第179話 ダンジョン攻略に向けて事前準備
前回のあらすじ
フライシュ料理長と会う
頼んでいたダンジョンで食べる料理の試食をする
飲み物も試飲する
「どれかお気に召した物はありましたか?」
フライシュ料理長は俺たちがドリンクを美味しそうに飲んでいたのが嬉しかったのか笑顔で俺たちにそう尋ねてきた。
どれも甲乙つけがたいが俺の中ではどれにするか決まっているので迷わずフライシュ料理長の質問に答えた。
「全部で」
俺がそう言うとフライシュ料理長は一瞬驚きを隠せずに口を開けて呆けたが直ぐに持ち直し、俺の答えの意味を考え始めてすぐに理解したようだった。
「なるほど、そう言えばユーマ様方はユニークスキルの無限収納持ちとお聞きした事が。それなら容量に問題が無ければ全部持っていけますか。分かりました、ユーマ様のドリンクは全種類を瓶に入れて用意しておきます。それでヒメナ様は如何されますか?」
フライシュ料理長にそう尋ねられた姫姉も俺と同じく全部の味が気に入ったようで「私も全種類でお願いします」と、俺と同じように頼んだ。
「承りました。では明日までに準備しておきますので、明日の朝食後にお渡ししたいと思います」
フライシュ料理長がそう言い俺たちは「ありがとうございます」と返すと「これも仕事の内ですから」と言って張り切った様子で腕まくりをしながら食堂を出て行った。
フライシュ料理長と話が終わった俺たちはメルリアさんの案内で部屋まで戻り、俺と姫姉と少女は明日以降に行うダンジョンアタックに向けて俺の部屋で話し合いをすることになった。
「それで何の情報も無い未見のダンジョンを探索するわけだけど何が必要か全く分からん」
「そうだよね、私と優君が入った事のあるダンジョンってこっちに召喚されて初めて入った探索済みでしかも初心者向けのダンジョンだけだもんね」
「そうなんだよな。なんならあの時は王女様が事前に情報を持ってきたから特に困る事も無くクリアできたんだよな。でも今回はあの時と違って一からだから何をすればいいやら」
明日以降に決行するとは言ったものの何を準備したらいいか分からず俺と姫姉は昔の事を振り返りながらあーでもないこーでもないと悩んでいるとおずおずと何か言いたそうに少女が手を上げた。
俺と姫姉はそれに気が付いて少女に「「どうした(の)?」」と声を掛けると少女は「ある程度なら分かります」と小さい声でそう言った。
「「マジで!?」」
俺と姫姉は声を合わせてそう言い少女に詰め寄った。
「はい、暗殺者として育てられた時に一通り習いました」
「そうか、なら俺たちにも教えてくれるか?」
少女が表情を少しだけ曇らせながらそう言ってきたので俺はすかさず話を進める様に少女に何が必要か質問した。そのおかげか少女の曇った表情から張り切った表情に変わった。
「はい、任せて下さい。まずダンジョンに入る日数を決めその日数よりも数日分多い水分と食料が必要です」
「水と食料は頼んであるな。それで他には?」
「次に必要なのは紙とペン、それと目印にするためのインクです。全く分からない場所では迷子になる可能性があるので紙とペンで大まかでいいので地図を書き、インクを使ってダンジョンの壁に印を付けます。これで迷子になる可能性を大幅に下げれます」
「なるほど普通はそうやってダンジョン攻略をするのか。んっ? でも俺マップのスキル持ってるぞ」
「そうなんですか? なら正確な地図が書けますね! 正確な地図なら売れますよ!」
少女は俺がマップのスキルを使えると知ると今までにないくらい目を輝かせながら力強くそう言ってきた。
俺は少女の迫力に気圧されながら他に必要な物は無いか尋ねた。
「他には回復用のアイテムだったり予備の武器防具だったり、ロープや簡易の目隠しなど普通の冒険でも必要な物です。後はもの凄く高価な物なんですけど帰還石と言うダンジョン内で使える転移石です。これは国宝クラスのものなので手に入らないと思いますけど一つあるだけで範囲内の者たちを一斉にダンジョンの外まで転移させてくれるアイテムです。未見のダンジョンでは何が起こるか分からないのであった方が良いです」
少女はそう言った後、「たぶん手に入りませんけど」と付け加えた。
確かにそんな便利な物を持っているであろう王女様が手放すとは思えない。それに街でも売っているとは思えない。もし売っているとすれば偽物だろう。こればっかりは諦めるしかなさそうだな。
「そうか、それで他に必要な物ってあるか?」
「えっと私が教わったのはこれ位です」
どうやら最低限必要なのはこれくらいらしい。後は今から買い物に行ってそこで必要だと思ったらそこで買えばいいだろう。
「そっか、教えてくれてありがとな。よしそれじゃ他に必要な物でも買いに行くか」
俺は少女にお礼を言って足りない物を買いに買い物に出かけようと姫姉と少女に提案した。
「ええそうね、ポーションとかはまだ余ってるけど買い足しておくに越したことは無いしね」
姫姉も買い物には賛成らしくそう言うやいなや少女を連れて一旦部屋に戻り、外出用の服に着替えてきた。