第68話 安全装置が無い空の旅
前回のあらすじ
明日王都に行く
寝坊はしなかった
衛兵がマトモに対応した
「どうだ亜竜の乗り心地は」
俺と同じ亜竜の後ろに乗っているウィンダムさんが大声で話しかけて来た。
「揺れるし落ちそうで怖いです!」
俺は楽しそうにしているウィンダムさんを恨めしく思いながら叫んだ。
「だがアレよりはマシだろ」
ウィンダムさんは横で飛んでいる亜竜を指差してそう言った。
そこには亜竜の胴体から伸びた縄に吊るされ運ばれる元領主とその息子がいた。
「そうですけど、でももう少しゆっくり飛べないんですか?」
「それは無理な相談だ。今日中には王都に着きたいから、それまで我慢するんだな。と言うわけで速度アップ頼めるかな」
ウィンダムさんはもっと速度を上げるよう、亜竜を操る操竜士に頼んでいた。操竜士はそれを聞き、亜竜の速度が段々と上がっていった。
それから数時間が経過した頃、亜竜の速度が緩やかになり、亜竜が町近くの陸地に降り立った。
「この辺で一旦休憩を入れるとしよう」
ウィンダムさんがそう言い、俺たちは町に入って昼食を取ることになった。
俺たちはウィンダムさんに連れられて一軒の店に入った。
俺たちが入ったその店は昼間にしてはあまり客がおらず、店の雰囲気もどこか静かな印象だった。
だがその印象とは別に、どこからともなく空腹の腹を刺激する美味しそうなスメルが香ってきた。
「店主、取り敢えず八人分ランチを頼む。それと後から連れが六人来るからそれも頼む」
ウィンダムさんは店に入るなり店主に全員分の注文をした後、テーブル席に座った。
俺達もウィンダムさんと同じ様に席に着いて料理が出てくるのを待っていると操竜士が二人やって来た。
「お待ちどう」
二人がやって来たタイミングで料理が運ばれて来た。運ばれて来た料理は俺達が慣れ親しんだ豚骨ベースのラーメンと餃子、そしてミニ炒飯だった。
「おお、やはりここに来たらこれは必ず食べないとな」
ウィンダムさんはウキウキしながら割り箸を割って食べ始めた。俺と姫姉も同じ様に割り箸を割り、頂きますと言ってラーメンを食べ始めた。
俺達とウィンダムさんが食べ始めてからワンテンポ遅れて他の人達も俺達の見よう見まねで割り箸を割り食べようとしたが、お箸に慣れていない人達は麺を上手く掴むことが出来ずに苦戦を強いられていた。
「なあウィンダムさん、そろそろどうにかしたほうが良いんじゃないですか?」
俺は苦戦を強いられている人達を見ながらウィンダムさんにイタズラをやめる様に遠回しに言ってみた。
「そうだな、そろそろ良いか。店主よこっちの子達にフォークとスプーンを出してやってくれ」
ウィンダムさんは満足そうに笑いながら店主にそう伝え、店主は少しだけ口角を上げてフォークとスプーンを持ってきた。
「それにしてもお前達は驚かないんだな」
ウィンダムさんは俺達を見ながらそう聞いてきた。
「そりゃ誰かが教えていてもおかしくはないだろ。それに反応するとアンタが喜びそうだから、あえて何も聞かなかったんだよ」
「それでか。まあ他の者達が面白い反応をしてくれたしな」
ウィンダムさんが楽しそうにアリシアさんやソリアさん、それに操竜士の人達を見てニヤニヤしていた。
そんなウィンダムさんを見てアリシアさんが遂に口を開いた。
「ウィンダム様、少しイタズラが過ぎます。私は構いませんがソリア様にこういったことをするのはどうかと思います」
「アリシア、私は別に気にしていませんから。確かに少し恥ずかしかったですが……」
アリシアさんの言葉にソリアさんはそう言って微笑んでいたが、ソリアさんの目は笑っていなかった。
俺は触らぬ神に祟りなしと目線をそらしてラーメンを黙々と食べた。
ちなみに暗殺者の女の子は手掴みで食べようとして姫姉に止められ、箸の使い方を教えながら食べさせていた。
それから操竜士の二人が先に店を出てそれと入れ替わるように残りの操竜士の人達がやって来た。
後から来た操竜士の人達は最初からフォークとスプーンを頼んでラーメンセットを食べた。
操竜士の人達が食べ終わりウィンダムさんが支払いを手早く済ませて、俺達は王都への旅路に戻った。
午後からは亜竜の速度も緩やかになり日が沈む前に王都に辿り着いた。
王都へ辿り着いた俺達は前に使った城門とは別の衛兵などが使う専用の門から街に入っていった。
「お待ちしておりましたウィンダム様、それに皆様方。お部屋をご用意しましたのでご案内いたします」
俺達が亜竜と別れて待っていると、偉そうな衛兵が話しかけてきた。
「そうか、では頼む」
ウィンダムさんは衛兵に対して一言そう言い、衛兵の後に着いて歩き始めた。俺達はそれに従ってウィンダムさんの後に着いて行き、元領主とその息子は他の衛兵に何処かへ連れて行かれた。
それから俺達は数分ほど歩き、少し大きめの綺麗な建物の中に入って直ぐの広い部屋に通された。
「それでは皆様方、少しの間こちらでお寛ぎください」
案内をしていた衛兵は俺達をこの部屋に通した後、何処かに行ってしまった。
部屋に取り残された俺達は女性陣の着替えを済ませる為に一度部屋の外で待ち、女性陣の着替えが終わった後思い思いに寛ぎ出した。
続く……