第79話「ナディと、明かされた謎(4)」
手作りの片手剣の製作者である神様から、『手作りの片手剣』に凄い能力が隠されていることだけは教えてもらったものの、肝心の能力詳細までは分からず仕舞い。
まさかこのタイミングでひょっこり糸口が見つかると全く思っていなかった俺達2人にとって、「つたえたいことがある」という言葉は意外なものだった。
「ちょっとまっててね!」
ナディは俺にそう言うと、剣に顔を近づけ「なぁに?」と話しかけた。
固唾を飲んで彼女を見つめる俺とテオ。
そしてネレディは不思議そうな顔をしながら、3人の様子を伺っている。
「それで――」
「剣はなんだって?」
ナディが顔を上げた瞬間、俺とテオは食いつくようにたずねた。
少し困ったようにナディは言う。
「あのね……タクトに、ケンをこわしてほしいみたいなの」
「け、剣を壊す?」
「なんかね、『えんりょなくハカイして』っていってる……」
これまた予想外なナディの言葉に、俺もテオもポカンとする。
ナディは言葉を続けた。
「このけんは、ただの『フーイン』で……でも、いまのタクトならフーインをこわせるはずで、ケンにめいっぱい『ひかりのまりょく』をそそいでほしいんだって! えっと……これいじょうは、フーインをとくまでいっちゃダメっていわれてるみたい」
「そうか……通訳ありがとな」
俺が礼を言うと、ナディは「えへへ」と笑ってネレディの元に駆け寄った。
「なぁタクト、さっさと封印解いてみようぜ!」
「うん……」
目を輝かせたテオが催促するが、俺の答えは曖昧だった。
煮え切らない気持ちのまま剣を抜き放ち、その刀身を見つめてみる。
雲の隙間からこぼれる淡い月明かりと、火球の温かい明かりとを受け、飾り気のない刀身は鈍く光っていた。
確かに先日、武器屋でのごたごたはあったものの、それ以外は特にトラブルを起こしているわけじゃない。
むしろ思い返してみれば、冒険初日に初めて握ってから、なんだかんだでコイツには助けられまくってるんだよな……。
今までの色んな思い出が脳内をよぎり、いざ壊すとなると、何となく躊躇してしまう。
考えがまとまらないまま、剣に埋め込まれた唯一の装飾である丸いオレンジ色の宝石を見つめ、ゆっくり問いかけてみる。
「……ほんとうに、壊していいのか?」
――キラッ
一瞬、宝石が強くきらめく。
俺にはそれが、剣からのOKサインであるように思えた。