第229話 エンチャントの上書きが終わった
カジノのボーイさんから「問題がないとはいえカジノ内でのスキルの使用はできる限りお控え下さい」と目が笑ってない笑顔で言われたり、遠慮がちな少女から「やっぱり受け取れないです」と言われたりしながら俺と少女はケアテミスさんの館に戻って来た。
館に入るとメイドのリリィさんが「ヒメナ様とケアテミス様はもう少しお時間が掛かる模様ですのでこちらでお待ち下さい」と言って俺と少女を入り口直ぐの部屋に案内してからお茶を持ってきてくれた。
それから俺と少女は大人しく部屋でゆっくりと寛いでいるとケアテミスさんと姫姉がメイドのリリィさんに連れられて部屋にやって来た。
「いやぁ〜二人とも待たせたね」
ケアテミスさんは笑顔でそう言いながら俺の対面の席に座り、姫姉は疲れた様子で「やっと終わった」と呟きながら俺の横に座って俺に体を預けて来た。
「さてそれじゃ新しく生まれ変わった装備について話そうか」
ケアテミスさんがそう言うと姫姉は無限収納から俺が預けた俺の装備一式を取り出してテーブルの上に並べた。
「まずは武器から説明しよう! このオリハルコンの刀? だがドラゴンの牙を一つ粉にしてその粉を三分の一と魔石を使ってエンチャントを施した。その結果、筋力の上昇率が向上して更にドラゴンの牙特有の魔法防御を貫通する能力が付与できた。ただこの魔法防御貫通だが低位から中位位までの魔法防御しか貫通出来ないのでそこまで期待はしないで欲しい。アダマンタイトの刀も同じようにエンチャントを施してたら耐性系のエンチャントが統合されて破壊耐性になり魔法防御貫通の能力を得る事が出来た。確認してみてくれ」
刀の説明を聞いたところで俺はケアテミスさんの言葉に従い二振りの刀に鑑定を使ってみた。
《オリハルコンの魔刀》
オリハルコンで出来た魔刀
STR30%上昇、切れ味向上、頑強、魔法防御貫通(中位)のエンチャントが刀自体に、鞘には修復のエンチャントが付けられている
《アダマンタイトの魔刀》
アダマンタイトで出来た魔刀
切れ味向上、頑強、破壊耐性、魔法防御貫通(中位)のエンチャントが刀自体に、鞘には修復のエンチャントが付けられている
「確認しました。確かに説明通りのエンチャントが付いてます」
俺がそう言うとケアテミスさんは「良かったよ、ヒメナちゃんにも確認して貰ったけど他にも見て貰った方がより確実だからね」とホッとした様子でそう言ったあと、続けて口を開いた。
「それじゃ次は防具の方の説明に入ろうか」
ケアテミスさんはそう言いながらチェストアーマーを指差して説明を始めた。
「まずこのチェストアーマーだけど軽量化と頑強そして魔法耐性が付いていたがドラゴンの鱗を粉にしてエンチャントを施した結果、魔法耐性の性能が向上して更に頑強が頑強+1になった。籠手と脛当てについても同じ強化になった。そして靴だけどAGIの上昇率は変わらなかったが他のエンチャントについては他と同じく上昇した。防具の説明はこのくらいかな。是非確認してくれたまえ」
説明を終えたケアテミスさんに言われるがまま俺は防具に鑑定解析を使ってケアテミスさんの説明通りのエンチャントが施されていることを確認した。
その事をケアテミスさんに伝えて問題がなかったと安心したケアテミスさんは笑顔で今度は少女の武器を姫姉に出すように言って、出された武器を指差しながら説明を始めた。
「さて次はこの武器の説明を始めようか。このオリハルコンの短剣だがコレもドラゴンの牙の粉を使ってエンチャントを施した結果切れ味に+1と付いて魔法防御貫通(中位)も付いた。アダマンタイトの短剣の方には魔法防御貫通(中位)と破壊耐性のエンチャントが付いた。そして一番苦労したのがこのやたらと数の多いオリハルコンとアダマンタイトの丸杭だが魔法防御貫通は全部に付いたがそれ以外のエンチャントは付かなかったし、元々付いていた頑強のエンチャントが強化されなかった。原因は多分だがこの丸杭のエンチャントを受け入れる容量が不足していたからだと思う。こればっかりはどうにもならないので諦めてくれ。それで防具の方だがコレはユーマ君の装備と同様に魔法耐性の性能が向上して更に頑強が頑強+1になったくらいかな。それじゃ説明は以上だ。さぁユーマ君確認してくれ」
俺はそう促されて鑑定解析を使い、説明通りのエンチャントが付いていると伝えた。
それを聞いてケアテミスさんは満足気に頷いた後「また良いモノが入ったら私の所に来たまえ。ヒメナちゃんはもう私の弟子だからな、いつでも相談に来ると良いさ。あ、あとお代はドラゴンの牙の粉を少々貰うことと貴重な体験の引き換えに割り引いて金貨50枚のところ金貨25枚にしとくよ」と言ってきた。
姫姉の勉強代も含まれていると考えると安いのか、と思いつつ俺はギルドカードを取り出して支払いを済ませた。
そして用事を済ませた俺たちはケアテミスさんの館を後にした。
因みに疲れ切っていた姫姉は俺が背負って帰った。




