第217話 久しぶりに出会ったアイツ
あれから俺たちは順調にダンジョン攻略を続け二十五階層のボス部屋の前までやって来ていた。
二十五階層までも二十階層までと同じく遺跡の様な見た目だったが罠だけでなく二十階層よりも頻繁に現れる(それでも十五階層までよりは圧倒的に少ない)魔物との戦闘に時間を取られながらもなんとか辿り着いた。
階層が上がるにつれて魔物が上手く罠を利用するようになっていて苦労した。
ボスが待ち受けているであろう扉には絵が彫られていてそれを見た俺は中に何が居るか察した。
姫姐たちも扉の絵から何が居るか察したのか無限収納から別の刀を取り出して付与を施していた。
俺も今回の相手にエアバレットは効果無さそうだなと考えてそれなりに効果がありそうなダークバレットを魔銃デュアルガンドにセットした。
扉を開いて中に入ると予想していた金属の輝きを放ったゴーレムが俯いたままその場に待機していた。
俺はそのゴーレムを見て既視感を覚えていた。
何となく見た事があるメタリックな輝きを放つゴーレムを鑑定解析を使って確認してみたらミスリルゴーレムと出た。
通りで見た事があるはずだ、しょっちゅう使っている訳だし。
俺は姫姉たちに目の前のボスがミスリルゴーレムだと伝えると姫姉は「なんだ」と言って肩の力を抜き、少女はミスリルゴーレムと言う事に驚いて「えっ!」と声を漏らした後、姫姉の反応を見て更に「えっ?」と驚いていた。
普通なら少女の反応が正しいのだろうが俺がミスリルゴーレムを完封勝利をした事があるのを知っている姫姉からすればそこまで恐れるはずがない。
そこまで考えてふと気がついた。そういえば少女にスティールを使った戦闘法を見せた事無かったけと。
一応スティールを使った戦闘法はコッチの世界での戦闘に慣れるために危険が差し迫った時の一か八かでしか使わない様にしていたので少女は知らなかったわけか。
まぁわざわざ説明する必要もないし今回もコッチの世界での戦闘に慣れるためにもスティールは使わないと決めて姫姉に目で合図をして目の前のミスリルゴーレムに近づいた。
ミスリルゴーレムの腕が俺たちに届く範囲に近づいたところでミスリルゴーレムは立ち上がり腕を振り上げた。
俺はすかさずミスリルゴーレムの腕の範囲外に下がってデュアルガンドでダークバレットを放ち、姫姉は逆にミルリルゴーレムの股を潜り抜けて背後に立ちミスリルゴーレムの足に攻撃を仕掛けた。
俺のはなったダークバレットはミスリルゴーレムの胴体に当たったがあまり効果は無かった。
やはりミスリルなだけあって魔法防御力の高さはそれなりにあるらしい。
姫姉の剣戟は効果があったようで小さいながらもミスリルゴーレムの足に傷を付けていた。
俺も真面な攻撃をするために無限収納からミスリルゴーレムの一部を取り出してスキル形状変化でハンマーの形にしてミスリルゴーレムの足目掛けてフルスイングした。
カーンッ! と甲高い金属同士をぶつけた音が響き、俺の手には痺れるような衝撃が帰って来た。
だがそれでも効果はあった様でミスリルゴーレムの足に少しだが罅が入っていた。
それから俺たちはできる限り同じ場所に攻撃を繰り返し続けてミスリルゴーレムの足を削り続けた。
なんなら途中から姫姉と俺のどっちが先にミスリルゴーレムの足を壊せるか競争をしていた。
それから三十分程俺が殴り、姫姉が斬り続けているとやっとミスリルゴーレムの足が体の重さに耐え切れず罅が一気に広がって壊れた。
うつ伏せに倒れたミスリルゴーレムの頭の近くにゴーレムの核にもなっている魔石が見え、俺たちは全力でそこ目掛けて攻撃を繰り返し魔石を壊す事に成功した。
ミスリルゴーレムの核を破壊すると部屋の奥にあった扉がひとりでに開き、倒されたミスリルゴーレムは光になって消えてそこには粉々になった魔石と金色に輝く宝箱が残されていた。
俺は粉々になった魔石を見て「コレって金になるのかな」と呟くと横から少女が「安くで買い叩かれると思います」と言いにくそうにそう教えてくれた。
やっぱり粉々になった魔石はダメかとガッカリしつつ、今度からは魔石が核の魔物はスティールで倒そうと誓って今度は宝箱に目を向けた。
金色に輝く宝箱は見ただけで良いモノが入っていると思わせてくれる。
俺は鑑定解析を使って一応罠の類が無いか確認をして罠が無いと分かった所で宝箱をゆっくりと開いた。
宝箱の中には綺麗な長方形に形取られた金属の塊が六つピラミッドの様に積み上げられていた。
一応確認のために鑑定をすればミスリルのインゴットと出てそれを二人に伝えると姫姉は苦笑いを浮かべ、少女は笑顔を浮かべていた。
俺と姫姉が苦笑いなのを不思議に思った少女がどうしたのか訪ねてきた。
俺は無限収納からミスリルゴーレムを一体取り出して見せた。
それを見ただけで少女も何かを察したのか愛想笑いを浮かべながら目を逸らした。
俺は宝箱に入っていたミスリルのインゴットを無限収納に仕舞った。




