第62話 アリスちゃんに嫌われたかも
前回のあらすじ
バカ息子の魔法がショボい
交渉決裂
イライラが治らない
「しまった! 毛布と枕忘れてきちまった」
俺は領主の館から宿まで半分の所まで来たところで忘れ物に気付いた。
「今から戻るのも面倒だなぁ、また今度で良いか」
俺は悩んだ末、また今度取りに行くことにした。
「やっと帰ってこれた」
「「っひ!」」
俺は宿屋に入ったタイミングでため息まじりに呟くとそれを聞いてコッチを見た客が短い悲鳴を上げた。
「あ、あのお兄さん、おかえりなさい」
周りの人に悲鳴を上げられて少し心に傷を負った俺に、この宿の看板娘アリスちゃんが怯えながら話しかけてきた。
「ああ、ただいま。アリスちゃん、姫姉はいる?」
アリスちゃんにまで怯えられて心がボロボロになった俺は悲しみをこらえて姫姉が何処にいるかアリスちゃんに聞いた。
「お姉さんなら、まだ部屋から出てきてませんよ。それよりも食堂のアレを、どうにかして下さい。お願いします」
アリスちゃんは震えながらお願いをしてきた。
「食堂のアレ?」
心当たりがあり過ぎてどれの事か分からない俺は食堂に向かった。
食堂に入ると食堂のど真ん中に嫌でも目に入るドラゴン像が鎮座していた。
「っあ、コレも忘れてた。ゴメンねアリスちゃん、すぐに片付けるから」
俺は素早くドラゴン像に近付いて無限収納に放り込んだ。
「いやぁゴメンね、俺ちょっと出てくるから姫姉が起きてきたら外に行ったって言っといて」
俺はこの場の空気に耐え切れず逃げる様に宿屋を飛び出した。
「はぁ、まさかあそこまで怯えられるなんて」
俺は溜息を吐きながら冒険者ギルドに向かって歩いて行った。
冒険者ギルドに入ると時間帯も相まって殆ど人がいなかった。
俺はクエストボードを眺めて適当な常設依頼を確認して受付で受注してからギルドを後にした。
そして俺は今城門を出ていつもの森でストレスを発散するためサーチアンドデストロイで魔物を斃して回った。
一時間近く斃し続け気が付けば辺り一面ゴブリンやオーク、ウルフ系やその他の魔物の血でデコレーションされていた。
「やり過ぎたか……。はぁ、帰ろ」
俺は返り血が付いていないことを確認してから無限収納に回収した死体を確認して帰路に着いた。
最終的に斃した魔物はゴブリン59体、オーク27体、フォレストウルフ14体、ハイフォレストウルフ1体、フォレストスネーク7体、グリーンリザード4体、トレント2体だった。
城門まで戻ってきた俺はいつもの様に行列に並んで順番を待った。
十数分程待つと自分の番が回ってきた。
「次の人、身分証を」
俺は門番の指示通りギルドカードを取り出して門番に渡した。
「冒険者か、依頼か?」
「はい」
門番の質問に俺は無難に答えた。
「荷物や持ち込みは?」
「コレとコレです」
俺はただの袋にゴブリンの耳や魔石を詰めたものとマジックバッグに見える袋を見せた。
「マジックバッグか、なら違法な物が入ってないか質問するからこの水晶に触れて答えてくれ」
門番は腰の袋から水晶を取り出して軽く説明した。俺はそれに頷いて門番が取り出した水晶に手を置いた。
「それじゃあ、違法物は入ってますか?」
「いいえ」
俺がそう答えると水晶は青く光った。
「はい、大丈夫です。グアウェストへようこそ」
門番は決まり文句を言って俺は街に入った。
街に入った俺は先ずは冒険者ギルドへ依頼達成を報告に向かった。
冒険者ギルドに入ると早めに帰ってきた冒険者が受付で報告をしている姿が見えた。
俺も人が二人しか並んでいない所に並んで順番を待った。
数分もすれば俺の番が回ってきた。
「次の方どうぞ、それではギルドカードを確認しますね」
俺は受付嬢にギルドカードを渡して、受付嬢はギルドカードを専用の機械に入れて何かを確認した。
「はい、常設のゴブリン退治ですね。それでは部位と魔石などがあれば出して下さい」
「えっとゴブリン以外のも斃して量が多いので……」
俺はマジックバッグに見える方の袋を見せながら話した。
「そうでしたか。では買い取り専用の方で確認しますので、ギルドカードを持ってあちらの職員の指示に従って下さい」
俺は受付嬢の指示に従って買い取り専用のカウンターに向かった。
「すいません、こちらで依頼の報告をする様に言われてきました」
「はい、それではギルドカードを出して下さい」
俺は空いているカウンターの職員に話しかけると、職員はギルドカードの提示を求めてきた。俺はギルドカードを職員に渡し、職員は受付と同じ様に専用の機械にギルドカードを入れて何かを確認した。
「はい、常設のゴブリン退治の報告ですね。それではこちらの部屋で確認しますので付いてきて下さい」
俺は職員について行き、部屋に入った。
部屋の中は広く、奥にはここよりも広い部屋があり、数人の人が解体作業に勤しんでいた。
「それではこちらに出して下さい」
俺はまずゴブリンの耳を入れた袋を提出した。
次に首を刎ねたオークをマジックバッグに見える袋から出した様に見える様に、無限収納の出入口をマジックバッグの袋の中に出して次々と取り出した。
無限収納からオークを全部出したところで、足の踏み場がなくなった。
「あの〜すいません、もしかしてまだ入ってますか?」
職員は積み上げられ部屋を埋め尽くしたオークを見て動揺しながら話しかけてきた。
「オークはコレで終わりですけどまだ他の魔物が入ってます」
「そうですか。ここではもう置き場がありませんので奥の後は解体場で出して貰えますか?」
俺は職員の頼みを聞き入れ、職員の指示に従って解体場の方に向かった。