第94話 メルリアさんが仲間に加わった
前回のあらすじ
朝から外が騒がしい
俺たちが狙われているらしい
メルリアさんを助けに行く
(上だ!)
「なんだ!」
「上?!」
きっかり5分経ったタイミングで俺は部屋の前に立つ兵士に念話を送り、それを受け取った兵士達はまんまと引っかかり二人とも視線を上に向けてしまった。
その後、俺たちから見て奥側にいた兵士がひとりでに倒れ伏し、手前にいた兵士は上を見ていた隙にスキルキャットウォークで少女が音もなく近寄り、瞬く間に首に取りつき締め上げて気絶させた。
二人の兵士を無力化したところで透明化していた姫姉が姿を現し、俺と姫姉で倒れている兵士たちの手足を簡単には解けない様に縛り上げた。
「さて、この位で良いかな。それじゃ入ろっか」
一仕事終えた感を出しながら姫姉はそう言って兵士たちが見張っていた部屋の扉を開け中に入って行った。
「ヒメナ様! それにユーマ様方もどうしてこちらに」
部屋に入るといの一番に俺たちに気付いたメルリアさんが驚きながら声を掛けてきた。
「城内の様子がおかしい上に私たちが狙われてるみたいだったので助けて味方になって貰いに来ました」
「それは勿論、協力させて頂きますが具体的にはどうするつもりなのですか?」
メルリアさんは姫姉のお願いに二つ返事で了承し、今後の動きについての聞いて来た。
「その辺は優君が」
姫姉は俺に目配せをしながらそう言い、話の主導権を俺に移譲した。
「ここからは俺が話します。まず初めに俺たちはあくまでメルリアさんの力を借りに来ただけです。ここに居る人達は自由にして貰って構いません。俺達はメルリアさんと一緒にこの騒動の原因を取り除きに行きたいと思います。良いですかメルリアさん?」
俺はまず後ろの方で話を聞いている他の捕らえられていた人たちに向けて何も頼まないと言い安心させた。それを聞いた人たちはホッとした様子でピリピリした空気が少しだけだが薄れた。
その後俺はメルリアさんに今後の行動について簡単に伝え、その方針で動いて良いか聞いた。
「はい、構いません。ですが犯人の目星は付いているのですか?」
「ええ、犯人は俺たちを怨んでるみたいですし。この城で俺たちを怨んでいて騎士を動かせそうなのは王女様か第四師団団長一派、でも騎士たちは俺たちの居場所を知らないみたいだったので十中八九第四師団団長一派の仕業でしょう。彼の居場所は分かっているので行きましょう」
メルリアさんに誰が今回の騒動の主導者か尋ねられ、俺は予想ではあるが確信をもって第四師団団長の名前を挙げた。
「分かりました、同じ騎士を切るのは忍びないですが仕方がありません」
「よろしくお願いします。それではあまり時間も無いので行きましょう」
俺はメルリアさんの覚悟に感謝の言葉を述べた後準備もそこそこに俺たちは部屋を出て第四師団団長がいる場所に向けて歩み出した。
第四師団団長のいる場所までは俺がスキル透視を使い曲がり角の向こう側や部屋の中などを視て比較的安全な道を探しながら進んだ。だが第四師団団長の下に近付くにつれ見張りの数も増え、遂に誰にも見つからずに辿り着くルートが無くなってしまった。
「皆、ここから見つからずに行くことは出来そうにないから戦闘を覚悟してくれ」
俺の言葉を聞き全員の顔が少し強張った。
「それじゃこれからの作戦を考えたから聞いてくれ。俺たちはこのまま三階まで階段を昇って、そこを右に曲がってそのまま真っ直ぐ行き、突き当りの部屋に突撃する。部屋に入ったら第四師団団長と護衛の騎士四人がいるんで速攻で無力化。田中さんは俺たちの後に付いてきて部屋に入ったらその娘と一緒に扉を閉めて下さい」
俺は早口で作戦を伝えると皆内容を理解したのか首を縦に振った。
「ああ、それと姫姉は透明化と影移動で隠れながら俺たちを援護してくれ」
「わかったわ。それじゃ優君、影借りるね」
姫姉はそう言い俺の影の上に立つとそのまま俺の影の中に沈んでいった。
姫姉が影の中に入ったタイミングで俺たちは行動を開始した。先頭にいる俺は曲がり角などを透視して出来るだけ敵に気付かれない様に気を付けながら移動をして何とか三階まで誰にも気付かれる事無く昇って来る事が出来た。
しかし第四師団団長がいる部屋までの一直線の廊下には複数の兵士が見張っており、どう頑張っても見つからずに通り過ぎることは出来そうになかった。
なので俺はスキルスティールでまず兵士が持っている武器を奪い盗って無限収納仕舞い、武器を奪われて驚いている兵士を姫姉は背後から俺は前から襲撃を掛けた。
いきなり現れた俺に兵士たちは驚きながらも何とか対応しようと殴りかかって来たが、俺は無限収納からゴーレムの腕などを出して盾にして、それを思いっきり殴って手を痛めた兵士を俺は殴って気絶させて、姫姉は背後から音も姿もなく兵士の首を締め上げて気絶させていった。
「このまま突っ込みます!」
廊下にいた兵士を姫姉と二人で全て倒した俺は後ろから走り寄って来る皆にそう言い、切り開いた廊下を一気に駆け抜けて突き当りにある部屋の扉を勢いよく開けて中に飛び込んだ。