第226話 飛ぶ斬撃を完全に使える様に特訓
「今日は昨日新たに使える様になった飛ぶ斬撃を完璧に使える様に特訓をしたいと思います」
翌日、朝食を終えて俺の部屋に集まった姫姉たちに俺はそう宣言した。
それを聞いた姫姉は「良いんじゃない」と言って俺たちはメルリアさんに訓練場を借りれるように念話で頼んだ。
昼から訓練場を使える事になった俺たちは昼までの間、各々好きなように時間を潰した。
昼食を食べた後俺たちは少し休憩してからメルリアさんの案内で訓練場までやって来た。
今回は見られても困る武器を使う気は無いので他にも訓練している者たちが居る中隅の方を借りることになった。
俺は無限収納から丸太を取り出し立てて距離を取った。
ミスリルの刀に手を添えて居合斬りの体勢を取り、刀に魔力を流して魔力を飛ばすイメージで刀を抜き放った。
刀に溜まっていた魔力が斬撃となって飛び、的の丸太を上下真っ二つに切断した。
集中してからの飛ぶ斬撃は何とか感覚を掴んで使える様になっていた。
後はこの飛ぶ斬撃を居合の構えを取らずに使える様にしたい。
そう考えながら俺はそのままの体勢から刀を振るったが斬撃は飛ばなかった。
俺がああでもないこうでもないと頭を捻りながら刀を振り回し、少し休憩と刀を納刀したところでメルリアさんから声を掛けられた。
「ユーマ様、失礼で失礼ですが、その、その技は見せても宜しかったのですか?」
なぜか心配そうにそう聞かれて俺は困惑しながら「何でですか?」と問い返した。
「その、その技は奥義とかではないのですか?」
「ん? 別に奥義とかではないですよ。そもそも昨日思い付きでやってみたら出来たんで、使いこなすために練習してるんですよ」
俺がそう言うとメルリアさんは唖然とした表情でぽつりと「奥義と言われるような技を思い付きで……」と呟いていた。
どうやら飛ぶ斬撃はメルリアさんの認識では奥義に属しているらしい。
俺からすれば魔法があるんだから飛ぶ斬撃くらいあってもおかしくないと思っていたんだがどうやらそうではないらしい。
「教えましょうか」
俺は何となしにそうメルリアさんに提案するとメルリアさんは一気に近づいて来て「是非お願いします!」と良い返事をし、聞き耳を立てていた周りの女性兵士たちが「私たちにも教えて下さい」と頭を下げて来た。
まさかここに居る全員が知りたいと言いてくるとは思わず俺は姫姉に助けを求め、二人で全員に飛ぶ斬撃を教えることになった。
「まずは俺たちがやっている方法を教えるけどそれで使える保証はないのでそれを理解したうえで聞いて欲しい。俺はこの刀を納刀した状態で刀に溢れるほどの魔力を注いで注がれた魔力が飛ぶイメージで抜刀する。するとこんな感じで魔力が斬撃として飛んで行く」
俺は説明をしながら刀を素早く抜刀して斬撃を用意した的に向けて飛ばし的の丸太を両断した。
見ていた女性兵士たちは両断された丸太を見て「おぉ!」と驚きの声を出して自分たちも使えるかもという期待に胸を膨らませているようだった。
「それじゃあ各々やってみようか」
おれがそう言うやいなや女性兵士たちはそれぞれ的を用意して来て剣に魔力を纏わせて振り出した。
全員が練習を始めてから俺もどんな状態でも使える様にする訓練を再開し十数分後、そろそろ休憩をしようと辺りを見回すと魔力が切れてその場に座り込む者がチラホラといた。
俺はダンジョンで戦って来たおかげかレベルが上がっている上に途中で何度かマナポーションを飲んで回復しているので魔力が底を尽く事は無かったが普通は何発も使えば魔力切れになるらしい。
それでも感覚を掴めた者もいるようで魔力が切れた後も座りながら剣を軽く振って感覚を忘れない様にイメージトレーニングをしていた。
俺も何とか居合の構え以外でも斬撃を飛ばすことが数回に一回ほど出来る様になった。
因みに姫姉は一度失敗して二度目には当たり前のようにどの体勢からも飛ぶ斬撃を撃てるようになっていたし、なんなら二連続で斬撃を飛ばして今は五連続に挑戦していた。
俺も早くあの域に辿り着きたいなと思いつつ、魔力が回復した事を確認して訓練を再開した。
今の所横一文字と縦一文字で刀を振る時は斬撃を飛ばすことに成功しているので後は斜めに斬り上げたり斬り下ろしたりする時にも斬撃を飛ばせるようにその感覚を掴むことに専念する。
練習を始めて七回目で何とか斬り下ろしの時にも何とか斬撃がちゃんと飛んだ。
後は斬り上げだけと俺は何度も繰り返して十回目で何とかコツを掴んで放てるようになり、それからは変に集中をすることなく斬撃を飛ばせるようになった。
そこからの俺はノリに乗っていたようで休憩を挟んでから連続で斬撃を飛ばす訓練を開始したが直ぐに二連続で斬撃を放てるようになり、もしかしたらと思いいける所まで連続で刀を振るい続けた結果十二連続で斬撃を飛ばすことに成功して姫姉よりも三回多く飛ばせるようになった。
その後悔しがっていた姫姉が十六連続で斬撃を飛ばし俺の記録を簡単に追い抜いて行った。




