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第63話「スラニ湿原で、資金稼ぎ(1)」


 俺とテオが『手作りの片手剣』を再度検証した結果、新たな事実も分かったものの、結局は謎が謎を呼んだだけで終わってしまった。



 2人で話し合った結果「何でかは分からないけど、武器屋にさえ近づかなければ、剣が勝手に暴走することもないだろう」と、しばらくは下手に剣を刺激せず、これまで通り過ごすことに。


 確かに神様からの「剣に秘密が隠されている」という情報は気になっている。

 だが無理に今パワーアップしなくとも、現状の戦力で十分フルーユ湖の浄化はできそうだと思っていることもあって、剣の秘密はいずれ改めて時間を作り検証することに決めた。




 ネレディ達とフルーユ湖へ出発するのは5日後。


 それまでに済ませたい急ぎの用事があるわけではないけれど、俺が作りたいと思うアイテムの製作にかかる高額な費用や、物価が高いトヴェッテでの滞在費をふまえれば、今のうちに資金稼ぎをしておいたほうがいいだろう。



 ということで俺達は、翌日から出発前日までの日中は、トヴェッテ周辺で魔物狩りをすることにしたのだ。





**************************************





 翌朝、宿を発った俺達2人は、王都の西門から塀の外に出た。


 草原を突っ切るように作られた街道を1時間ほど進んだところで、本日の目的地である『スラニ湿原』へと到着。

 広々としたスラニ湿原は、スライムの狩場として知られている。






 遥か昔。

 この湿原を1人の冒険者が偶然発見し、スライム族の魔物が多く生息していたことから、スラニ湿原と命名した。


 彼は家族や仲間らと共に、スラニ湿原近くに新しく村を開拓し、ひたすらスライムを狩ってはドロップ品を他の国へと売り歩くという日々を繰り返した。

 当時もスライムは他の地域にあまり生息が確認されておらず、スライム関連素材は大変貴重で高く売れたため、彼らは富を手に入れたのだった。


 20年後、大きくなった村を『トヴェッテ王国』と改名する。

 そしてスラニ湿原を発見した男は『トヴェッタリア1世』を名乗ることにし、トヴェッテ王国初代国王に就任したのだ。


 今日こんにちのトヴェッテの発展は、スラニ湿原の存在無しには語れないのである。






 スラニ湿原では、狩っても狩っても次から次へとスライムが湧いてくる上、出現するスライムはそこまで強くないため、スライム関連素材を効率よく入手可能だ。


 ここまで湧いてくるならば、そのうち湿原の外へスライムがあふれてきてもおかしくなさそうなものなのだが、ここのスライム達は絶対に湿原の外へ出ようとしない。


 トヴェッテ王国政府から定期的に派遣されている研究調査チームの見解によれば、どうやらスラニ湿原は「局所的に魔力が濃縮されたエリア」となっているらしい。よって魔物が生まれやすくなると。

 さらに生まれてきた魔物は濃い魔力を好むため、周辺よりも圧倒的に魔力が濃密な湿原に留まり続ける習性があるのだとか。



 とはいえ、あまりにも生まれてくるスライムの数が多くなると、さすがに湿原内には収まりきらなくなってしまう可能性も0ではないだろう。


 そこで素材目当てにスライムを狩りたい冒険者と、安全面的な意味で湿原外に魔物を溢れさせたくないトヴェッテ王国政府との利害が一致。

 王国政府側は、トヴェッテ冒険者ギルドを金銭面で手厚くバックアップするなど、国内での冒険者の活動を支援しているのだ。


 スライムを狩れる実力さえあれば安定した収入が継続して得られるため、トヴェッテは冒険者の拠点として人気となっている。

 ただしどんなに頑張っても一定以上はなかなか稼げないことから、もっと()()したい層には物足りないようだが。





 湿原入口に建っているのは、『トヴェッテ王国政府 スラニ湿原出張所』と書かれた、1階建ての白っぽい建物。


 王国から派遣された警備員や事務員が交代で24時間常駐している他、冒険者ギルドの派遣職員が素材買取を行ったり、商業ギルドの派遣職員が応急薬販売を行ったりと、主に冒険者をサポートする施設となっている。

 またスライム利権を狙う他国への牽制という意味もあるらしい。

 



 俺とテオが出張所の横を素通りし、湿原に足を踏み入れた時には既に、かなりの数の冒険者パーティがスライムと戦っていた。

 スライムには魔術が有効なため、そこかしこから魔術を詠唱する声や爆発音が頻繁に聞こえてくる。



「……冒険者だらけだな……」


 思わず立ち止まってつぶやく俺。



 小鬼こおに洞穴ほらあなも、エイバスからの旅路も、共に冒険者にあまり人気が無いエリアだった。

 そのため、ここまで多くの冒険者が同時に戦っているのを、俺が実際に目にしたのは初めてだったのだ。



 テオは笑顔で言う。


「そうだねー。タクトの魔術は、しばらくお預けかな?」

「ああ……頼むぞテオ」

「もちろんっ。スライムの欠片かけら集めは任せたぜっ!」

「おう!」



 現在俺が使える魔術は、光属性のみ。


 【光魔術】が扱えること、それはすなわち勇者の証となってしまう。

 こんなに人が多い中で使う訳にはいかないのだ。


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