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第92話 尋問3日目

前回のあらすじ

第四師団第三大隊の判決が決まる

第四師団団長の現在の待遇を知る

王女様と言い合いになる

 昨日王女様と喧嘩別れのようになってしまい気まずい状況になりながら尋問3日目を迎えた。俺と王女様は殆ど言葉を交わさずに尋問を淡々と進め午前中は何とか問題を起こさず乗り切った。

 午前中の尋問を終え俺たちが遅めの昼食をピリピリした空気の中食べていると慌てた様子の兵士が食堂に走り込んできた。

「伝令、伝令です! 第四師団団長が王城の牢屋への護送中に逃げ出しました! 現在第四師団団長を捜索中ですがまだ発見には至っておりません!」

 食堂に走り込んできた兵士の口からとんでもない情報が知らされた。それを聞き俺は昨日王女様との話を思い出しながらやっぱり逃げ出したなともはや感心していた。

 王女様は兵士の報告に脳が追い付いていないのかほうけていた。俺はそんな王女様をあきれながらどうするのか見ていたが、何も言葉をはっさず待ちぼうけにされている兵士が俺に視線を向けてきたので、俺から王女様に話しかけた。

「おい王女様、呆けるのはその位にしてそこの兵士に何か言ってやったらどうだ」

「えっ、えっとその……。報告ご苦労様でした、後程指示を出しますのでそれまで待機しておいてください」

 王女様は何とか言葉を絞り出し兵士にそう命じて下がらせた。


「それでどうするんだ王女様。このままだと逃げられるぞ」

「それは分かっています! ですが捜索に人を出すくらいしかないじゃないですか!」

 俺はこれからどうするのか王女様に聞くと王女様はヒステリックに叫びながら特に良い手立てがないと言った。

「他にもすることあるだろ」

「なにが出来るって言うんですか!」

「そりゃまずは逃げ出した奴の家を捜索したりとか共犯者の尋問とか付き合いがあった奴に話を聞くとか色々やることあるだろ。ただ闇雲に捜索隊を動かすのは馬鹿のやることだぞ」

 俺は創作なら最低限これ位はするだろうという事を言ってみた。

「うぅ、分かりました。貴方のいう事も尤もです。捜索隊にそうするように命じます」

 王女様は俺の意見を鵜呑みにし、俺が言ったことしか兵士に命じなかった。


 第四師団団長が逃げ出してから俺と王女様は午後の尋問を一旦取りやめ、王女様は捜索隊の指揮を取り俺は部屋に戻って来ていた。

 部屋に戻って来た俺は姫姉たちを俺の部屋に呼んで集まり、何があったか皆に話した。

「はぁそれでこんなに早くに帰って来たんだ。それで捕まえられそうなの?」

 俺の話を聞いた姫姉は第四師団団長が捕まえられそうか俺に聞いて来た。

「たぶん無理じゃないかな。第四師団団長が逃げ出せたのは護送の兵に内通者がいたからだろうし、それに王女様には人望が無い。もし第四師団団長が見つかってもそれを捕まえれるレベルの兵士が居ないんじゃないかな。実力的にも権力的にも」

「あー確かに、第四師団団長の内通者だとそこそこ立場が上の騎士が付いてそう」

 姫姉は俺の言いたいことを理解してくれていた。

「まぁそういう訳だから、もしかしたら内通者とか引き連れて復讐とかしに来そうだし気を付けようって皆に伝えとこうと思ってさ」

 俺は特に田中さんに向かって気を付ける様に伝えた。


 それから俺たちは各々の部屋に戻り、夕食の時間まで特に何事もなく過ぎて行った。

 夕食の時間になり食堂に昨日と同じく全員が揃ったところで食事の前に話したいことがあると王女様が話をし始めた。

 王女様は今日起きた第四師団団長が逃げ出したことについて色々話していたが、要約すればまだ発見には至らず、内通者の特定も出来ておらず、何もできていないことを遠まわしに言っているだけだった。

 それを聞いたウォレンさん達はアリシアさん以外誰一人として驚いておらず特に反応しなかった。ただ一人驚いていたアリシアさんも横に座っているウォレンさんやウィンダムさんたち、そして対面に座っている俺たちが驚いていないのを見て何か言いたそうだったが口を開かなかった。

 それから重苦しい空気の中夕食を皆が無言で食べ進め、最後まで言葉を交わすことなく夕食が終わった。


 夕食後王女様が先に食堂を出て行ったタイミングで我慢の限界に達したのかアリシアさんが口を開いた。

「先ほどの王女様の話ですが皆さんは知っていたんですか?」

「私は知らなかったぞ。まぁでも貴族ならあれ位のことで動じていては務まらんしな」

 ウィンダムさんはどうやら何も知らなかったが、あれほどの事では顔にも出さずにいられるらしい。ソリアさんもウィンダムさんと同じだと言い、ウォレンさんはもともと兵士から報告を受けていたと言った。

「そうか……。それでユーマ君達はなぜ驚かなかったんだ?」

「あぁそれは俺がたまたま逃亡の報告を王女様と一緒に聞いてそれを皆に話したからだ」

 俺は特に隠すことでもないのでありのまま伝えた。

「でもまだ捕まっていないことにも驚いていなかったようだが」

「それはまぁ、あの王女様なら十中八九捕まえられないと予想出来てたから皆にも気を付ける様に伝えておいたから」

「なんでそんな事が分かるんだ」

 俺の言っていることが分からないと頭に手を当てながらアリシアさんはそう言った。

「そりゃ今までの経験から兵士は王女様の命令に従わない奴ばっかりだったからとしか言いようがないな」

 俺がそう言うとアリシアさんはため息を吐きながら頭を抱えてしまった。皆はそんなアリシアさんの様子に苦笑いを浮かべながらこれ以上話すことは無いと判断しそれぞれ自分たちの部屋に戻って行った。


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