第70話 壊されない物は無い
前回のあらすじ
食べ物を頼んだ
食べ物じゃないのが来た
ドラゴン像が活躍した
「さて、これについて説明をしてもらおうかな?」
俺は廊下の隅で震えているメイドに軽く殺気を放ちながら話しかけた。
「わ、私は何も知りません! 彼らが急に現れて魔法を放ったんです、信じてください!」
「いや嘘は聞きたくないから、さっさと本当のことだけ話してくれないかな? 俺もさ何の証拠も無しにこんな事を言ってないから。アンタが男と会話してたの見ちゃったからさ、分かるだろ?」
こんな事してると初めてこの世界に来た時にクラスメイト(名前は忘れた)が使っていたあのスキルが欲しくなってくる。アレがあればこんな面倒な尋問もしなくてすむのに……。
「本当に私は何も知らなかったんです、信じてください!」
「わかりました、ならそれを証明して下さい。ただしそれが証明できなかった場合はどうなるかわかりますよね」
俺は話す気の無いキーキー五月蝿く喚くだけのメイドに無実を証明しろと告げて放置し、気絶しているローブを纏った男の側に行き男を蹴り起こした。
「やあ、起きたかな? 起きたならさっさとなんで襲って来たか答えてね」
目覚めた男は俺の言葉を聞いて辺りを見回し、状況を理解したのか舌を噛み切ろうとした。俺は男が舌を噛み切る前に口を目掛けて蹴り込んだ。結果は男の顎が外れ碌に話す事も出来なくなって、尋問の意味をなさなくなってしまった。
「ほい、ほれほはんほかしほ!」
男は顎が外れたまま何かを訴えているが言葉になっていないので俺はこの男は放置して他のローブの人間を尋問する事にした。
次の男は舌を噛み切れないように適当に歯を圧し折って、痛みで起こした。
「っ痛ぇ! どうなってやがる!」
流石は言語翻訳、口の動きで言葉が理解できる謎仕様で男の言葉が分かる。
「目覚めましたか? それじゃキリキリ話してくださいね。なぜ俺たちを襲ったのかと、誰の指示かを」
「誰が話すか! こうなったら舌を噛み切って……歯がねぇ⁉︎ どうなってやがる」
男は舌を噛み切ろうとしたが失敗し、自分の歯が無くなっている事にやっと気付いた。
「ああ、アンタの歯は先に圧し折らせて貰ってる。これで自殺はできないだろ。わかったらさっさと俺の質問に答えてくれ」
「誰が答えるか! たとえ拷問を受けても答えねぇ!」
「そっか、なら少し痛い目にあって貰おうかな」
映像が乱れております、しばらくお待ち下さい。
「許してくれ、俺はある貴族に脅されて仕方なくやったんだ。貴賓室にいる奴を殺して来いって、しなければお前たちを国家反逆罪で捕らえると脅してきたんだ。貴賓室まではメイドが案内するからって言われて仕方なく……、それにその貴族子飼いの魔法使いも居たから」
少しボコっただけで男はベラベラと話してくれるようになった。
それにしても誰が俺たちを襲うように指示したのか気になってきた。
「でその貴族って誰なんだ?」
「それはこの国の財務を仕切っている所のNo.3ガネトリー・ダイカーン様だ」
聞いた事も無いな、まあ元々この国の貴族なんて殆ど知らないのだけれど。こういう時はウィンダムさんに聞くに限る。
「という事で、ガネトリー・ダイカーンって誰が知ってますか?」
「お前、急に戻って来たと思ったらいきなり質問か。まぁ良いが、確かそいつは西部地方にある領地の徴税官のまとめ役だったはずだ。私が引退した後に就任したらしいからそれくらいしか情報は無いな」
ウィンダムさんでもあまり知らない人だったらしい。でも西部地方にある領地の徴税官のまとめ役という事は金が絡む厄介ごとの予感が……。
「そうですか、まぁありがとうございます。それじゃ尋問してきます」
それから俺と姫姉はローブを纏った男達を一人ずつ起こして尋問していき、全員の尋問が終わる頃にやっと衛兵がやって来た。
「この騒ぎは一体なんだ! そこのお前達ッ逮捕する!」
聞いただけで馬鹿だと分かる発言をしながら俺たちに衛兵が掴みかかってきた。
俺はもう何度目になるのか無限収納からドラゴンのミスリル像を目の前に取り出し掴みかかって来た衛兵と距離を取った。
「あーえーっと、俺たちは被害者だ、俺たちはそこに転がっているローブを纏った奴らに襲われて仕方なく返り討ちにしただけだ。あとアンタら来るの遅すぎるぞ、よくそんなんで衛兵やってられるな。それともアンタらもそいつらの仲間か?」
俺は衛兵達に聞こえるように大声かつ棒読みで話しかけた。
衛兵達は初めドラゴンのミスリル像に驚いていたが俺の言葉を聞いて肩を震わせ今すぐにも腰の剣を抜こうと手を添え出して一番前の衛兵が口を開き怒鳴った。
「巫山戯るなぁ! 貴様らの言い分が正しい訳が無い! 貴様らは国家反逆罪でこの場で殺す!」
清々しいくらいにはっきりと俺たちを殺すと宣言した衛兵は腰の剣を抜きドラゴンのミスリル像に斬りつけた。
ドラゴン像はさっきの戦闘でそこら辺にひび割れや欠けた跡が残っていて、衛兵の剣戟で簡単に壊れていった。
「どうだ、我が剣であればこんなもの紙切れ同然! さっさと降参しろ!」
衛兵はそう叫びながら遂にドラゴン像をバラバラに壊した。そしてその奥にいる俺とウィンダムさんが並んで立っているのを見て顔を引きつらせた。
まだ感染してないです