第69話 怪しい奴は天井裏に潜みがち
前回のあらすじ
ワイバーンに乗る
途中でラーメンを食べる
王都に着いた
「さてあれから一時間くらい待たされているんだが、これいつまで続くんだ?」
待たされ飽きた俺は呑気に読書をしているウィンダムさんに話しかけた。
「たぶんあと半刻ほど待たされることになるだろうな」
ウィンダムさんは本から目を離さずに答えた。
「半刻ほどってことは、あと一時間くらい待たされるのか。そんなに待つなら何かつまめるものでも頼むかな。みんなは何かある?」
あと一時間くらい待たされると知った俺は、流石に小腹が空いてきたので何か頼むついでに他の人の分も聞いた。
「私はパス」
「私は護衛ですので遠慮します」
「私も遠慮しておきます」
「私は本が汚れないものを頼む」
「僕も軽い物を頼もうかな」
姫姉とアリシアさんとソリアさんが要らなくてウィンダムさんが本が汚れないもので田中さんは軽い物と。
俺は部屋の扉を開けて外に待機しているメイドさん二人に話しかけた。
「すいません長旅で少し小腹が空きまして、何か手が汚れない軽食を頂けませんか?」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
片方のメイドさんはそう言うとどこかに向かって行った。
俺はそれを見送ってから一度部屋に戻った。
それから数分経った頃、部屋の扉を誰かがノックしてきたので俺は扉を開けた。その瞬間向こう側から炎が押し寄せて来た。
「ヒャハハこれで全員焼け死んだはひっ、ド…ドラゴンッ!?」
「オレサマオマエマルカジリ」
「や、やめろ! こっちに来るなァ! ファイアウェーブ! ファイアランス! ファイアボール!」
襲撃者はそう言いながら魔法を乱射したがドラゴンには殆ど効果が無い。
それもそのはずこのドラゴンはただのミスリルでできた偽物で、声は俺が言ってるだけなのだから。
そもそもなぜこんな事をしているかと言うとそれは三十分ほど前に戻る。
待てと言われたが暇すぎるし、恒例の覗きでもするかと俺は透視を発動して部屋の外を適当に眺めていた。
すると部屋の前にいたメイドが偉そうな男と何かを話しながらこっちの部屋をチラッと見た。その後偉そうな男は何処かに歩き去って行った。
あれがなんだったのか気になりはしたが、もしかしたら恋仲な可能性もあるしあえて調べはせずに俺は他の場所も透視を続けた。
その結果この部屋の上にある天井裏に二人、両隣の部屋に三人ずつ黒いローブを纏った人が何やらコソコソとしていた。
俺は取り敢えず姫姉に念話で詳細を伝えた。
それだけ伝えただけなのに姫姉は俺の意図を汲んでか、部屋の壁や天井に付与強化を施していった。
それからメイドに頼み事をしてどうなるかを見続けていたらあれよあれよと言う間に部屋の扉の前に両隣の部屋にいた人達が集まって何かを詠唱しだした。
何となく予想をしていた俺は無限収納から威圧感のあるドラゴンのミスリル像を取り出して翼の部分で扉を覆うような盾を作るように意識してスキル形状変化を使い形を変えた。
その後扉をノックされ、ドラゴン像の腕を動かして扉を開けた。
そうしたら魔法が飛んできてドラゴンのミスリル像に直撃。けど無駄にミスリルを使ったドラゴン像が壊れるはずもなく逆に向こうを脅す事になった。←今ここ
「こんな所にドラゴンがいるはずがねぇ! ハッタリだ! 攻撃を続けろ!」
向こうからこっち側は見えないだろうが、こっちからは俺だけではあるが向こう側で焦っている人達が必死に魔法を撃っているのが見えている。
このままでも良いがやられっぱなしは性に合わないのでスキル形状変化で少しずつ部屋の外にドラゴン像を動かした。
繊細なスキル操作をしていると後ろから声がかかった。
「あの、一体何をしているんですか?」
「何って、襲われているので迎撃しているんですけど」
俺は振り返らずにそう答えた。
「いえそれは理解しています。それよりもその動いている物が何かを知りたいのですが」
「これは……俺が暇つぶしに作ったミスリル像、ですかね。まあ面倒なことはそこにいるアリシアさんにでも聞いておいて下さい。俺は迎撃に忙しいので」
俺はそれだけ言ってドラゴン像の操作に意識を向けた。
とは言えこのドラゴン像単体では何にも攻撃手段がないのでこのままでは時間稼ぎしか出来ない。
(姫姉、これ攻撃手段がないから攻撃の方お願いします)
あんな啖呵を切った手前、攻撃手段がないとはみんなの前で言いたくはないので念話で姫姉にフォローを頼んだ。
姫姉は俺の横まで来た後、一言呟いてから影の中に入って行った。
それから数分もしない内に向こう側の人達が次々と倒れていき、最後の一人も周りの異変に気付かないまま気絶させられた。
全員が動かなくなった事を姫姉が一人ずつ確認してから俺はドラゴン像を片付けて気絶した黒ローブ達の手足をミスリルで拘束して、ついでに口の中に自決用の毒物がないかも確認した後廊下の隅で震えているメイド達に話しかけた。
書く事を強いられている