第215話 王の石像を倒せ
王の石像に攻撃することは一旦諦めて俺たちはそれぞれ兵士と魔法使いの石像を倒す事に集中した。
兵士の石像は言ってしまえば守りに重視を置いた戦法で余り積極的に攻撃を仕掛けては来ず、全体の守りを重視した動きでコッチに隙が出来た時に攻撃を仕掛けて来る程度だった。
俺は防がれる事を承知で攻撃を繰り返し敢えて隙を作って兵士の石像に攻撃させてそれを躱して攻撃を叩き込み、それを続けてなんとか兵士の石像を倒す事に成功した。
同タイミングで姫姉たちも魔法使いの石像を倒したようで石像が倒れる重たい音がボス部屋に響いた。
兵士と魔法使いの石像を倒し最後は王の石像かと武器を構えて王の石像に近づくと王の石像は立ち上がり腕を上に上げた。
その瞬間、王の目の前に魔法陣が二つ浮かび、そこからさっき倒した兵士と魔法使いの石像が現れた。
思わぬ事に驚きつつも俺たちは数歩下がり警戒をした。
魔法陣から現れた兵士と魔法使いの石像はこちらに武器を構えたままその場に止まっていた。
どうやらこちらから攻撃を仕掛けるか近づかない限りは攻撃をしてくることはなさそうだった。
俺と姫姉は一旦ボス部屋の端まで下がり作戦会議をすることにした。
「どうする?」
「どうするも何も倒すしか無いでしょ」
「取り敢えずさっきのヒントから攻略法が無いか考えるしかないか……」
『王は一人』で『兵士は王の為に生きる』、『魔は魔を受け付けない』か。
そのまま考えるならやっぱり魔法使いの石像は魔法を受け付けないから物理で倒せって事だろうし、兵士は王を守る。
そして王は一人って事は王の石像を倒せばクリアって事なんだろうけど兵士と魔法使いの石像がいる間は王には攻撃出来ないように兵士と魔法使いの石像が妨害してくるし、両方を倒しても再度出て来るまで5秒も無かったはず。
そうなると兵士と魔法使いの石像を倒した瞬間、王の石像を一撃で倒す攻撃を当てる必要があってそれを実行するには人数が少ない俺たちでは時間が短過ぎるって事か。
俺は今の考察を姫姉と共有し、姫姉も概ね同じ考えだと返してきた。
それから俺たちはもう一度兵士と魔法使いの石像を倒して再度召喚されるまで何秒猶予があるか調べる為に石像との戦闘を再開した。
今度も俺が兵士の石像を相手し、姫姉たちには魔法使いの石像の相手をして貰った。
一度戦った子供あってかさっきよりも格段に早く倒す事が出来、姫姉たちよりも先に兵士の石像を倒した俺は王に攻撃を仕掛けに行こうとしたがその前魔法使いが俺に魔法を撃ってきてその隙に王の石像が再度兵士の石像を召喚し、俺に攻撃を仕掛けて隙だらけなり姫姉たちに倒された魔法使いの石像も召喚された。
「やっぱり両方同時に倒さないとダメっぽいな」
「そうだね、どっちかだけ倒して王の石像に攻撃しようとしても邪魔されちゃいそうだね」
「となるとやっぱり同時に倒した後、再度召喚されるまでの5秒で倒す必要があるっぽいな」
「だね」
「それじゃあ今度こそ倒すために」
「この娘には王に必殺の一撃を叩き込んで貰いましょう」
姫姉はそう言って少女の頭を撫でた。
急にそう言われた少女は一瞬驚いた表情を見せたが期待されている事に気が付き、やる気に満ちた表情に変わった。
俺と姫姉は武器を構えタイミングを合わせてそれぞれ石像に一瞬で近付き、居合一閃で石像を上下真っ二つに切り倒した。
そして気配を消して王の石像に近付いていた少女が兵士と魔法使いの石像が倒された瞬間に一気に王の石像の懐まで駆け二本の短剣を王の石像の首に左右から突き立てたがそれだけでは膂力が足りず倒すまでには至らずそれを察した少女は更に短剣の柄頭を力任せに殴り付けた。
少女の渾身の力が加わり王の石像に入っていた罅が一気に広がり王の石像の首を両断する事に成功した。
王の石像を倒したお陰か再度兵士と魔法使いの石像が出てくる事も無く、次の階層への扉が現れてやっと勝利を実感した。
「よっし!」
俺はガッツポーズを決めてから少女に「よくやった!」と褒め、それに続いて姫姉も少女の頭を撫でながら「良かったよ」と褒め、それを受けた少女は満更でもない表情で照れていた。
勝利の余韻も程々に俺たちはボスのドロップ品を確認することにした。
兵士と魔法使いの石像を最初に倒した時はいつの間にか石像が消えていたから何もドロップしないかもと思ったがちゃんと魔石と石槍と石の杖が残されていた。
魔石は良いが石槍と石の杖は思ってた以上に重く使い道は無さそうだなと思いつつ無限収納に仕舞った。
この様子だとあんまり期待は出来ないかなと思いつつ王の石像のドロップを確認した。
そこには兵士たちよりも少し大きい魔石と明らかに価値がありますといった見た目の金色に輝き赤い宝石の付いた王冠に王様が持っていた石の王笏があった。
石の王笏も例に漏れず重く持つのにも一苦労だったが魔石と王冠は価値がありそうだと期待し、帰ったら絶対に鑑定解析で調べようと思いながら無限収納に仕舞った。




