表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

109/174

第109話「コべリの港と、大陸を結ぶ小船(5)」


 小さな港町・コベリを訪れた俺とテオは、水産加工所オーナーのマルガへ掛け合った結果、小型漁船に乗せてもらうことができたのだった。




 俺達が乗る船は、明るいうちに対岸の街の港へ到着。


 港周辺にはコベリの街と同じように石造りの建物がそこそこ並んではいるのだが、船から見える範囲に人の気配はほとんどなく、コベリ以上にさびれてしまっているようだ。


 マルガによれば、ここもコベリ同様いわゆる『港町――港を中心として発達した町――』で、かつては大陸を渡る旅人相手の商売で栄えていたものの、魔物の動きが活発になったせいで急速に街の過疎化が進んでいるらしい。






 俺とテオを陸へ降ろしてすぐ、1人船に残ったマルガが口を開く。


「……じゃアタイ、このままコベリに帰るよ」

「マルガ、ありがとねー」


 笑顔で礼を言うテオ。

 明るめの声で「ああ」と軽く受けるマルガ。



 続けて俺も感謝の言葉を述べる。


「ありがとうございました。帆船航行用魔導具の操作させてもらえたの、すごく良い経験になりました!」

「そうかい。初めて航行用魔導具を触ってみた感想は?」

「難しかったです……とにかくマルガさんに教えてもらった通り調整しようと頑張ってたら、何が何だか分からないうちに、あっという間に海峡を渡り終えてたような感じでして――」


 ぷっと吹き出すマルガ。


「そりゃそうだろ! 生まれた頃から船に乗ってたアタイだって、自信もって操れるようになるまでにゃ、修行に5年はかかってんだ。たった1時間ぽっちで分かってたまるかっての!」

「で、ですよねー。ははは……」


 俺が愛想笑いでごまかそうとしたところ、マルガの顔が少し真剣になった。


「……まぁでも……タクトの魔導具操作、初めてにしちゃなかなか悪くなかったよ」

「本当ですか」

「お世辞は嫌いな性分でね。だいたいよぉ、見込みねぇと思う奴に、アタイの大事な船の設備を1時間も触らせっぱなしにするわきゃねぇだろ?」

「ありがとうございます!」

「だからよぉ……もし、本気で一人前の船乗りになりたいってなら、タクトにだったら修行つけてやってもいいぜ?」

「えっ……?」


 いきなりの提案にポカンとする俺。



 マルガは照れくさそうに「()()って言ってんだろ!」と笑ってから、船を桟橋に止めている縄をほどき始めた。


「……じゃあ、アタイはそろそろ行くよ。またコベリで船に乗りたくなったら相談しな、アンタらなら喜んで乗せてってやるからさ」

「ぜひ!」

「またよろしくねー」


「まぁとにかく元気でやんな。この大陸の魔物が凶暴だってのはほんとだからよぉ……うっかりやられるなんて間抜けな真似、すんじゃねぇぞ!」



 そう言うやいなや、帆船航行用魔導具に「よっ!」と魔力をめるマルガ。

 魔石がほんのり緑に光ったかと思うと、風が起こって帆がふくらみ、ゆっくりと小型帆船が動き出す。


 マルガは「じゃあな!」と言い残し、再び海峡へと船を走らせていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


こちらも連載中です!
黎明のスラピュータ ~スマホもPCもなし?そんなの絶対楽しくないので、異世界幼女のおやつ係は「スライムなインターネット構築計画」を始動することにしました
Web制作会社で働くマキリが剣と魔法の異世界へ。だが待っていたのは、想像と程遠い“現実”だけ。楽しみ全てを断たれ、どこかむなしい彼女の日々を変えたのは……幼い王女のおやつ係に任命されたマキリが、スマホもパソコンも存在しない世界に「インターネット」を広めるべく奮闘する物語。

ランキングサイトに参加中です。
もしこの作品が気に入ったら、クリックお願いします!
小説家になろう 勝手にランキング
(投票は、1日1回までカウント)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ