第56話 土下座は異世界でも共通
前回のあらすじ
アリシアさん悩む
領主の館に行く
領主と話を始める
「五月蝿いッ! 黙れッ黙れッ黙れッ! 貴様のような何の役にも立たんゴミクズ如きが、貴様など領主権限で死罪だッ!」
頭に血が上ったのか領主は顔を真っ赤にし口汚く俺にまくしたてて来た。
「たかがDランク冒険者が領主に楯突いてどうなるかわかっていないみたいだなッ! 貴様は手脚を斬り落としてやる! そのあと仲間の女を貴様の目の前で死ぬまで犯罪者供のおもちゃにしてやる。お前は特別に餓死するまで生かしてやるッ!」
更に領主は俺と姫姉をどうやって殺すかを語り出した。
このクズは、俺だけじゃなくて姫姉にまで手を出すつもりなのか。
今すぐここでコイツをぶった斬って二度とそんな事を吐けない様に心も壊してやりたい。
待て、感情に任せるな。
だがもしそんな事をする素振り少しでも見せれば……、逆に同じことを家族全員に仕返してやる。
おっと、ダメだ。怒りに任せて動くのは悪手だ。
冷静にならないと……。
俺と俺の仲間に危害を加えられそうになるとキレるのは俺の悪い癖だ。姫姉の爺さんにも怒りに任せるなと何度も言われたな。
落ち着け俺……。
俺が思考をクールダウンしていると領主の発言に待ったを掛ける者がいた。
アリシアさんだ。
「待って下さい! 彼に手を出してはいけません! ここで彼に手を出せば領主様もその家族も王家への反逆罪で死刑になりますッ!」
アリシアさんが領主もその家族も死刑になると言いだした。
深呼吸をして思考が落ち着きを取り戻したが、アリシアさんの突拍子のない発言に俺の思考が混乱した。
俺からすれば何故そうなるのか訳が分からないので理由を知りたい。
それは領主も同じ様だった。
「騎士団長、どういう事だッ! よもや貴様もコイツに脅されてそんな巫山戯たことを言わされているのか!」
領主は肩をワナワナと震わせながら俺を睨みつけつつ、アリシアさんを怒鳴りつけた。
ガン付けてくる領主を睨み返していると、アリシアさんが反論しだした。
「違います私は脅されては……、いや待て脅されてはいるのか? さっきもドラゴンを出すし、騎士団の団員もボコボコにするし」
いやいやドラゴンの方はただの作品だったろ。それに騎士団の方は向こうから襲って来たんだし不可抗力なはず。
アリシアさんの思考が脱線し始めて余計なことを言いそうだったので、俺はアリシアさんが余計な事を口走る前に声を掛けて話を戻させた。
「アリシアさん、アレは脅した訳ではないです。それよりも話を進めましょう、俺も聴きたいですし」
俺が声をかけるとアリシアさんは思考の海から戻ってきて、話の続きを話し始めた。
「そうだな、どこまで話したか……。そうだこのままだと領主様が反逆罪になるところだったな。取り敢えずその話をする為にもユーマ君、ギルドカードと勲章を出してくれ」
俺はアリシアさんに言われてポケットからギルドカードと無限収納から勲章を取り出してアリシアさんに渡した。
「領主様ならコレが何か分かりますよね」
アリシアさんは俺から受け取った勲章を領主に見せながら質問をした。
それを見た途端、真っ赤になっていた領主の顔から赤みが引いていった。
「それは飛竜討伐勲章⁈ 何故そのようなものをこの様なガキが持っているんだ……」
飛竜討伐勲章ってそんなに有名なものだったのか。
貰って直ぐに迎えが来たからアレの良さとか一切聞いてないんだよな。一応デメリットだけは聞いておいたけど。
「何故コレを彼が持っているかは裏を見れば分かるはずです」
アリシアさんは俺の飛竜討伐勲章を領主に手渡して裏側を見るように言った。
領主はアリシアさんの言う通りに飛竜討伐勲章を裏返して何かを食い入る様に見て、徐々に顔色を真っ青にしていった。
「騎士団長……、コレはまさかこの間の王都でのモノなのか?」
領主は顔を真っ青にしながら、掠れた声を絞り出す様にアリシアさんにそう聞いた。
「はい、本人に聞いたところ誤魔化そうとしていましたが……。魔力を流したところ龍眼の中に王家の紋章が浮かび上がったので偽物ではないかと」
えっ、そんな真贋判定機能まで付いてるのかよ。
俺王女様からそんな事一言も聞かされてないし、そんなのあるんだったらさっさと出しとけば良かった。
俺てっきり金払いたくないから勲章と名誉だけ与えてお茶を濁す為の飾りをくれたとばかり思ってたんだけど。
一応後でアリシアさんに勲章について色々聞いておいた方が良さそうだな。
「そうか……、だがそれとこれとは話が違うのではないか」
俺が一人色々考えていると話しが進んでいた。
「いえ違いません。今回の件で彼は被害者であり受付嬢は共犯です。ギルドマスターは彼が召喚勇者である事を知っているらしいです。たぶんあの人の事なので他に迷惑がかからない様に責任を取るつもりで自首してきたんでしょう」
アリシアさんは自分の推論を混ぜながら領主に話した。
それを聞いた領主は抜け殻の様に脱力しどんよりとした空気を醸し出していた。
「ハァ、そうだったのか……。ハハ、だから騎士団長がそんな事を言い出したのか」
領主は大きな溜息を吐いた後、空笑いをしながらそう呟いた。
「はい。それで一つ尋ねておきたいのですが、領主様は彼の暗殺を暗殺者ギルドに依頼しましたか?」
気落ちして体に力が入っていない領主にアリシアさんは俺も気になっていた事を問いただした。
「ッ! そうか、そこまで知っていたのか……。あぁ、私が依頼した。だが知らなかったんだ……。謝ってすむ問題ではないのはわかっているが、どうか許して欲しい。この通りだ」
領主は色々御託を並べながらも床に手をつき俺にむかってジャパニーズ謝罪スタイルの土下座をしてきた。
「ユーマ君、不躾な願いなのはわかっているが私からも頼む。今回の件許しては貰えないだろうか?」
なんとかペースを守れてます
このペースでいけたらいいな