第37話 デートをしていたはずなのだが
前回のあらすじ
姫姉とデートをすることになった
俺たちはショッピングモールにやって来た。
このショッピングモールは食品から映画館まで大体何でもそろっている大型施設だ。
ここは六年ほど前に地震によって崩壊してしまったショッピングモールを新たに造り直し、前よりも格段に広くなった。
「じゃあまずは姫姉の服を見に行こうか」
「そうだね」
こうしてまずは、姫姉の夏服を見に二階の洋服店にやって来た。
ここで夏服を見て一時間が経ったころ、やっと姫姉が最後の一着まで選び抜いた。
姫姉が選び抜いたのは夏らしい水色のワンピースにアクセントとして軽くフリルが付いているのだった。
「優君、これどうかな?」
「さわやかな感じで良いと思うよ」
「そっか、じゃあこれにするね」
そして会計を済ませて(父さんから貰った金で)、時間が12時前だったので俺たちは昼食を食べに行くことになった。
「姫姉は何か食べたいものはある?」
「そうだなぁ、異世界ではパンが多かったからご飯ものが食べたいな」
ご飯ものというと丼系か定食かのどっちかになるかな。
「じゃあ、定食屋に行こうか」
そして俺たちは定食屋で日替わり定食を食べて腹を満たした。
「ではこの後はゲームセンターで少し遊ぼうか」
「そうだね、久しぶりに格ゲーの対戦でもしよっか」
こうして夕方まで格ゲーやUFOキャッチャーをして遊んだ。
「そろそろ、日が暮れるけど晩御飯はどうする?」
「お父様たちは外で済ませるみたいだったし私たちも外で済ませましょう」
「それじゃあ晩御飯は何食べたい?」
「ラーメンがいい!」
姫姉が元気よくそう言った。
「じゃあよく行くあそこのラーメン店に行こうか」
「うん」
そして俺たちがショッピングモールから出て駐輪場の前を通りかかったとき、急に地震が起こった。
揺れはそれほど大きくはなかったが二分くらい揺れ続けていた。
そして揺れが治まると駐輪場の奥から悲鳴が聞こえてきた。
俺は気になって注意深く奥を覗くとそこには、空間に亀裂が入っておりそこからゴブリンが多数溢れ出てきていた。そして腰を抜かしているサラリーマン風の男が叫んでいた。
「姫姉、ゴブリンが出てきてる。俺は戦うけど姫姉はどうする?」
「勿論戦うよ」
そして俺たちは無限収納から刀を取り出しゴブリンに斬りかかった。
「おじさんここは俺たちが何とかするから早く逃げてっ!」
俺がそう言うとサラリーマン風の男は何とか立ち上がり逃げ出そうとした。
だがその時、亀裂の入った空間の穴から謎の吸引力が働きはじめこの場にいた俺と姫姉とサラリーマン風の男にゴブリンの軍勢の全員が吸い込まれた。
目の前が一瞬真っ白になり気が付くとそこは樹木が生い茂る森の中に全員いた。
とりあえずとっさの事に対応できていないゴブリンたちを全部倒しておいた。
俺はゴブリンを倒し一息ついた後現状を確認するために周りを見渡した。
すると少し離れたところで鎧を着た騎士が腰を抜かしていた。
とりあえず俺はファーストコンタクトを果たすべく話しかけてみた。
「どうも、こんにちは。本日はお日柄もよく。ああこれ一応身分証なんですが」
そう言いながら俺は無限収納に入れっぱなしになっていたギルドカードを見せてみた。
「そ、それはギルドカードですか。じゃああなたは冒険者なんですか?」
声からしてどうやら女の人みたいだ。
「あっはい、そうです。ラグアシア王国の王都で活動している冒険者です」
「王都で?ここはラグアシア王国でも最西端の辺境ですよ。それにあなたたちはそこにあった亀裂から出てきたみたいですが」
なるほど、ここはラグアシア王国の最西端の辺境なのか。それに俺たちはこっちに出来た亀裂から出てきたみたいだな。またこっちに来ちゃったのか。
「な、なんだってぇぇ!俺たちは突然現れた亀裂に吸い込まれて気が付けばここに居たんですがまさかここが辺境だなんて。あの亀裂は一体何なんだ」
とりあえず驚いたふりでもしておくか。
「そ、そうなんですか。それは災難でしたね。とりあえずここから数十分歩いたところに辺境の街がありますので案内しましょうか?」
「それは助かりますね。ではお願いしても宜しいでしょうか?おじさんもそれでいいですよね?」
急に話を振られてサラリーマン風の男は条件反射的にはいと返事をしていた。
「では案内しますね。ところでその服は王都での流行か何かなのでしょうか?」
「ああ、これは俺たちの国の衣装ですよ。こちらでは珍しいみたいですけどね」
「そうでしたか、なかなか質が良いみたいで良いですね」
それから森の中を歩き、森を出ると城壁に囲まれた街が見えてきた。
「辺境にしては立派な城壁ですね。王都の城壁と比べても遜色がありませんね」
「ええ、ここは他国に近いので有事の際には最前線として機能しますのでこの位でないと攻め滅ぼされてしまいますからね」
「なるほど、でもそうそう国家戦争には至らないんじゃないんですか?」
「そうですね、もう十年近くはちょっとした小競り合い程度しかありませんね」
そんな話をしながら俺たちは門の前までやって来た。