第75話 信用のできる人は……
前回のあらすじ
ギルドマスターと話す
ギルドで夜ご飯
ギルドの仮眠室を借りる
遠くから聞こえる喧騒により俺は目を覚ました。
「ふぁぁ、よく寝た」
「よく寝てたね、もうお昼前だよ」
俺が起きた事に気が付いた田中さんが話しかけてきた。
田中さんに言われて俺は軽く外を透視して見ると外は明るく、人は忙しなく動き回っていた。
「すいません、直ぐに着替えます」
「そんなに急がなくても大丈夫だよ。朝食を食べてる時にギルドマスターと会って、夕方までならここを使って良いって言われたから」
ギルドマスターは疲れている俺たちに気を利かせてくれたらしい、あとでお礼を言っておかないとな。
「そうですか、まぁでも目も覚めたのでとりあえず着替えて向こうと合流しましょう」
俺の言葉に田中さんは同意し俺が着替えを終えた後、俺たちは隣にいる姫姉達と合流して酒場までやってきた。
酒場は昼前なのか客が疎らにしかおらず、昨日の騒がしさが嘘かのように静かだった。
「えーとそれじゃあこれからどうするか話し合いたいんだけど」
俺がそう切り出すと姫姉が手を挙げた。
「私にいい考えがあるわ。まず優君が念話を使ってこの国のトップのお姫様を呼び出す」
「なるほど、それで」
「以上よ」
俺が続きを聞くと姫姉はそう言って締めくくった。
「以上、ってそこから先は何も無いのかよ」
「えぇ、だってお姫様さえ呼び出してこの状況を伝えればある程度はマシになるでしょ」
「まぁたしかに一理はあるけど、あのお姫様にそこまでの求心力があるとは思えない。それに距離的な問題なのかここからお姫様に念話が届かない」
悲しい事に俺たちが知っているお姫様には全兵士に言う事を聞かせるカリスマ性を持っているとは思えない。それに俺たちは彼女をあまり信用していない。
「そう、なら一旦私の意見は無しで」
「ちょっといいかな?」
俺たちが一通り話し終えると田中さんが口を開き、俺に問い掛けて来た。
「何ですか田中さん」
「君が持っていたあの勲章って凄い物だよね?」
田中さんが言っているのは多分飛龍討伐勲章の事だろう。
「まぁそこそこじゃないでしょうか」
「ならそれを見せて王城に入れてもらえばいいんじゃないかな」
「あぁその案ですか、実はそれも考えたんですけど。真正面から行くと入り口にいる衛兵によってはリスクが大き過ぎて、あまりいい案じゃ無いんですよね」
それにあの勲章っていい思い出がないから使いたくないんだよな、偽物扱いや玩具扱いされてるし。
「そっか、昨日襲って来た人達の仲間の可能性があるのか。流石に運任せには出来ないね、ゴメン。僕の意見はやめとこう」
田中さんの意見も上手くいく希望が持てず、良い案が出てこない。ここは考え方を変えるしかない。
「自分たちでどうにも出来ないとなると信用できる人を探すしか無いんだけど、この国に信用できる知ってる人が少なすぎる」
「そうなのかい?」
悲しい事に俺たちが知り合った人の殆どが王城で働く人で、王城に入らないと会うこともままならない人達ばかりだった。
「はい、私たちは一応王城から殆ど出ていなかったので街中で知っている人といえばここのギルドマスターと受付嬢と……」
「俺はカジノの人からVIPカード貰ったな、あとは……そうだ「スライムの館!」」
俺と姫姉の言葉が綺麗に被った。
「えっとそれは何だい?」
「スライム好きが集まる集会所です。あそこならなんとかなるかもしれません!」
運が良ければあそこにはあの人がいるかもしれない。
俺たちはスライムの館に行こうと立ち上がった。そのタイミングで俺のお腹が鳴った。
「その前に腹ごしらえして良い?」
俺がそう言うと皆が椅子に座り直し、昼食を注文をした。
「「「ご馳走様でした」」」
俺たちはそれぞれ注文した料理を平らげ、ギルドマスターに挨拶とお礼を言ってから今度こそスライムの館に向かうためにギルドを飛び出した。
俺たちはスライムの館がある南の商業区に向かった。道中特に問題なくスライムの館にたどり着き中に入った。
「いらっしゃいませ、ユーマ様、ヒメナ様。それとそちらの方々は初めましてですね。本日はどの様なご用件でしょうか?」
一度しか来ていないのに名前を覚えていたことに驚き俺と姫姉は戸惑っていた。それに気付いたのかスライクさんは口を開いた。
「驚かれましたか? あなた方は有名でしたので憶えていたのですよ。あとは私のスキルでもありますが」
「失礼しました、スライクさん。お久しぶりです、まさか憶えて貰えているとは光栄です」
俺はこの館の主人であるスライクさんに返事をし、握手を交わした。
「そちらの方々は初めましてですね。私はこの館で纏め役をしているスライクです。以後お見知り置きを……。さてそれにしても貴方方も色々と苦労している様ですね。お話をお伺いいたしますのでとりあえずお座りください」
スライクさんは自己紹介のあと俺たちを奥の方にあるテーブル席に案内し、座る様に促した。
「話が長くなりそうですし少しお待ち下さい。お茶をお持ちします」
スライクさんはそう言い残し奥の部屋に入って行った。
このままのペースで続けれそうです