第239話 経費申請書を書く
「だぁぁ、面倒くせー。何買ったかなんて覚えてねぇーよ」
「ぼやかないでよ、私だってざっくりとは覚えてるけどそれがいくらでどれだけ買ったかなんて覚えてないのを必死で思い出してるんだから。なんでこの世界にはレシートが無いのよ」
俺たち二人がそうぼやきながら申請書と睨めっこしていると少女がおずおずといった様子で口を開いた。
「あの、ギルドカードで買った物ならギルドカードに履歴が残ってて専用の道具があれば確認できると聞いたことがあります」
少女の言葉を聞き、俺と姫姉は藁にも縋る勢いで控えていたメイドさんにギルドカードの履歴を見たいと伝えるとメイドさんは「少々お待ち下さい」と言い部屋を出て外にいる人に何かを伝えると数分後、それなりの大きさがある機械をワゴンに乗せて一人の女性が護衛と思しき兵士を二人連れてやって来た。
「ユーマ様お待たせしました、こちらが各種カード読み取り機です。そして彼女は経理部の各種カード操作機の国家資格を持ったケリー・アカウティンです」
「紹介に預かりましたケリー・アカウティンです。ギルドカードなどの読み取りから書き込み変更まで全ての作業をする国家資格を持っておりますので何なりとお申し付けください。それと経理部で仕事もしていますので経費関係の質問もお気軽にお聞きください」
できる女性って感じのケリーさんは俺たちにそう自己紹介をした。
メイドさんがケリーさんを呼んだのは経費関係の質問にも答えられるから何だろうなと思いつつ俺は「それじゃあまずは支払いの履歴をお願いします」と言いながら自分のギルドカードをケリーさんに手渡した。
「お預かりします……、出ました。こちらになります」
ケリーさん俺からギルドカードを受け取り機械にセットして操作をした後、読み取り機に表示された取引の履歴を俺に見えるようにした。
俺は機械に表示されたそれらの日付と取引相手と金額が書かれたのを見ながら何を買ったか思い出していくことになった。
「この日の翌日からダンジョンに入っているからこの六万二千シアの支払いは魔導コンロとかのはず。でこのすぐ後の支払いはケアテミスさんのところでポーションを買った時の支払いでその後のはダンジョンには関係ない自分の買い物で、その後のはカジノの取引であとはこの支払いがマナポーションでこっちが寒冷耐性ポーションのはず。で合わせて十六万五千九百シアと」
俺は何とかダンジョン攻略の為に買った分の経費申請書をケリーさんに確認して貰いながら書き終えた。
「確かに、これで経費申請書は完成です。こちらは私の方から経理部に提出しておきます。経費に関しては次の振込日に一緒に振り込まれますのでその時にギルドの受付か役所でご確認ください」
「「振込日?」」
ケリーさんの振込日という言葉に俺と姫姉は頭に疑問符を浮かべ声に出していた。
「お二人は知りませんでしたか、この国の王城で働く者は月の終わりまでの働いた分の給与を次の月の終わりに支払われる仕組みになっています。ですので本日出して頂いた経費は来月の末に支払われるということです」
俺と姫姉は俺たちの世界とその辺は変わらないんだなと思いつつ「なるほど」と溢した。
経費申請書を書き終えた俺たちは自分たちの部屋に戻り、俺は昼食の時間までのんびりと過ごす事にした。




