第38話 辺境の街グアウェストにやって来た
前回のあらすじ
謎の亀裂に吸い込まれて二度目の異世界に来てしまった
はい、やって参りました。ここはラグアシア王国の最西端の辺境です。俺たちは日本に帰って姫姉とデートをしていたはずなのだがいつの間にかまた異世界に来ちゃったぜ。
道中何事もなく辺境の街に着いた。
「なんとか街までやって来れたみたいだな」
「はい、ここは辺境の街グアウェストです」
そんな話をしていると門の向こうから一人の男が駆けてきた。
「どこに行かれていたのですか団長ぉ! 探したんですよ」
「それはすまないことをしたな。私はあの光の発生源を調べに行っていたんだ」
「そういう危ないことはしないでくださいって何度も言ってるじゃないですか。ところでそちらにいる人たちはどうしたんですか?」
「ああ彼らはあの光の発生源に出来た亀裂から出てきたみたいなんだ」
「そんなことあり得るんですか?」
「私も見たときは目を疑ったが彼らが亀裂から出てきたのは事実だ」
そんな話をしている二人をよそに俺は城門の列に並びに行った。
俺たちが居なくなったことに気付きここまで案内してくれた騎士の人がこっちに来た。
「待ってくれ3人とも。君たちには聞きたいことが色々とあるから少しこっちの詰所に来てくれ、頼む」
そうお願いされて俺たちは騎士の人に連れられ詰所にやって来た。
「じゃあとりあえず身分証出して貰えるかな」
俺たちはギルドカードを出したがサラリーマン風の男は日本での身分証を出そうとした。
『ちょっとまって下さい。ここではその身分証は使えません。変に警戒されて牢獄にいれられたくなかったらさっきの現象で落としてしまって亡くしたと言って下さい。因みにこれは今隣に座っている俺が念話で話しています。俺たちはこっちに来たことがあるのでここは俺に任せて下さい』
サラリーマン風の男はこっちを見てきたので俺は軽くうなずいて見せた。おじさんは納得してくれたのか何かを探すふりをして騎士の人に身分証をなくしてしまったと言った。
「そうですか。では後で仮の身分証を発行しますね」
騎士の人はそう言って話を切り替えた。
「それで皆さんはあの亀裂に吸い込まれて気が付いたらいつの間にかあそこにいたというわけですね」
俺たちは怪しまれない様に質問に出来る限り答えていった。
「それにしてもあれはいったい何だったんでしょうか?たぶん空間魔法だとは思うのですが」
それから俺たちは軽く話を聞かれおじさんの仮身分証を作ってから解放された。
「そろそろ日も暮れるしどこか宿屋でも探して泊まるか、すいませんここらでそこそこ安全で飯の旨い宿ってどこにありますか?」
俺は騎士の人に聞いてみた。
「そうだな、比較的安全でご飯が美味しい宿となるとあそこだな。私も今日は上がりだし案内しよう」
こうして俺たちは騎士の人の案内で宿までやって来て中に入った。
「いらっしゃいませ。あっお姉ちゃん、お帰りなさい」
宿屋に入ると俺たちより少し小さい女の子が出迎えてくれた。
「ああただいまアリス。今日はお客さんを連れてきたんだ」
「そうなんださすがお姉ちゃん。いらしゃいませ、三名ですか?」
「はい、出来れば二人部屋と一人部屋が良いのですが」
「はい、空いてますよ。ではおひとり一泊朝夕ご飯付き200シアです」
俺はポケット経由で無限収納から銀貨を6枚出して支払いを済ませた。
「600シアちょうど頂きましたこちらがカギになります。203号室が一人部屋で、306号室が二人部屋になってます」
そう説明されたので俺は一人部屋のカギをおじさんに渡した。
「僕が一人部屋で良いのかい?」
おじさんが困惑しながら質問してきたので俺は気にしないで下さいと答えておいた。
「夕ご飯なら今から食べれますがどうしますか?」
アリスちゃんがそう聞いてきたので俺たちは今から食べると答えた。
「では席について待っていて下さい」
そう言うとアリスちゃんは笑顔で奥に向かっていった。
「どうだ可愛いだろ、自慢の妹なんだ」
席に着くと騎士のお姉さんが妹自慢を話してきた。その話はアリスちゃんが料理を運んでくるまで続いた。
「ごめんなさい、お姉ちゃんが絡んじゃって」
「気にしなくてもいいよ。それだけアリスちゃんの事が好きなんだろ、いいお姉ちゃんじゃないか」
それから俺はおじさんにこの世界について軽く説明をしながら食事を済ませた。
「そうかこれがこの前ニュースになっていた神隠しだったのか。にわかには信じがたいが実際に起こっているんだし認めざるを得ないか。だが一応日本に帰ることは出来るんだろ」
「はい、彼女のお爺さんが世界を渡る魔法を使えるので、俺たちが居なくなったことが分かれば迎えに来てくれます」
「そうか、ではそれまで何とかこっちの世界で生き残らないとな。色々教えてくれてありがとう今日の宿代も出してもらったし感謝してもしきれないよ」
「まあ気にしないでください。俺たちは被害者なわけですし助け合いですよ」
こうして俺たちはそれぞれの部屋に向かい眠りについた。