第43話 何事も息抜きは大事
前回のあらすじ
姫姉のお仕置きが待っている
容量一杯で録画できなかったら録ってる奴に頼んで見してもらおう
陽が沈み街中では酒飲みたちがワイワイと騒がしく、そんな喧騒の中を独り俺は重い足取りで宿に向かっていた。
宿に帰れば姫姉のキツイお仕置きが待っている。できれば帰りたくはないが、帰らなければ帰らないでキツイお仕置きよりも恐ろしい拷問が待っている。
俺は気合を入れて宿に戻った。
宿に入るとアリスちゃんが話しかけてきてくれた。
「さっき凄い形相のお姉さんが帰って来たけどお兄さん何かしたんですか?」
アリスちゃんは苦笑しながら聞いて来た。
「あぁ、俺が悪いんだ。昨日ギルドでちょっとやらかしちゃってさ」
「それってもしかして噂になってるアレですか?」
「たぶんそれだね」
やけっぱち気味にキメ顔でそう言ったらアリスちゃんにため息を吐かれた。
「そうですか。それならお姉さんのアレも理解できます。早く行った方がいいと思いますよ」
「いやぁ、ごめんね。それじゃあちょっとご機嫌取りに行ってくるよ」
アリスちゃんにそう言って俺は姫姉の待つ部屋に向かった。
部屋の前まで着いた俺は部屋のドアをノックして数歩下がった。
「開いてるから入って来て」
中から姫姉の不機嫌な声が聞こえて来たので逆らわずに細心の注意をしてドアを開けた。
姫姉は意外にもベッドに寝転んでいた。
すかさず俺はジャンピング土下座を繰り出した。
「すいませんでした!」
「なにやってるの、キモイんだけど」
突然の俺の奇行に姫姉は少し引いていた。
「いやぁ、これは土下座と言う日本古来の謝罪方法でして」
「それは知ってる。まぁ、今回は優君だけが悪いわけじゃないし次の狩りの剥ぎ取り作業一日で許してあげる。異論は認めない、いい?」
「イエス、ユア・マジェスティ」
それから姫姉は一応機嫌を直してくれて夕食に向かった。
食堂ではおじさんが哀愁を漂わせながら食事をしていた。
「相席良いですか?」
俺はいたたまれなくなりおじさんに話しかけた。
「ああ、どうぞどうぞ」
おじさんは即座に返事を返してきた。俺たちは席に着いて料理を注文した。
「そう言えば君たちのこと結構噂になっていたよ」
俺たちが注文したところでおじさんが話しかけて来た。
「あはは、聞いちゃいましたか」
「なんだかすごいことになってるみたいだね。僕が働いているところでもギルドが潰れるんじゃないかって噂になってたよ」
それからもおじさんが聞いた噂話を俺たちは頭の痛い思いをしながら聞いた。
「とまぁ今日聞いたのはこのくらいかな。でもさすがに街が滅びるは尾ひれが着きすぎだよね」
「「そ、そうですねぇ」」
姫姉の爺さんが王城でヤッたことを思い出して、俺たちは苦笑いを浮かべて返事をするしかなかった。
それから俺たちも今日あった事を話して自分たちの部屋に戻った。
「姫姉、俺思ったんだけどさ。爺さんならやりかねないと思うんだ」
「奇遇ね私もよ」
「早急に解決してこのことは爺さんに黙っておいた方がいいよな」
「できればそうしたいけど、お祖父ちゃんを欺けるかが問題だと思う」
それから俺たちは中身のない議論の末、ほっとくことにした。
異世界漂流四日目の朝、俺と姫姉は朝食を済ませた後すぐさまゴブリン討伐をするために街の外に向かった。
門番は知らないおっさんだったので挨拶をしてそそくさと俺たちは森に入って行った。
「取りあえずここなら誰も来ないだろうし、うざ晴らしにその辺にいる魔物片っ端から斃すから回収よろしくね」
姫姉は俺の返事も聞かずに獲物を探しに駆け出した。
後を追って行くとそこら中に魔物の死骸が散らかっていた。
大半はゴブリンやフォレストウルフなど知っている魔物ばかりだが、たまに蛇やら蜥蜴なんかも混じっていた。
ゴブリンの耳を切り取り、フォレストウルフの牙を引っこ抜き、残った死体は討伐部位の分からない奴と一緒に無限収納にぶち込んでいった。
二時間ほど回収作業をしていくと姫姉が木を切り倒し、整地をして小屋を作っていた。
「えっと、何してるの?」
「優君が追い付くまで暇だったから適当に休憩できる場所を作ってたんだよ」
そう言うが、明らかに素人が作ったとは思えない立派な小屋が出来つつあった。
近づいて見ていると何か違和感を感じた。少し考えて違和感の正体が分かった。
「姫姉、これどうやってくっ付いてるんだ?」
そう、この小屋どこから見ても釘を使ったり木同士を組み合わせてはめ込んだ形跡が一つもなかった。まるで元からそういう風に生えていたかのように。
「ああ、それは私のスキル創造の応用だよ。他にも木材そのものに付与強化もしてあるからそこいらの魔物の攻撃で壊れない様に頑丈にしてるよ」
それを聞いて俺は小屋の壁を鑑定して見た。鑑定結果は普通に売っている鋼鉄の盾よりも硬いことが分かった。
「これはやり過ぎなんじゃ……」
「大丈夫だよこんな森の奥まで人なんか来ないだろうし、来たとしてもどうにもできないよ」
それから俺も建設に駆り出され太陽が真上に来たころに堅牢な小屋が完成した。
遅れました、すいません