第82話 ウォレンさんと再会
前回のあらすじ
温泉を楽しむ
腰に手をあて牛乳を飲む
夜はよく眠れた
「「「おにぎりで」」」
俺たちは看板娘の少女に食い気味で答えた。暗殺者の少女もおにぎりが良いと小さい声で答えた。
「皆さんおにぎりですね。それでは少々お待ちください」
看板娘の少女は厨房に俺たちの注文を伝えた後新たにやって来た客の相手をしに行った。
それから10分もしないうちに再び看板娘の少女が今度は料理を運んできた。
「お待たせしました、ベーコンエッグとスープとおにぎりです。ご注文は以上で宜しかったでしょうか?」
俺が問題ない事を伝えると看板娘の少女は一礼してから他の客に料理を運び出した。
「「「いただきます」」」
俺たちは手を合わせそう言った後まずは一口とばかりにおにぎりを手に取りかぶりついた。一口かじるとほろっと崩れ口の中に広がり。程よい熱さとほんのりとした塩味が感じられた。
おにぎりを食べ進めると中から濃い目に味付けされたオーク肉が零れ出てきた。オーク肉の味付けと白米の味が見事にマッチしていて俺は黙々と食べ進めていた。
それから俺たちはベーコンエッグやスープと一緒におにぎりを食べ、いつの間にか一人2つあったおにぎりは瞬く間に消えた。
「ご馳走様でした。さてそれじゃあとりあえずスライクさんのとこに行こうと思うんだけど……」
おにぎりを食べきり他の料理も食べ終えた俺は皆にこれからスライムの館へ行くかどうか聞いた。
「そうね、早いにこしたことは無いし。それに他にすることもないしそれでいいんじゃない」
「僕は君たちの判断に任せるよ」
姫姉と田中さんは俺の意見に賛成し、今からスライムの館へ行くことが決まった。
「それじゃそれぞれ準備して10分後に宿の前に集合で良いかな?」
俺がそう聞くと誰からも反論はなく、皆それぞれ部屋に戻って出発の準備をし始めた。
5分後、俺と田中さんは準備を終えて宿の受付で部屋の鍵を返して姫姉たちが出てくるのをのんびりと待った。
それから5分後に姫姉たちが宿から出てきて俺たちと合流した。
「優君お待たせ。田中さんもお待たせしました」
「俺も今来たところだよ」
「全然待ってないよ」
俺はデートで待っていた彼氏の常套句で答え、田中さんは普通の返しをした。
「ならよかった。それじゃあスライムの館に行きましょうか」
姫姉がそう言いながら歩き出し、俺たちもその後を追いかける様について行った。
スライムの館までの道のりでは特に襲われたり絡まれたりすることもなく普通にたどり着いた。
スライムの館の前に立つと扉が開き、中からスライクさんが出てきた。
「皆様ようこそおいでになりました。ウォレン様はまだ来られておりませんが、昼頃には来られるはずですので当館でお寛ぎください」
スライクさんに促され俺たちは館の中に入りテーブル席に座った。
「お茶を用意しますので少々お待ちください」
スライクさんはそう言い残し奥の部屋に入って行き、数分後にお盆にカップとポッドを乗せて戻って来た。スライクさんは流れるような動作で俺たちの前にカップを音もなく置いていき、そのカップの7割まで紅茶を注いで回った。
全員分の紅茶を入れ終えたところでスライクさんは奥に戻って行った。
それから俺たちはスライクさん特製の紅茶を楽しみながらお昼ごろまで待っているとスライクさんが館の扉の前まで移動しその扉を開けた。
スライクさんが開いた扉から入って来たのはウォレンさんだった。
「お待ちしておりました。お連れ様があちらでお待ちしております」
スライクさんはそう言いながら俺たちの方を手で指し、ウォレンさんはそれに頷いて返して俺たちの方に向かって歩いて来た。
「お前たちか、久しぶりじゃな。そちらの二人は初めましてかな、儂はそうじゃのう、ウォレンとだけ名乗っておこう。それでお主たちはどうして再びこの地に降り立ったのか聞かせて貰おうかの」
ウォレンさんはそう言いつつ懐から宝石の付いた四角い箱を取り出してテーブルの上に置いた。
俺はウォレンさんが出した物が何か気になってスキル鑑定を使った。
防音のオルゴール
魔道具
魔力を注ぎ蓋を開けると1メートルから5メートルまでの好きな範囲内での音を範囲外に洩れなくすることが出来る
ウォレンさんが周りに盗み聞ぎされない様に気を使ってくれていると分かった俺は全員を代表して、俺と姫姉と田中さんが次元の裂け目に吸い込まれてこっちの世界にやって来たこと、それから辺境の街グアウェストでギルドと揉めて領主に暗殺者を仕向けられたこと、そして王都に来て王国騎士に襲われたこと、それらの事を掻い摘んで話した。
「なるほどのう、一部の騎士たちがやけに騒がしいと思えばそんな事をしておったのか。それで儂を頼って来たという訳か……そろそろ王国騎士にも改革が必要か……よし分かった。面倒事はさっさと解決するに限る。ちょっくら儂と一緒に王城に行って好きなだけ暴れてよいぞ」
ウォレンさんは何か悪い笑みを浮かべながら俺たちを王城につれて行くことと、その王城で暴れても良いと言い出した。
宮廷魔導士のお許しを貰った俺と姫姉はウォレンさんにウォレンさんと同じように悪い笑みを浮かべ返した。