第260話 宝箱の中身は家
「それじゃあ早速」
少女に宝箱の鍵を開けて貰い俺は虹色に輝く宝箱の蓋を開いた。
宝箱の中にはミニチュアのログハウスが一つ入っていた。
見ただけでは分からなかったので俺は鑑定解析を使ってコレが何かを調べて見た。
《セーフハウス》
錬金術で作られた魔法の家
地面に置くと人が入れる大きさになる
所有者登録をした者とその者の許可を得た者しか扉を開けられない
中にある専用の機器に直接魔力を流すか魔石を入れる事で結界が張られる
制作の神に仕える天使が作った大成功品
家本体に結界魔法がかけられておりフルパフォーマンスでドラゴンのブレスすら防ぐ程の強度を持つ
但しそれ以上の攻撃を一度に受けると結界が壊れてしまう
結界の再展開にはまた魔力を注ぐか魔石を入れる必要がある
市場に出回れば直様国が買い取るレベルの品質
研鑽を積んだ天才錬金術師ですら作る事が困難な品
どうやらとんでもない大当たりを引いたらしい。
早く使ってみたい欲を抑えて俺と少女は隠し部屋を出て何が手に入ったのか訊ねてくる姫姉に「セーフエリアまで戻ってから話す」と返し俺たちは階層の入り口まで駆け足で移動した。
モンスターの邪魔が入らない階層の入り口まで戻って来た所で俺は無限収納にしまっていたセーフハウスを取り出して地面に置いた。
地面に置かれた瞬間にセーフハウスはみるみる大きくなり俺たちがなんなく入れるサイズになった所で止まった。
そこで俺は今回手に入れたこのセーフハウスについて姫姉と少女に鑑定解析で分かった事を話した。
「へぇ、それじゃあコレがあれば大体どこでも周りを気にせずに眠れるのね」
「ドラゴンとかが出ない限りは」
俺がそう言うと姫姉は「最高じゃない!」と目を輝かせてセーフハウスを見つめた。
「コレが御伽話に出てくる魔法の家ですか」
俺たちがセーフハウスの機能にはしゃいでいると少女が小さな声でそう呟き、それを聞いた姫姉が反応し、「御伽話って?」と少女に聞いた。
「はい、初代勇者伝説の御伽話の事です」
「それにこのセーフハウスが出てくるのか?」
「はい魔法の家と書かれてましたが大きさが変わる事と結界を張ってくれる特徴が御伽話の内容と一致しているので多分同じ物だと思います」
「そうなのか、なら尚のことコイツを手に入れられてラッキーだったな」
御伽話にすら出てくる程の物だとすると今後重宝しそうだなと思いつつ俺は取り敢えずセーフハウスの扉を開けようと触れたタイミングで「所有者登録をしますか?」と問われた。
俺は直ぐに「する」と答えると少し魔力を吸い取られ「登録が完了しました」と聞こえると同時に扉の鍵が開く音がした。
俺は扉を開け、中に入って驚いた。
入って直ぐの玄関から見えるだけでも左右に二つ奥に一つ扉があった。
見た目よりもさらに広いのかと思い中に入って行こうとした所で「入室を許可しますか?」と聞こえ、さらに「優くんいーれーてー」と姫姉に声を掛けられた。
俺は直ぐに「許可する」と言うと入り口の前でパントマイムの様になっていた姫姉の手が急に壁が消えたかの様にスッと家の中に入りその勢いのまま家に入って来た。
その後少女の許可もして、俺たちは手前の部屋から確認していった。
左右の二部屋とも何もない部屋でこれから家具を入れれば直ぐに住めそうな部屋だった。
そして一番奥の部屋は左右の部屋を合わせた広さの部屋だった。
間取り的にはダイニングといった所だろう。
「中まで御伽話で聞いたのにそっくりです」
どうやら内装まで御伽話通りの物らしい。
こうなってくるとそういうテンプレで作ったと思えてくるが真実は開発者のみぞ知ると言ったところか、とか思いつつ俺たちはそれぞれどういうふうにこの家を使うか相談を始めた。