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第80話「ナディと、明かされた謎(5)」

 

 俺は『手作りの片手剣』を壊すことに決めた。

 だが何が起きるか分からないため、「絶対立ち合うっ!」と言い張るテオを除き、ネレディとナディには先に別荘へと帰ってもらうことに。


 場所は引き続きヒュージスライムがいた草原。ここならば市街地までは距離があるし、万が一の事態でもどうにかなるだろうと思ったのだ。




 ネレディが別荘に到着する頃まで数十分ほど待ったところで、俺が立ち上がった。


「じゃ、いくぞ」


 笑顔で「OK!」と答えたテオは、何があってもすぐ対処できるよう、少し離れたところで待機している。





 俺はおもむろに剣を抜いて構える。 



 辺りを包む、凛とした静寂。


 頬に感じる冷たい夜の空気が心地よい中。

 ただただ全身の神経を研ぎ澄まし、魔術を発動するのと同じ要領で、握りしめた剣へと『光の魔力』を集めるイメージを固めていく。


 白い光が剣へ流れ込んでいくのにつれ、刀身には細いヒビが入り始めた。



 まだだ……まだいける……。


 そんな事を考えつつ、ひたすら魔力を注ぎ続けていると。





――パリンッ!



 限界まで魔力を溜めこんだ剣が勢いよく割れ、光の粒となり飛び散った。





「これは……!!」

 

 驚きの声が自然とあがる。

 俺の手の中には、ゲームでも見たことがない1本の剣が残されていたのだ。



 純白の刀身は淡い輝きを放ち、どこか威厳と気高さを感じる。

 片翼を模したような形状の金色のつば部分には、透き通るように白くつやめく宝石が1つはまっている。


 その吸い込まれそうなほどの美しさに、ほんの少しだけ見とれた後、俺は剣を鑑定してみた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・

名前 勇者のつるぎ/第1段階

種別 片手剣

売却目安価格 非売品(売却&譲渡不可能)


 ■説明■

物理攻撃力+100

勇者専用装備


 ■神の一言メモ■

これぞ本当のワシの力作じゃ!!

装備者である勇者が光の魔力を注ぐことで、真の姿を解放するんじゃぞッ!

……ほれ、はよ光の魔力を注いでみるがよい!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「勇者のつるぎッ!?」


 駆け寄ってきたテオも驚く。


「何でも光の魔力を注ぐと、真の姿を解放するらしいぞ!」

「マジで?! やってみようぜ!」

「ああ、そうだな!」



 早速剣をかざし、先程と同じように光の魔力を剣へと注ぐと。




――キラーッ!!




 勢いよく剣全体が輝き始める。


 次の瞬間、金色の翼は大きく羽ばたき、そして刀身は神々しいまでの眩しさをたたえた清らかな白の光へと姿を変えた。



「「……!!」」


 呆気にとられ、俺達2人は言葉を失う。



 そしてテオがボソッとつぶやく。


「……光の剣……昔、絵本で見たやつだ……」

「絵本って?」


 俺が聞くと、テオは剣を見つめたまま、ゆっくりと口を開いた。


「……この世界の子供ならみんな知ってる、有名な絵本なんだ。その中で勇者はちょうどこんな感じの光の剣で魔物をなぎ倒していって……最後には魔王をも打ち倒して、世界に平和を取り戻すんだよ……」

「そういえば、原初の神殿のイアンもそんなことを言ってたな……」 




 しばらく無言で剣を見つめる俺とテオ。




 すると急にフッと剣の光が消え、元の『勇者のつるぎ』の姿へと戻った。


「あれ?」


 再び俺が魔力を注ごうとしても、剣は全く反応しない。

 気が付けばいつのまにか辺りの白い光も消えており、火球ファイアオーブの明かりだけが残っている。


 俺は神様にたずねようと、慌てて剣を鑑定する。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ■神の一言メモ■

ふぉっふぉっふぉっ、安心せい。

ただのMP切れじゃw

真の姿を保つには結構魔力が必要じゃからの、解放するのは「ここぞ!」という時だけにしておくがよいぞ!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「なんだ、MP切れか」


 俺がホッと安心したのと同時に、鑑定画面の『一言メモ』が更新される。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ■神の一言メモ■

にしてものう、スキル【意思疎通】の使用者を見つけるのが早すぎんか?

ワシとしてはもうちょっとお主に悩んでほしかったんじゃぞ?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「いやいや、十分悩みましたって――」


 画面更新。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ■神の一言メモ■

足りんわッ!!

長ァ~~い時を永遠に生き続けるワシは退屈しまくってるんじゃぞ?

お主らが悩み続ける姿は面白くてのう……ひさびさに良い暇つぶしになったわい!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「……暇つぶし?!」


 思わず俺が目を見開いたところで、慌てるように画面が消えた。




 ほんのちょっとだけ、神様への不信感が増したかもしれない。


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