第67話 女性の服は取り敢えず褒めておくのが無難
前回のあらすじ
ウィンダムさんと食事
ウィンダムさんと田中さんの話し合い
途中から俺たちは空気でした
「よし、みんなで王都に行こう」
ウィンダムさんは良い事を思い付いたとばかりにそう言い出した。
「いやいや、俺たちまで行く必要あります?」
「あるとも。何故なら私が面白いと感じたから!」
ウィンダムさんは俺の質問に対して真っ直ぐな目で言い切った。
「でも此処から王都までって結構遠いんじゃ……」
「安心しろ、今回は貴族の罪人を王都へ連れて行く為に亜竜を使えるはずだから、それに相乗りして行くぞ! では明日の昼に領主の館に来てくれ」
ウィンダムさんは俺達に一方的にそう伝えると食堂から出て行ってしまった。
「えーと、どうしましょうか?」
俺は田中さんにウィンダムさんとの一方的な約束について意見を求めた。
「どうしましょう? もし王都に行ったとして、勇者だった君達と違って流されて来た僕って一体どういう立場なんでしょうか?」
「あー、それは俺にはどうとも言えないですね」
俺は田中さんの質問に対してまともな答えが出てこないので、暗殺者ちゃんで遊んでいた姫姉に聞いてみた。
「そんなの同郷の人と言うしかないでしょ。それに同郷の人って言っておけば、馬鹿じゃない限りお祖父ちゃんが怖くて手出ししてこないでしょ」
姫姉は暗殺者ちゃんの髪の毛を結いながら答えた。
「そうだよな、そうするしかないよな。と言うわけで王都で田中さんは俺達の同郷の人として正直に紹介します」
それから俺たちは細かい打ち合わせをしたのち、各々部屋に戻って明日のために早めに眠りについた。
清々しい朝、朝日を浴びながら俺はいつも通りの時間に目覚めていた。
「はぁ、寝坊した事にして行かないでおこうかな」
俺が馬鹿な事を呟いて二度寝をするために布団を被り直そうとしていると、誰かに布団を奪われた。
「何を馬鹿な事を考えているの。さっさと起きて朝食食べるわよ」
俺から布団を奪った姫姉は呆れた顔でそう言った。
俺たちは食堂で手早く食事を済ませて部屋に戻って来た。
「それじゃ、着替えるから下で待っててね」
部屋を追い出された俺は無限収納から貴族の相手をした時に来た礼服に着替えて勲章もしっかり付けた。
「お待たせ。それにしてもやっぱり似合ってないわね」
着替えを終えて食堂で待っていた俺に着替えを終えた姫姉はケチをつけて来た。
「ほっとけ、そんな事は俺が一番よく知ってるよ。それにしても姫姉は何を着ても良く似合ってるね」
「そんなの当たり前でしょ。そんな事よりこの子の服を褒めてあげなさいよ」
姫姉に促されて俺は暗殺者ちゃんを見てみた。
暗殺者ちゃんが着ている服はこの世界では貴族の令嬢が着るような質の良い動きやすい黒のワンピースだった。
「良く似合ってると思うよ。けどなんで暗器を装備しているんだ?」
普通の人なら気付かないだろうけど服の至る所に武器が仕込まれている。
「ああそれね、その子がどうしても付けてたいって言うから私が服を改造してみました」
姫姉は悪びれもせずにそう言った。
「まぁ良いけどさ。それじゃちょっと早いけど田中さんを呼びに行って領主の館に行こうか」
俺は田中さんの部屋に田中さんを呼びに行き、スーツを着た田中さんを連れて俺たちは領主の館に向かった。
領主の館前に着くとそこには多くの兵士が集まっていた。
俺は近くにいた兵士に近づいて話しかけた。
「あの〜、一体どうしたんですか?」
「えーとこれはその、私の口からは申し上げにくい事でして」
「そうですか、なら話ができる人を呼んでください」
兵士は俺の質問に対して答えにくそうにしていたので、俺は上司を呼ぶように頼んだ。
「はい、只今読んで参ります」
兵士は俺に敬礼をして一目散に走っていった。
待つ事数分、俺が話しかけた兵士がアリシアさんを連れて戻って来た。
アリシアさんは俺の姿を見た途端、ため息を吐きながら話しかけて来た。
「はぁ、本当に来たのか。話はウィンダム様から聞いている。ついて来てくれ」
俺たちはアリシアさんのエスコートで領主の館に入っていった。
アリシアさんに連れられ、俺たちは領主の館の応接室に通された。そこには先客がいた。
「おう、待っていたぞ。もしかしたら来ないかと心配していたが、来てくれてよかったよ」
「ご無沙汰しております、ユーマ様方」
ウィンダムさんとソリアさんがソファから立ち上がり挨拶をして来た。
俺たちも一人ずつ挨拶をした。
「さてと、これで全員集合だな。それでは王都に向かうとするか」
全員が挨拶を終えるとウィンダムさんがいきなりそう言いだして、応接室から飛び出して行った。
俺たちもウィンダムさんの後を追うようにアリシアさんの案内で領主の館の庭にたどり着いた。
そこには普通の亜竜よりも大きな亜竜が六体と手足を縛られている領主と領主の息子が転がされていた。
「全員ついて来ているな。それじゃ亜竜について説明するぞ」
ウィンダムさんは嬉々としながら勝手に説明を始めた。
「と言う事でこの亜竜達は訓練されており、一体につき大の大人三人くらいなら余裕で運べる。だが風除けの魔道具もあるがスカートはやめた方がいいぞ」
ウィンダムさんは姫姉と暗殺者ちゃんを見ながらそう言い、姫姉達は着替えを余儀なくされた。
「さて、準備も出来たし王都に向かうとしよう」
ウィンダムさんの長々と聞かされ着替えもさせられた姫姉たちはゲンナリしながら指定された亜竜の元に向かった。
登場人物の設定などが増えてきたのでそのうちそれらを纏めて投稿するかもしれません。