第176話 レアアイテムを溜めこむタイプ
前回のあらすじ
グラシア公爵と共に王女様の所に行く
グラシア公爵救出劇の顛末を聞く
グラシア公爵の宣言
「グラシア公爵の覚悟は分かりました。もしもの場合にはグラシア公爵の意思を尊重したいと思います。ウォレン老師もそのように」
王女様はグラシア公爵のもしもの場合には切り捨てて欲しいという願いに理解を示し、ウォレンさんにもグラシア公爵の覚悟を無駄にしない様にそう言った。
王女様にそう言われたウォレンさんは「承知した、もしもの場合は儂が手を下す」と重々しい口調で答えた。
王女様とウォレンさんの二人から色よい返答を貰えたグラシア公爵は恭しく頭を下げて「ありがとうございます」と謝意の言葉を述べた。
グラシア公爵の覚悟の宣言とその扱いについて一段落したところで話題を変えるために王女様は咳ばらいをしてから口を開いた。
「ではこれからの話をしましょう。まず喫緊の問題は逃げ出した者たちの確保ですね。それと並行して王城前広場に現れた扉の調査も行わないといけませんが逃げ出した者たちの追跡に人員を割くとなると調査の人手を減らすことも視野に入れなければいけませんね」
王女様はそう言ってから少しだけ困ったように頭に手を当ててため息を吐いた後、一拍置いて再び口を開いた。
「グラシア公爵には逃げ出した者たちの捜査に加わって頂きます。彼らが普段使っていた場所や隠れていそうな場所について覚えている限りで良いので思い出して報告してください」
王女様がグラシア公爵にそう告げたところで俺はそう言えばグラシア公爵派閥の者にマークを付けたはずとマップを開きマークがあるかどうか探した。
マークは呆気なく見つかったが場所が王城だった。一応スキル透視盗撮とリンクして詳しく視たがやはりと言うか、マークを付けた公爵派閥の貴族は牢屋に入っていた。
こんな事なら全員にマークを付けておけば良かったなと思っていると王女様が俺と姫姉に話しかけて来た。
「ユーマ様とヒメナ様は王城前広場に出現した扉の向こうにあるダンジョンに入るつもりだと仰っていましたがダンジョンにはいつから入られますか?」
王女様にそう言われ俺はいつから入ろうかまだ決めてなかったなと思い姫姉にいつにするか相談するために視線を向けた。
姫姉は俺の視線に気が付いてこっちを向いたので俺は念話で(いつから行く?)と尋ねると姫姉から(いつでもいいよ)と返って来たので日程は俺が決めることになった。
「では明日、扉の中がどうなっているか入ってみます」
俺は今日は無理でも早めに中がどうなっているか調べたかったのでそう言うと王女様が少しだけ驚いていたがウォレンさんとグラシア公爵は何故か納得したように頷いていた。
ウォレンさんとグラシア公爵とは話が良そうだなと勝手に思っていると王女様が「分かりました。警備の者にはユーマ様たちが来たら通すように伝えておきます」と言ってくれた。
それから王女様が「ダンジョンに入る際に必要な物は出来る限り支援するので申請して下さい」と言われ俺は速攻で「薬と美味い料理で」と答えた。
「分かりました、では初級、中級、上級のポーションとマナポーションを各10個ずつ用意させます。料理に関しましてはどのような物が良いですか?」
王女様は思ったよりも簡単にポーションを用意してくれると確約してくれたことにありがたく思いつつ料理に関しては姫姉とも相談するべきかなと再び姫姉に視線を向けた。
俺の意図を直ぐに理解してか姫姉が口を開いた。
「無限収納があるので出来たての料理をお願いします」
「では料理長に手軽に食べれて美味しい料理を用意するように伝えておきます」
姫姉の発言で王女様は「あぁ」と納得したように頷い後、俺たちの要望を完璧に理解したのかそう言ってくれた。
これでダンジョンで最低限必要な物は揃ったかなと思っているとウォレンさんが話しかけて来た。
「ダンジョンでは何があるか分からんからコレも持っていけ」
ウォレンさんはそう言いながら何かをテーブルの上に置いた。
「「それは!?」」
テーブルの上に置かれたポーションを見てグラシア公爵と王女様が目を開いて驚いていたので俺は鑑定解析を発動して正体を確認して俺も王女様たちと同じように驚き、鑑定を使ったのか姫姉も驚いていた。
エリクサー
飲んでも掛けても良しの万能薬。
各種の状態異状、部位欠損など、瀕死の状態からでも完全な状態まで治る優れ物。
錬金術師のジョブに就いていても長年の経験が無いと作れない錬金術の集大成。
作成方法
世界樹から採れる葉を細かく刻み魔力をゆっくりと込めながら上級ポーションと共に煮詰めると作れる。
「良いんですか?」
俺はテーブルの上に置かれた物の価値をはっきりと理解してウォレンさんに本当に貰っても良いのか尋ねた。
「良い、まだ何本か持っておるからな」
したり顔でウォレンさんはそう言うとさらに4本のエリクサーを取り出してテーブルに置き王女様とグラシア公爵は目を見開きながらポカーンと口を開けてただただ驚き、俺は「なんでレアアイテムこんなに持ってるんだよ」と心の中で突っ込んだ。