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Side Story 小学生の俺と姫姉 後編

 この日泣いている姫姉を見て僕は心に誓った。なんとしても姫姉を笑顔にさせてみせると。これが僕が俺に変わるきっかけだった。それからは爺さんに鍛えて貰い、いついかなる時でも姫姉のそばを離れない様にした。

 そんな事をしていれば同じクラスの連中が俺たちを冷やかしたりしてきたが、俺はそれを一切気にせずに無視をしていた。それからもいろいろ冷やかしたりされたが俺は無視をし続けた。

 だがそれを面白くないと思った連中が現れて、ある日を境に冷やかしからいじめにとって変わって行った。それでも俺はいじめてくるの連中には構わずに姫姉だけを見ていた。

 だがある日、そんないじめの対象が姫姉に移ってしまった。この時俺はまだ気づいていなかった。

「優真、お前最近チョーシ乗ってんじゃねーのか、俺たちの事無視しやがって。何とか言えよ」

 いつもいじめをしてくるリーダー格の少年がそう言って俺に殴りかかって来た。だが俺はそれを軽々とかわし足を掛けてこかしてやった。

「てめぇ、ふざけたことしやがってッ、もう容赦しねーぞ。お前らやっちまえ」

 こかされたリーダー格の少年は周りの取り巻き連中にそう合図を出し俺にとびかからせた。

 俺は何とか取り巻き連中の拳を避けていくが徐々に距離を詰められて壁際まで追い込まれた。

「もう逃げ場はねーぞ、観念して此処でボコられろ」

 リーダー格の少年は周りの連中指示を出しに俺の体の自由を奪わせて殴って来た。

 それから俺は殴られ続けても悲鳴一つ上げなかった。リーダー格の少年はそれが気に障ったのかこんなことを言い出した。

「おいあいつ連れて来いよ、姫菜のやつ。こいつの前であいつをボコればさすがにこいつも何か言うんじゃねーか。確か今姫菜の奴他の連中にいじめに行かせてたろ。ちょっと連れて来い」

 姫姉がいじめられているだと、こいつらどこまで落ちれば気が済むんだ。

 俺は怒りに身を任せ、動きを封じていた連中を引き剥がした。

「なんだよッ、動けんのかよ。お前らしっかり押さえとけよなッ」

 リーダー格の少年はそう言いながら俺に殴りかかって来た。

 そこからは殴り合いになっていった。俺が二人殴れば俺は三回殴られて俺が二人気絶させれば俺は椅子で殴られた。

 そんな泥仕合をしていると姫姉が他の取り巻き連中に連れられてやって来た。

「おーっと抵抗するなよ。抵抗したら次はこいつの頭に椅子で殴るぞ」

 リーダー格の少年はそう言って脅しを掛けてきた。

「優君にひどいことしないで。なんでこんなことするの」

「ムカつくからだよ。まぁとりあえず姫菜、お前はそこでじっとしてろよ」

 リーダー格の少年はそう言い姫姉に近づき思いっきり蹴りを姫姉のお腹にいれた。

 俺はその瞬間全身の痛みも忘れてリーダー格の少年を殴っていた。

「優真、てめえ、ふざけんじゃねーぞッ!もういい殺してやるッ!抵抗するおまえが悪いんだッ」

 リーダー格の少年はポケットから裁ちばさみを取り出し俺に刺しかかって来た。

 俺はそれを避けきれず腹部を刺されてしまった。

「馬鹿がッ、抵抗するからそうなるんだよッ次いでにこいつも殺してやるよッ」

 リーダー格の少年のその言葉に俺は怒りを抑えきれずに刺さっていた裁ちばさみを強引に引き抜き刺し返してやった。

「っ痛、優真てめえっ殺す殺す殺すッぜってぇ殺してやるッ」

 リーダー格の少年はそう言い殴りかかって来たが、怒りに来るっていた俺はそんなこぶしをものともせずにのしかかり殴り続け、気を失って動かなくなっても殴り続け、それを止めようとしてきた取り巻き連中も同様に殴る蹴るを続けその場に立っているのは俺一人になったところで教師が駆けつけてきた。

 それから教師に取り押さえられ別室に連れていかれて取り調べを受けた。

「なぜあんな事をしたんだ」

「姫姉を傷つけたから」

「あそこまでする必要があったのかッ」

「殺されそうになったら誰でもあれくらいするでしょ」

 俺は腹に出来た傷を見せながら自嘲気味に答えた。

「だがあそこまでする必要はないはずだッ」

 俺はそんな事を繰り返す教師にうんざりして口を閉ざし部屋を出ようとした。

「まてッ、まだ話は終わってないッ!どこに行くつもりだッ!」

「先生とは話していてもらちがあきませんから姫姉のところに行きます。心配ですし」

 俺がそう言い部屋の扉に手を掛けた瞬間横から殴られた。

「まだ話をしているのになんだその態度はッ!ガキの分際でこの俺に歯向かう気かッ‼」

 そう言いながら教師はもう一発殴ろうとしてきた。だがその拳は俺には当たらず部屋に入って来た爺さんの手によって止められた。

「教師が生徒に暴力か。生徒が生徒なら教師も教師じゃな」

 いきなり入って来た爺さんは掴んだ教師の腕を離し殴りつけた。

「優、怪我の具合はどうじゃ、病院にもいかずによく持つな。そろそろ血が足りなくなるんじゃないかの。ああ姫菜の事は心配せんでもいいぞ家に帰したからの」

 爺さんのその言葉で安心した俺はここで意識を失った。

「さすがに危険じゃな病院にでも連れていくかの」

 最後に聞こえたのは爺さんのそんな言葉だった。


 それから次に目覚めたのはあの時と同じ病室だった。

「おう起きたか、優。儂の事は分かるな」

「はい師匠」

「ならよい。今回の事は儂が片を付けるからおぬしはここでおとなしくしておれ。明日には姫菜を連れて見舞いに来てやるから今日はもう眠りなさい」

「わかりました」

 俺は爺さんに言われるまま眠りにつき朝までぐっすりと眠った。


 それからの事は本当に爺さんが何とかしてくれた。

 俺をいじめていたリーダー格の少年たちの悪事を洗いざらい暴き、いじめを容認していた教師陣にも飛び火をしこのことは世間を騒がせた。

 あれからいじめを見て見ぬふりをしこんな事態まで悪化させた教師たちは爺さんの手によってマスコミに追われる生活を送ることになったらしい。

 俺がボコボコにして大けがをした連中の親が色々な事を言ってきたがそれをものともせず爺さんが追い返していった。

 いじめをしてきたリーダー格の少年は二度と俺たちの前に現れない様に誓約書を書かせたらしい。

 他のリーダー格の少年の取り巻き連中は次々に転校していった。

 そして俺が怪我を治して学校に行くとほとんどの男子生徒が転校していなくなった後だった。


 これが俺と姫姉の過去であり今を形作るほんのひとかけらの思い出だ。

 


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