第77話 スライク・ロゴスショード、マジ強ぇ
前回のあらすじ
スライクさんが俺たちを覚えていた
ウォレンさんは居なかった
兵士がやって来る
「掛かって来るなら来なさい、だがその前に名乗らせて貰いましょう。私はスライク、スライク・ロゴスショード。では出でよ私のスライム達、目の前の敵を無力化しなさい!」
スライクさんが騎士に名乗りを上げスライムに命令を出すと、何処からともなく無数のスライムが騎士達を囲む様に現れて騎士達に飛び掛かった。
いきなりの出来事に騎士達は抵抗らしい抵抗を出来ずにスライムに取り付かれ、殆どの騎士は地べたを転がる事しか出来なくなっていた。
「貴様ァ何をしタァ! たかがスライム如きが調子に乗るな!」
一番前に居た騎士は優秀なのか襲い掛かって来るスライムを避けたり、剣で叩いて落としたりしながらスライクさんへ怒鳴った。
「たかがスライムと侮られては困ります。彼らはこの私が手ずから育て上げた最強の軍隊です。この位、彼らには朝飯前の事。まだまだこれからですよ!」
スライクさんがそう言うとスライム達はより一層数を増し、次々に騎士達に取り付いて無力化していった。
「くっ、だが今頃貴様が匿っている犯罪者供は別働隊が確保しているはずだァ! そうなったら形成逆転だ!」
「それは彼らの事ですか?」
スライクさんは扉を開きながら目の前の騎士にそう言った。
時は戻って騎士がスライクさんと話している頃、俺たちは館の奥で迎撃の準備をしていた。
俺はスキル形状変化を使い窓から入って来ると上からミスリルの板が落ちて来る罠を仕掛けて回りつつ、ちょくちょくスライクさんの方も透視を使い覗き見てていた。
あとはそのミスリルに姫姉のスキル付与強化で威力強化と強度強化を掛けて貰えば完成。
それから俺はスライクさんの方を眺めながら館の周りの警戒をしていると騎士達が抜剣し攻撃を開始した。
それに合わせて館の周りに配置された騎士達も動き出し、分散して一斉に窓から入って来て意図も簡単に罠に掛かってミスリルの下敷きになっていた。
「これは予想外だなぁ。まさかこうも簡単に引っかかるとは……」
俺はあまりの呆気なさについ言葉を漏らすと、他の皆も苦笑いを浮かべていた。
それから俺たちはミスリルの下敷きにされた騎士達の装備を剥ぎ取り手足を拘束をしてからスライクさんに制圧完了と念話で送り、気絶している騎士達を扉の前まで運んだ。
そしてスライクさんが扉を開けるまで俺たちは扉の前で待機していた。
そして今に至る。
「そんな馬鹿な、これだけの騎士達がこの数分で倒されるなどそんな馬鹿な事があるかァ! 巫山戯るなァ殺してやる!」
目の前にいる騎士は現実を受け入れられないのか叫びながらスライクさんに斬り掛かっていった。だがそれは下策中の下策、足元から数体のスライムが騎士の体を包み込んでいき瞬く間に騎士の動きを封じた。
「クソッ離せ! 貴様らこの俺様にこんな事してどうなるか分かっているのか! 俺は第四師団の団長だぞ!」
第四師団団長と名乗って男は俺たちを睨みつけてきた。
「第四師団か……、何処かで聞いた様な気が」
俺は第四師団という言葉に既視感を感じ記憶を掘り返して思い出した。
「あぁ、そうだ俺を嘘つき呼ばわりして襲って来た馬鹿の集まりだ」
俺がポンと手を叩きながらそう言うと目の前の第四師団団長の顔が真っ赤に染まっていった。
「貴様ァ俺様を馬鹿だと! 殺すッ貴様だけはこの手でぶっ殺す!」
第四師団団長はそう言いながらどうにかスライムの拘束を解こうと転がり回っている。
「少し五月蝿いですね、彼の口を塞いで下さい」
スライクさんは目の前で転げ回っている第四師団団長を一瞥した後スライムにそうお願いをして、スライムはそれに応えて男の口まで覆った。
「さてここまでの騒ぎになると他にも兵士達が来るかもしれません。もしもに備えて彼らの装備を一応外させて貰いましょう」
俺たちはスライクさんの指示に従いスライムに拘束された騎士達の装備を外して回った。
全員の装備を外し終え少し小細工をした頃に騒ぎを聞きつけたであろう兵士達がこちらにやって来た。
「ここで大規模な戦闘が起こっているとの通報でやって来た……んだが、これは一体?」
兵士達の前には装備を外され気絶させられた小汚い男達が無数に倒れ伏している。
「これはこれは兵士の方ですか。実はこの方達が襲い掛かって来まして、たまたま近くにいた彼らの助力によって私は命を救われました」
スライクさんは目の前の兵士達に俺たちが命の恩人だと訴えながら重要な所を暈して話した。
「そ、そうか。これほどの相手を無傷で切り抜けるとは君たちは冒険者か?」
兵士の問いに俺はギルドカードを提示しながら答えた。
「最近登録したばかりでそこまでギルドランクは高くないですが。今回は不意を付けたので上手くいっただけですよ」
「Dランクか、最近登録したにしてはランクが高いな。まぁ良いだろう。さてと先ずはコイツらを牢に連れて行くんだが人数が足りないし、起きるまで時間もかかりそうだな。よし君は本部から応援を呼んで来てくれ」
兵士は他の兵士にそう命じ、命じられた兵士は応援を呼ぶために走り去って行った。
「それでは一応話を聞きたいので詰所の方まで同行して貰うが良いかな?」
応援を呼ぶ命令を出した兵士はこっちに向き直り俺たちにそう聞いて来た。