第29話 勇者召喚した国が滅ぼされるらしい
前回のあらすじ
ついにダンジョンを踏破した。
王城にへと帰り着いた俺たちはダンジョンでの疲れもあってか夕食と湯浴みを済ませた後すぐに眠りについた。
次の日朝からギルドで換金して貰いに行くと何やらギルド内がいつもよりも騒がしかった。少し気になった俺たちは聞き耳を立てた。
「おい、聞いたか」
「ああ、聞いたぜ」
「あの人が帰って来たみたいだな」
「あの人が帰って来たって事は何か大きなことが起きるかもしれねーな」
「だがなぜ今になって戻って来たんだ」
「噂じゃどうやら禁忌を犯した奴らに制裁を加えてるって話だぜ」
「禁忌ってーと勇者召喚の事か」
「どうやらそうらしい。あの人は勇者とダチだったらしいからな」
「なるほど、勇者の意思を次いで世直しってことか。痺れるぜ」
「だが噂では勇者召喚した国は悉くあの人につぶされてるらしいぜ」
「ほんと馬鹿だよな、勇者召喚した国はよ。だってもう魔族との戦争なんて50年前に終わっちまって今ではそれなりに仲良くしてるって~のによ。それなのに魔王を倒すためとか言って勇者を召喚しちまったんだからな」
「やっぱり平和が一番だよな。そうじゃなきゃ酒が不味くなっちまうぜ、ガハハハ」
朝から酒を飲んでいた冒険者達がそんな話をしていた。
「どうやら過去の勇者の友達が勇者召喚した国をつぶして回ってるみたいだ」
「という事はこの国もその人に滅ぼされるのかな」
「いえ、それはたぶんありえないでしょう。わが国では勇者召喚は極秘裏に行われたため一部の貴族しかこのことを知りません。それに調べたところ街にも噂すら出回っていなかったですし」
お姫様が否定してきた。
まあ今この国に滅びられたら衣食住を全部失うことになるし、滅びられちゃ俺たちが困るな。
「まあとりあえず換金でもしてもらいに行きますか」
俺たちはとりあえず冒険者ギルドにきた目的のドロップ品の買い取りをしてもらうために買い取り専門カウンターにやって来た。カウンターには昨日と同じ職員さんが出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ、本日は何をお持ちになられましたか?」
俺たちは無限収納に入っているダンジョンで手に入れたドロップ品を出していった。
「はい、鑑定しますので少々お待ちください」
職員さんが鑑定している間暇だったので、同じく暇そうにしているギルドマスターに噂の事を聞いてみた。
「ギルドマスターは噂の事知ってますか?」
「ああ、小耳にはさんどるよ。なんせ奴はSランクの冒険者じゃからな。だがもうそれなりの年齢のはずなんじゃが未だに全盛期の頃のように暴れまわってるらしいの」
「なにそれ、ホントに人間なのか?」
「儂も若いころ何度か会った事はあるが奴は馬鹿みたいに強かったのう。当時はまだFランクだったのにBランク冒険者と互角に渡り合っておったわ」
「もし会えたら手合わせでもしてもらおうかな」
「なに、奴ならそのうちここにも来るじゃろう。なんせおぬしたちがいるのだから」
「そっか、ここにもやって来るのかじゃあ手合わせして貰え……ギルドマスター、もしかして俺たちの事何か知ってるんですか?」
今ギルドマスターが何か変なことを言った気がするんだが。
「おぬしたちが異世界から召喚された勇者なのは最初に会った時から気付いておったよ。その髪と瞳の色は勇者とそっくりじゃしそれに何よりもこの世界の者とは違う波動を感じるからの」
思ってたよりもギルドマスターはすごいらしい。ってゆーか波動ってなんだよ、俺には一切分からないぞ。
「そうか、じゃあこの国もあと少しで滅びてしまうんだな」
俺は少し残念に思いながらそうつぶやいた。
「なにを言っておる。あ奴が滅ぼすのは勇者召喚を実行した者たちだけじゃよ。無関係の民には危害は加えんよ」
「なんだ、大規模魔法とかで一気に滅ぼしたりするんじゃないんだ。よかった」
「奴はそこまで狂ってはおらんよ、そんな事よりそろそろ鑑定が終わるぞ」
ギルドマスターはそう言って話を一方的に終わらせてどこかに行ってしまった。
「皆様鑑定が終わりました。それよりギルドマスターと知り合いなんですか?結構親しそうに話してましたけど」
「まぁ、ちょっと色々あって。そんな事より鑑定はどうでしたか」
「はい今回もそれなりに良い物がありましたので結構な金額になりましたよ。合計で15720シアになりました」
一人当たり2620シアってところかな。一日の稼ぎにしては良い方なんじゃないかな。
「ではいつも通りギルドカードに入れといてください」
俺たちはギルド職員さんにギルドカードを渡して入金して貰った。
「はい、入金しておきました。それとタチバナさんとシンヤさんはEランクにランクアップしました。おめでとうございます。そしてユーマさんとヒメナさんはDランクにランクアップです。普通なら一年以上かかるのにとってもすごいですよ」
そんな事を言いながら俺たちに新しくなったギルドカードを手渡してきた。
俺と姫姉のギルドカードは銅から銀の素材に変わった。
俺たちはそんな真新しいギルドカードを受け取り職員さんにお礼を言ってクエストボードを見にやって来た。
「さて、今日からはまた何か依頼でも受けてみようかな」
「そうだね、何か僕たちに向いたいい依頼でもないかな」
俺と慎夜は二人でクエストボードを眺めていた。すると慎夜がよさそうな依頼書をもってこっちに戻って来た。
「優、これなんかどうだい。僕たち向きだと思うんだけど」
慎夜が持ってきた依頼書にはこう書いてあった。
鉱石の運搬
依頼者鍛冶師ギルド
1キロにつき100シア
「そうだなこれなら無限収納もあるし大量に運べそうだな」
そうして俺たちはこの依頼を受けることにした。