第53話 アリシアさんの事情聴取
前回のあらすじ
アリシアがやっと駆け付けた
俺は逃げ出した
しかし捕まってしまった
「さて、それでは何があったか話して貰うぞ分隊長」
アリシアさんは俺に拘束されて身動きの取れなくなった男に話しかけた。
よく見たら最初に俺に突っかかって来て俺を捕まえようとして来た奴だ。
「団長今すぐソイツを殺して下さいッ! ソイツは我々に歯向かって攻撃して来たのです! 今すぐ罰して殺すべきですッ!」
こんな状況を作った俺をアリシアさんがたった一人で殺せると思っているのか。頭が悪いにも程がある。
「アリシアさん、ソイツが俺にいきなり殺しに掛かって来た馬鹿だよ。もしアリシアさんがソイツの意見を信じるならこの宿屋が戦場になるから覚悟してね」
たぶん大丈夫だと思うけど一応釘は刺しておいた。
俺がアリシアさんに近づき分隊長と呼ばれた男にも聞こえるように脅した。
アリシアさんは俺の言葉に苦悶の表情を浮かべ、分隊長は怒りで顔を茹でダコの様に真っ赤にしながら叫んだ。
「団長ッ! 今すぐ私たちの拘束を解いてコイツを全員で殺すべきですッ!」
「分隊長、それは本気で言っているのか?」
アリシアさんはそんな事を言う分隊長を見て溜息を吐きながら呆れていた。
「団長がいればたかがDランクのガキ二人に負けません!」
あれ、俺ってコイツらに冒険者のランク言ったけ? それになんで二人?
俺がDランクって知ってるのはギルドの人間では受付嬢とギルマスで、あとは暗殺者どもとそれを依頼した奴くらいのはず。
「アリシアさん、ちょっといいですか?」
「なんだ?」
アリシアさんは嫌そうな顔で返事をした。
「いや、コイツがなんで言っても無い俺の冒険者ランクを知ってるのかなと思いまして? それにガキ二人ってのも」
「そんな事調べれば分かる事だろ」
アリシアさんは何を言っているのか分かってない見たいだった。だが分隊長はやらかしたとばかりに顔を歪めて目を逸らした。
「そりゃ調べれば分かるだろうけど、さっき会ったばっかりなのにいつ調べたのかなと思って。それに今俺は一人なのに二人ってどういう事なのかなと」
だいたい最初衛兵が俺に突っかかって来た時から行動が怪しすぎる。
まず食堂に入ってすぐに俺の所に来て話を聞かずに殺そうとする。
それにそこに転がってる暗殺者には目もくれない。
「それもそうだな。分隊長なぜ彼の冒険者ランクを知っている? あとなぜ二人と言ったんだ?」
アリシアさんは分隊長を問い詰めた。
「そ、それはたまたま知っていただけだ。二人と言ったのは言い間違えだ」
分隊長はそう言うとそれ以上詳しいことは何も話さず、何を聞いても分からないと答え出した。
「これ以上分隊長からは何も聞けなさそうだ。他の奴に聞くしか無いな」
アリシアさんは分隊長からそう言いながら分隊長から話を聞くのを諦め次の衛兵に話しかけた。
それから衛兵一人一人に話を聞いて行った。だが俺に拘束されてる奴は俺を殺せとしか言わないし、拘束されてない奴は奴で俺に怯えて何も話そうとしない。
「はぁお前はいったい何をしたんだ? 殆どの衛兵が使い物にならなくなっているではないか……。まぁいい。最後は、副隊長か」
最後に残っていたのは俺と話し合いをしていた衛兵の人だった。
「さて副隊長、正直に話して貰うぞ。聞きたいことは君たちの隊は何故無抵抗だった彼に襲い掛かったのかと、何故私を呼ばなかったかだ」
そういえば俺ってアリスちゃんにアリシアさん呼んで来てって頼んだだったな。
まともな受け答えができない奴ばっかり相手してて忘れてたわ。
「っひゃ、はい。なんでも答えます、だから殺さないで、殺さないで下さい」
失礼な奴だな、俺はまだ誰も殺してはいないぞ。殺す勢いでボコボコにしたけど。
「安心しろ、私がいる。彼には手を出さないように頼んであるから。事実を話しなさい」
アリシアさんは副隊長を宥めながら俺に離れるようにシッシッと手を振って来た。
仕方がないので俺は話がギリギリ聞こえる位置まで移動した。
追い払われた俺は特にすることも無くなってしまったので話を盗み聞きながら無限収納の中から適当に取り出していじる事にした。
「さて、彼も離れた。これで話して貰えるな」
私が副隊長に話しかけると副隊長は彼が離れた事で少し落ち着いたのか、話し始めてくれた。
「俺たちは分隊長に事件が起こったって言われてここに来たんです。それでここに来たら縛られてる人が居たんでソイツが犯人かなと思ったら分隊長はソイツを踏んづけていた……彼に掴み掛かったんです。彼が話し始めたら分隊長がいきなり押し倒して斬り掛かったんです。
彼は何処からか動く塊を出して身を守った。分隊長は俺たちに彼を殺せと言って来たので俺たちはそれに従って抜剣した。そしたら今度は彼がまた動く塊を出して自分と分隊長をその塊で囲ったんです。少ししたら塊が消えて分隊長が拘束された状態になっていたんです。
俺は訳が分からなかったけどとりあえず話し合いをする為に彼に話しかけました。そしたら彼も一応は話し合いに応じてくれて、でも彼の挑発に乗った部下が彼に襲い掛かってそれで彼に返り討ちに会いました」
副隊長の話を聞いた私はあまりにも稚拙な行動をした分隊長に呆れていた。
「はぁ今回の件、聞いた限りではお前たちが悪いな。それにそんな事をされれば誰でも憎まれ口くらい言うだろう。それを挑発と捉えて襲いかかるなんて……、もう少し自制できないのか「出来たぁ!」」
私は溜息を吐きながら自分なりの見解を副隊長に話していると、その話の中心人物である彼が叫んだ。
私は彼がまた何かやらかしたのではと思いながら彼の方に視線をやった。
なんとか更新できました
これからも10日20日30日に更新していくと思います