第225話 空を飛ぶドラゴンを倒した
「こうなったら一か八か試してみるか」
俺はこの手詰まりの状況を変えるべく納刀した状態で刀に魔力を流し込み宙にいるドラゴンに向けて居合斬りを放った。
だがそんな簡単に成功するわけが無く抜き放たれた刃に魔力が纏われた状態のままで上手くいかなかった。
でも刃に魔力を纏わせる事が出来ると分かった。後はどうやって魔力を斬撃として飛ばすかだ。
今のは魔力を刀に纏わせてた。なら今度は飛ばすイメージで居合斬りを放ったらどうだ。
俺はそう意識しながら居合斬りを放った。すると今度は魔力が刀から離れて飛んだが直ぐに霧散した。
だけどコツは掴んだ、あとはドラゴンかいるあそこまで斬撃を飛ばすだけ。
俺はそう考えながら今度こそ上手くいけと祈りつつ刀の限界まで魔力を注ぎ込み飛ぶ斬撃のイメージで居合斬りを放った。
抜き放たれた刃に纏われた魔力が居合斬りの勢いのまま斬撃としてドラゴンに向かって進み、斬撃が飛んでくるとは思ってもいなかったであろうドラゴンは咄嗟に避けようと羽ばたいたが間に合わず俺の飛ぶ斬撃をその身体に受けた。
「ちょっと優くん、今の何?! どうやったの?」
上手くいってドラゴンに攻撃を与えた斬撃を見た姫姉が捲し立てるように俺にそう質問してきた。
「飛ぶ斬撃だよ、アニメとかでよくある奴」
俺がそう返すと姫姉は「なるほど、それならアイツにも当たるか」と言って納刀し居合の構えをとって一閃、俺よりも速く鋭い斬撃がドラゴンの翼に当たりドラゴンは墜落した。
「アハハ、これ楽しいね!」
姫姉はそう言いながら墜落したドラゴンに飛ぶ斬撃を何度もを放った。
動けなくなったドラゴンはいい的で何度も繰り返される斬撃をその身に受けて絶命した。
思いつきとはいえ何回か試行錯誤して使える様になった飛ぶ斬撃を一発で成功させるどころか俺のよりも強い威力で放たれこれだから天才は、と少し姫姉に嫉妬しつつもドラゴンを倒して現れた宝箱に近づいた。
今回の宝箱も罠は無く運が高い俺が代表して宝箱を開けた。
宝箱の中には鱗が底いっぱいにギッシリと詰まっていてその上に牙と思われる白く尖ったモノが四つとデカい魔石入っていた。
鑑定解析を使えば直ぐにドラゴンの牙だと判明し、俺はそれらを無限収納に仕舞って宝箱と共に現れた扉を通って四十一階層の入り口にある転移クリスタルを使い地上に帰ってきた。
地上に帰って来るともはや当たり前のように待機していた馬車で王城まで送って貰い、俺はダンジョンの情報を報告するべくアモダフさんの居る部屋までメルリアさんに送って貰った。
部屋に入ると書類仕事をしていたアモダフさんが席を立って一礼した後、対面の席に掛けるように俺に促して来たので俺は椅子に座り話を始めた。
今回もスキルのマップを見ながらダンジョンのマップを書きつつ口頭で色々説明をしてダンジョンの情報の提供を終えた。
途中ドラゴンの話をした時には顔色を変えて手に入れた素材を買い取らせてほしいと懇願されたがその辺は姫姉たちと相談する必要があるので低調にお断りした。
やることを終えた俺は自分の部屋に戻って来て夕食の時間までの少しの間、装備の点検をして過ごした。
装備の点検も終えベッドに横になりだらけているとメルリアさんが夕食の準備が整ったと伝えに来た。
俺は寝癖とかついてないか確認してから部屋を出てメルリアさんの案内で姫姉たちと共に食堂に向かった。
食堂には俺たちが一番乗りだったようでまだ誰もおらず俺たちはいつもの定位置に座って皆が来るのを待った。
数分後にウィンダムさんたちがやって来てダンジョンの事を聞かれたのでドラゴンと戦ったと伝えると横で話を聞いていた田中さんがぎょっとした様子で驚き、ウィンダムさんは一瞬ポカンとした後、「そう言えば君たちはもとよりドラゴンスレイヤーだったな」と笑いながら納得した様に頷いていた。
そんな話をしていると王女様とウォレンさんがやって来て席に着いたところで料理がメイドによって運び込まれて来た。
今晩の料理は温卵の載ったサラダにビーフシチューに白パンだった。
全員の前に料理が揃ったところで王女様たちが食前のお祈りをし、俺たちは頂きますをしてから食事を始めた。
俺は温玉の載ったサラダに手を伸ばした。
温玉サラダにはカリカリに焼かれたベーコンとレタスにキュウリが入っておりそこに黒胡椒とシーザーサラダドレッシングが掛けられていた。
まずは温玉を崩さずに食べた後、温玉を崩して食べた。
温玉なしでも美味しかったが温玉を絡めると濃厚な卵の黄身の味が合わさって更に美味しくなっていた。
サラダを完食した俺は次にビーフシチューへ手を伸ばした。
じっくりと煮込まれているのかホロホロと解れる肉が濃厚なビーフシチューの味にマッチしていて凄く美味しかった。
そして白パンを浸けて食べても美味しかった。
全ての料理を食べ終えるとデザートが運び込まれてきた。
今回のデザートは桃を丸々一個使ったフルーツゼリーだった。
桃の甘さがしっかりとゼリーの中に閉じ込められていてこれも美味しかった。




