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第66話 偉い人との会話は疲れる

前回のあらすじ

アリシアさんに見張られて食事

料理の味が楽しめなかった

ウィンダムさんが宿屋で待ち伏せ


「いやぁ遅かったね。君達のことだからてっきり逃げてくると思ったんだけどね」

 俺たちは宿屋で待ち伏せをしていたウィンダムさんに驚いて声が出せないでいると、ウィンダムさんはそんな俺達には目もくれずに話し続けた。

 そんな中ウィンダムさんに話しかける人がいた。

「ウィンダムさん、あまりウチの客にちょっかいを掛けないで下さい。さもないと娘に言いつけますよ」

 話し掛けたのはこの宿屋の主人兼料理人のアリシアさんやアリスちゃんのお父さんだった。

「ちょっ、それは待て! シャレにならん。私は自由を求めて来てるのにガチッガチの護衛がいたら自由が楽しめんだろうが」

「だったら大人しくしていて下さい。あと料理が出来たので早く食堂に戻って来てください」

「仕方ない、せっかくの料理が冷めてはいかん。それじゃ私は先に食堂に行って待ってるよ」

 ウィンダムさんは俺達にそう言い残しながら、アリスちゃんのお父さんに連れられて食堂に戻って行った。


 俺達は一度部屋に戻り、普段着に着替えてから食堂に向かった。

 食堂に入るとウィンダムさんが田中さんに絡んでいたが、俺達が近づくとコッチに気付いて手招きをして来た。

「待ってたよ、コッチコッチ」

 俺達は呼ばれるままにウィンダムさんと田中さんがいるテーブルに相席させて貰った。

「お待たせしましたウィンダムさん、田中さん」

 俺が代表して挨拶すると田中さんはあからさまにホッとした表情を見せた。

 それから料理を注文したのち、田中さんにウィンダムさんとの出会いについて話した。

 ウィンダムさんが元辺境伯だと言った時田中さんの顔が真っ青になったりしたが、ウィンダムさんが良い人だと知ると段々顔色も良くなった。

 その後、俺達の分の料理が運ばれて来て、みんなで料理を楽しんだ。


 それから食事も終わり、俺は気になっていた事をウィンダムさんに尋ねた。

「それでウィンダムさんは何故田中さんに絡んでたんですか?」

「何故かと聞かれたら、彼が君達と一緒に来たと知ったからかな。知りたかったのさ、帰ったはずの君達が何故またコッチ来たのかをね。けど彼は交渉が巧いね。この私の質問をのらりくらりと躱して逆に私から情報を聞き出しに来た時はビックリしたよ」

 ウィンダムさんは田中さんの事を褒めつつも自分の目的をあっさり話してくれた。

 田中さんは田中さんで褒められてもそれを誇らず、まだまだ自分は若輩者ですと返していた。

「それでウィンダムさんは俺達の事が知りたいんですよね?」

 田中さんとウィンダムさんが称賛と謙遜を繰り返していたので俺はそれに割って入り、ウィンダムさんに話しかけた。

「そうそう、君達について聴きたかったんだよ。王都での事も知っているし、あの英雄の孫がいる事もな」

「そうですか、ならウィンダムさんには俺達の事話しておきます」

 それから俺達は空間の亀裂からコッチの世界に漂流した事について事細かに話した。


「空間の亀裂から何か未知の物が流れ着く事は報告されてはいたが、あれは君達の世界と繋がっていたのか。今までは人が来たという報告はなかったが、もしかしたら他にも君達の世界からの漂流者がいるかもしれない」

 ウィンダムさんは俺達の話を聞いて色々と考え、仮説を立て出した。

 それを聞いていた姫姉が何かを思い出したかのように口を開いた。

「ねぇ優君、私達がコッチに来る前にテレビで勇者召喚の2次被害がどうとか放送してなかったけ?」

 姫姉にそう尋ねられて俺は記憶を掘り返し、なんとか思い出した。

「そういえば誓約書書かされた次の日に放送してたな。確か勇者召喚による2次被害での失踪者がいるとか言ってたはず」

「それは本当かね!」

 ウィンダムさんは俺に掴みかかりながら、真偽を確かめて来た。

「たぶん本当ですよ。国の偉いさんがそう言ってたし、それに俺らの親もそれを否定しなかったから」

「そんな、もしもこの事で英雄と敵対することになったらこの国は一瞬で塵になってしまう。その前に何か手を打たないと」

 俺が真実だと言うとウィンダムさんは頭を抱えながら今後について悩み出した。


 俺からすれば何を悩む必要があるのか疑問に感じた。

「あのーウィンダムさん、たぶん悩まなくても良いと思いますよ。俺達の国って一応は戦争をせず武力で威嚇しない事が国の方針なんで」

 それでも軍事力は世界でも上から数えた方が早いんだが、それは内緒にしておこう。

「えっ、それで国として機能するの?」

 俺が俺達の国の方針を教えるとウィンダムさんは唖然としながら聞き返して来た。

「ええ一応、俺達の世界では国として機能してますよ。そのせいで色々問題もありますが、逆にそのお陰で色々な恩恵も受けてます」

 それに武力で脅さないだけで、それ以外の方法は幾らでもある。

「そうか……、なら交渉の準備をしなくてはいけないな。君達と話せて良かった。私はこの事を王に伝えに行くので先に失礼させて頂く」

 ウィンダムさんが急いで出て行こうとした時、田中さんがウィンダムさんを呼び止めた。

「ちょっと待って下さいウィンダムさん。この事はたぶんもう話し合いが終わってると思います」

「どういう事だ? 何故そう言える?」

「僕達の国が国民にこの事を発表したからですよ。どの国でも問題が解決してから情報を国民に流すじゃないですか。つまりそういう事です。あと素人考えですが国王に報告するなら今後僕達の国との交易についての方が良いと思いますよ」

 田中さんがそう言うとウィンダムさんは一度深呼吸して落ち着き、田中さんの手を取って握手をしてからお礼を告げた。

 それからウィンダムさんはとんでもない事を言い出した。


 




コロナにかからない限り続けます

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