第83話 王女様と再会
前回のあらすじ
おにぎりを食べる
スライムの館でウォレンさんと会う
ウォレンさんと悪だくみ
「そうと決まれば善は急げじゃ、今から王城に向かうとするかの。儂の後について来い」
ウォレンさんはそう言うと魔道具を懐に仕舞い立ち上がって館の外へ歩き出した。俺たちもそんなウォレンさんの後をついて行った。
外に出るとウォレンさんが乗って来たであろう馬車が止まっており、ウォレンさんはそれに乗り込んだのち、俺たちも乗るように手招きをしてきた。
俺たちはそれに従いウォレンさんの馬車に同乗させて貰うことにした。
俺たちが乗り込むと馬車が動き出し始めた。馬車が動いている間、特に会話は無く10分もしない内に一度馬車が止まり再び動き出してまた止まった。
「ウォレン様、同乗の皆さま、王城に到着しました」
馬車の扉をノックしたのち扉が開かれ、御者席に座っていた男が王城に到着したことを伝えてきた。
「そうか、では行こうかの」
ウォレンさんはそう言いながら馬車を降り、俺たちも降りた。
「さてまずは謁見じゃな。そこの騎士、王女様にウォレンが謁見を申し込んでいると伝えてきてくれんかの」
ウォレンさんが城門の近くにいた騎士に声を掛けると声を掛けられた騎士は城門の詰所内にいる他の騎士に一言伝えてから王城内に急ぎ足で向かって行った。
「元気じゃのう。さて我々は彼が戻ってくるまで詰所でのんびりまたせてもらうかの」
ウォレンさんがそう言うと残っていた騎士がどうぞどうぞと詰所内の一室に俺たちを案内してくれた。
「どうぞここでお待ちください」
案内をしてくれた騎士はそう言い残し部屋を出て行った。
「さてこれからじゃがまずは謁見をするとして、もしそれまでに襲撃があれば返り討ちに。謁見まで問題が無ければ謁見後に騎士共に目にもの見せてやれ。これまでで質問は無いかの?」
「俺は特にないです」
「私も」
「僕は戦力にならないから安全な場所に居たいかな」
俺と姫姉はウォレンさんの作戦に異論はなかったが、田中さんは実力不足を理由に戦闘の参加は棄権したいみたいだった。
「そうか、まあ安心せい。儂の傍におればそうそう危険な事は無いからの。お主は儂の傍から離れんでおけばよい」
ウォレンさんは田中さんにそう言い田中さんがそれにお礼を言っていると、部屋の扉を誰かがノックしてきた。
「誰かの」
ウォレンさんが誰何すると返事が返って来た。
「先ほどウォレン様の謁見の件を王女様に伝令に行った第四師団所属のアロンです。王女様がすぐにでも謁見を受けたいとのことですので案内に来ました」
「そうか、ならすぐに向かおう。皆も準備は良いな」
ウォレンさんの問いに俺たちは頷いて返し、部屋の扉を開けて外に出た。
アロンと名乗った騎士は俺たち全員がついて来ることを確認すると先頭に立って俺たちを謁見の間まで案内をした。
謁見の間までいつ襲撃があるか分からないので俺たちは周りに気を配り続けていたがついに謁見の間まで着いてしまった。
「失礼します。ウォレン様方をお連れしました」
アロン騎士は謁見の間に待機していた他の騎士に声を掛け、騎士はそれを聞き謁見の間に入って行き、数分後戻って来た。
「準備は整っています。ウォレン様とお連れの方々、どうぞお入りください」
謁見の間から戻って来た騎士はそう言うと謁見の間の扉を開いて中に入るように促してきた。
俺は謁見の間に入る前に中をチラッと覗くと奥の玉座に座る王女様が見て取れた。それを確認した俺たちはウォレンさんを先頭に謁見の間に入って行った。
謁見の間に入って三分の二ほど進んだところでウォレンさんは片膝をついて頭を垂れた。田中さんと暗殺者の少女もそれに従いウォレンさんと同じようにした。俺と姫姉はあえて立ったまま王女様を見つめた。
「貴様らッ王族の御前だぞ! 頭を垂れんか!」
いつまで経っても頭を垂れない俺たちの態度に痺れを切らしたのか誰かが怒鳴りつけてきた。
「え、いやですけど。俺たちを誘拐して騙して自分たちの言いなりにしようとするうえ、恩を仇で返すような馬鹿を擁する王族に頭なんて下げたくないし」
「ふざけるな! 王族への暴言、万死に値するッ! 騎士共コイツ等を殺せ!!」
謁見の間の横に並んでいた男の声に周りに控えていた騎士たちが腰に携えた剣に手を掛けてじりじりと俺と姫姉ににじり寄って来た。
「事実を事実のままに言っただけでこの対応……。やっぱり何も変わってないな王女様。それでウォレンさんやってもいいんだよな」
俺は王女様を睨みつけながらそう言った後、ウォレンさんに確認を取った。
「王女様が何も言わないのであれば殺さない程度に好きにやって良いぞ」
「了解。姫姉、遠くのは任せた」
「ええ、優君は騎士の無力化お願いね」
ウォレンさんの言葉を聞き俺と姫姉は簡単に作戦を決めたのち、無限収納から武器を取り出して構えを取った。
「待ちなさい! 双方即座に武器を仕舞い、騎士たちは元の位置まで下がりなさい。これは王女命令です!」
俺たちと騎士が一触即発と言うタイミングで沈黙していた王女様がやっと口を開き、俺たちと騎士の戦闘開始に横槍を入れてきた。