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Side Story 小学生の俺と姫姉 前編

 僕の名前は凪滝優真なぎたきゆうま。父さんの宗弥そうやと母さんの雪那ゆきなの間に生まれた一人息子です。

 僕には生まれた時から一緒にいる女の子がいます。名前は星兆院せいちょういん姫菜ひめな。僕の家の隣に住んでいる有名な武闘家の孫だ。物心ついた頃から僕は姫菜ちゃんと一緒にいた。

 小さい頃の僕は姫菜ちゃんを姫姉と呼び金魚の糞のようにいつも後ろからついていってました。

 それから時は経ち僕たちは小学四年生になっていた。

「優君、今日はね久しぶりにねパパとママが帰って来てるの」

「うん、知ってるよ。昨日嬉しそうにしてたもんね」

 僕たちは新しいクラスで姫姉とそんな話をしている。

「でね今日は午前授業だけだから、帰ったらみんなでショッピングモールに買い物に行くの」

「知ってるよ、僕も一緒に行くんだから」

「ヤッター、優君も一緒に行くんだぁ。じゃあデートだぁ」

「いやいや、ただの買い物だよ」

「良いの、私がデートだと思うからこれはデートなの」

「そっか、じゃあ仕方がないね。これはデートってことにするよ」

「素直でよろしい。早く始業式終わらないかなぁ」

 そして始業式が終わりホームルーム経て僕たちは迎えに来た父さんと母さんと姫姉の両親とでショッピングモールに来ていた。

「さあ二人ともまずは腹ごしらえだ何か食べたいものはあるかい」

 父さんが僕たちにそう聞いてきた。

「私はハンバーグが食べたい」

「僕もハンバーグがいい」

「はっは、二人ともハンバーグか。ならあそこにしよう」

 こうして僕たちはハンバーグ専門店に入った。

「ご注文はお決まりでしょうか」

 店員さんに聞かれ僕はチーズハンバーグを、そして姫姉は煮込みハンバーグを頼んだ。

 そして僕たちが食べ終わると次は姫姉の洋服を見に来た。

 それから着せ替え人形のように色んな服を試着していき、姫姉は気に入った一着を買ってもらった。

「さあ次は優の服を見に行こうか」

 父さんにそう言われ僕たちは隣の男の子服が売っているお店にやって来た。

 それから僕も姫姉や母さんたちに着せ替え人形にされ一番似合っていた一着を買ってもらった。

「それじゃあ、最後に晩御飯の材料を買いに行こうね」

 母さんがそう言い僕たちは一階の食品売り場に来た。

 買い物をしていると姫姉がトイレに行きたいと言ったので僕と二人でトイレに行くことになった。

「ついて来てくれてありがと優君」

「だってこれってデートなんでしょ。ならトイレくらいついてくよ」

 そして姫姉がトイレに入って行くと突然地震が発生した。

 どこかで誰かが悲鳴を上げ、商品棚に入っていた商品が床に落ちていく。

 すぐに地震は収まりモール内は惨状が広がっていた。

 僕はトイレに入った姫姉が心配になり女子トイレに駆け込んだ。

「姫姉、どこにいるの。いたら返事をして」

「優君、私は無事だよ」

 奥の個室から姫姉が出てきた。

「ふう、良かった。どこも怪我は無いよね?」

「無いよ、大丈夫。それよりどうなってるの?」

「モール内はボロボロになってる。とりあえず父さんたちのところに戻ろう」

「そうね、それが良いわね」

 僕たちはトイレを出て食品売場に行こうとしたとき大きな爆発音とともに上から鉄骨やガラスが降ってきた。

「危ないっ!」

 とっさに僕は姫姉に覆いかぶさり姫姉を守ろうとした。

 背中に衝撃が走り、僕は意識が飛びそうになった。

「大丈夫優君?」

 姫姉のその言葉で僕は何とか意識を保つことができた。

「大丈夫だよ姫姉。それよりもここは危険だし早く外に出よう」

 本当は鉄骨が背中を切り裂いていたが僕は姫姉にそれを悟らせない様に背中を見せないようにした。

「でも困ったな、一番近い出口が鉄骨でふさがれて通れないや」

「どうするの優君?」

「遠回りになるけど他の出口を探すしかないよ」

 そして僕たちは落ちてきた鉄骨や足元に散乱している商品だったものを避けながら他の出口を探して歩いた。途中、こと切れた人や鉄骨に挟まれて死んでしまった人などがいたが僕は何とか姫姉にそれを見せないように誘導していった。そうやって何とか他の出口に向かうがどこも瓦礫でふさがれていて通れそうになかった。

「ここもだめだ。他を探そう姫姉」

「そうだね優君」

 それからどのくらい歩いただろうか、やっと使える出口を見つけた。そこには他の人を救助している父さんたちの姿もあった。

「父さん、お父さーん」

 僕は張り裂けるくらい叫んだ。そしてその声は届き父さんたちがこっちに向かってきた。

 その時、頭上が崩壊し僕たちを瓦礫が襲う。僕は姫姉をかばいながら走った。だが瓦礫から逃れられず僕と姫姉の背中に瓦礫がのしかかる。

 僕はそこで意識が遠のいた。最後に聞こえたのは姫姉の泣き叫ぶ声と、駆け付けた父さんたちの声だった。

 死んだと思っていた僕が次に目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。

「起きたか優。俺が誰か分かるか」

「へんな事を聞くんだね父さん」

「意識ははっきりしているか?ここは病院だ。なぜ病院で寝ているかは分かるよな」

 その言葉で僕は姫姉をかばい瓦礫の下敷きになってしまいそのあと救助が来て助けてもらったところまでは思い出せた。

 そのことを父さんに告げるとその続きを話してくれた。

 その後僕は意識不明のまま病院に搬送され手術を受けたらしい。そして一命をとりとめたものの三日間目が覚めなかったらしい。そして今こうして目覚めて話をしていると。

 そういえば姫姉はどうなったんだろう。すごく心配になり父さんに尋ねた。

「姫菜ちゃんならそこに寝ているよ。優が目覚めるまでそばを離れないって聴かなくてね」

 父さんの言った方向に目をやると少し怪我をしているのが見て分かるが無事な姫姉がとなりのベッドで眠っていた。

「よかった。無事に生きてた」

「そうか、だが優、お前は無事じゃない。なにもよくは無いぞ」

「そうだね、父さん。ごめん」

「わかればいい。あと優に言っておかないといけないことがある。お前のその背中、傷跡が残るらしい」

「それくらいはどうってことないよ」

「だが姫菜ちゃんがそれを聞いて泣いてしまってな、自分も傷跡が残るというのに」

 えっ、姫姉に傷跡が残る。

「どういうこと父さん!姫姉に傷跡が残るって!」

「いや、その、最後のあの時姫菜ちゃんも巻き込まれていて背中と右肩に傷跡が残っちまうみたいなんだ」

 そんな……守れなかったのか。僕はなんて無力なんだ。好きな女の子一人守れないなんて。

「まあなんだ、そんなに目立つような傷じゃないからそんなに気に病むなよ。姫菜ちゃんだってそう言ってたしな」

 父さんに励ましの言葉を掛けられたがあまりにもショックで僕はまともに返事ができなかった。

 それから時間が経ち姫姉が目覚めた。

「おはよう、姫姉」

「優、君。優君。優君っ!気が付いたの!大丈夫、どこか痛いところは無い?なんであんな無茶したの。こんな傷まで作って、私優君が死んじゃうかもしれないって」

 そして姫姉は泣き出してしまった。僕はただそれをなだめる事しかできなかった。







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