」



 思い出を語り合っているうちに、場の雰囲気はいつの間にか和やかなものへと変わっていたのだった。


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