第34話 ドラゴンを倒してしまった
前回のあらすじ
スタンピードが起こった。
「スティール!スティール!スティール!デュアルガンド」
俺は群れて襲ってくる魔物たちから心臓ともいえる魔石をスティールで奪い盗りデュアルガンドで撃ち抜く。
「優、南門が突破されそうだよ!」
「クソッ、全然間に合わねーよ。どんだけ湧いてくるんだよ」
「優君、そろそろここも危なくなりそうだよ」
「そうね、もう上から攻撃してもあまり意味は無いわね」
そんな事は分かっているが今下に降りれば城門をぶち破ってくる奴と真正面から戦うことになるだろう。
「皆、ミスリルゴーレムと地竜どっちと戦いたい?」
「「「もちろん地竜」」」
皆やる気満々だしお膳立てとして俺がミスリルゴーレムを抑えるしかないか。
「わかった、ミスリルゴーレムは俺がなんとかするから、皆は地竜を倒してくれ」
「「「了解」」」
三人はそういうと城門の前に降りて行った。俺は出来る限りミスリルゴーレムから魔石を奪い盗って行動不能にしていく。
そうしているうちに地竜が城門を突進して壊してしまった。
「皆地竜が来るぞ!」
俺が声をかけると三人は同時に別々の地竜に駆け出して行った。
姫姉は影に入り地竜の死角から斬撃を繰り広げ、慎夜は竜牙の短剣を巧みに使いこなし地竜の体力を削いでいく。そして橘さんは二本の竜牙の短剣を融合させて火風竜牙の短剣に作り替えて地竜の体を切り刻んでいく。
それから数分後三人は地竜を怪我一つなく倒してしまった。俺もそのころにはミスリルゴーレムの魔石を全部盗りおわっていた。
「よし、大物は今倒したこいつ等だけだ!後は残党狩りの時間だッ」
「一匹も残らず倒してみせるよ」
「今の戦力なら何とか勝てるだろうね」
「このままいけば何とかなりそうですね」
こうして俺たちは残党を狩り始めて、それから一時間経った頃やっと魔物を殲滅することができた。
「あー、やっとおわったぁー」
俺は緊張から解き放たれ汚れるのも気にせずにその場に倒れ込んだ。
「優君、そんなところで寝たら汚いよ。寝転ぶなら王城まで我慢しなさい」
姫姉にそう言われ俺はすぐさま立ち上がり身体に着いた土を払い落とした。
「取りあえず今回倒した魔物は回収していこう」
慎夜がそう言い俺たちは自身が倒した魔物を無限収納に突っ込んだ。
とりあえず自分が倒した分の魔物は無限収納に入れたので俺たちは王城の離れに還ることにした。
だがその時、南の空から大きな咆哮が鳴り響いた。
「GURUAAAAAAAAAAAAAAAAAAh!!」
その咆哮が鳴り響いた方向を見ると空に一体のドラゴンが飛翔していた。
「そうか,この魔物たちはあのドラゴンから逃げてきていたのか」
クソッあんなデカい奴どうやって倒せばいいんだよ。こっちの攻撃なんて当たらない高さにいるし、ブレスでも吐かれたらひとたまりもない。
「取りあえず使ってみるか、透視からのスティーール!」
俺は透視でドラゴンの胸のあたりにある巨大な魔石に目を凝らし、全力でスティールを放った。
数秒の沈黙のあと俺の手にはビーチボールサイズの魔石が現れ、空を飛んでいたドラゴンは急に力を失ったかのように地面に墜落した。
「は、はは、はははやった、やったぞぉぉぉ!ドラゴン倒したりー」
俺は手に持った魔石を天高く掲げ叫んだ。
そしてそんな俺にこの場にいた全ての者たちが一斉に喜びの雄たけびを上げた。
それからは兵士たちが総出で城門の修理や魔物の処分に悲鳴を上げていた。
そのころ俺たちは王城の離れに戻って来ていて、汚れを落とすためにお風呂に入っていた。
度重なるモンスターの戦闘で疲労がたまっていたのか風呂からあがると俺たちは各々の部屋に戻りひと時の休息をとっていた。
それから何時間寝ただろうか、目が覚めて窓の外を見ると夕日が沈みかけていた。少し寝すぎたと思い体を起こすと横で幸せそうな顔で寝ている姫姉の姿があった。
俺は姫姉を起こさないように注意しながら部屋を出て、食堂に向かった。食堂に入るとメルさんが声をかけてきた。
「おはようございます、ユーマ様。よくお休みになられてましたね。先ほどアウリア様が来てユーマ様達に伝言を残して行かれました」
「なんて?」
「少し用事があるので起きたらメルと一緒に執務室まで来てください。とのことでした」
お姫様が俺たちに何の用だろうか。
「じゃあとりあえず行きましょうかメルさん」
「はい、お供いたします」
こうして俺はメルさんに連れられて王城にある執務室にやって来た。
「お待ちしておりました。ユーマ様、此度は助言だけでなく戦闘にも参加して頂き誠にありがとうございます。今回の件ですが、王家からはあなた方にドラゴン討伐の証の勲章を受け取って貰いたく」
「それを俺たちが貰う事よってのデメリットは?」
「ありません。せいぜい有名になる程度です」
「わかった。なら受け取らせて貰う」
「では、叙勲の式を明日執り行いたいと思いますのでお願いしますね」
「話はそれだけか?」
「はい、以上です」
「なら戻らせて貰うぞ」
「はい、お付き合い頂きありがとうございます」
その言葉を聞きながら俺とメルさんは離れの方に戻って行った。