第174話 寝起きの胃に優しい料理が旨い
前回のあらすじ
グラシア公爵の従者がやって来た
話を聞こうと顔を合わせると俺にだけ敵対的だった
最終的に王女様を襲おうとしたので捕らえられた
「ふあぁぁぁ」
グラシア公爵の従者と名乗った男のことがあり結局朝まで起きていた俺だったが流石に眠気が強くなってきてつい欠伸を漏らした。
それを目敏く見ていたのか王女様が声を掛けてきた。
「ユーマ様、お疲れでしたら一度眠られてはどうですか?」
王女様も俺と同じく長い時間起きている筈だが平気そうな顔でそう言ってきた。
確かにこのまま寝不足の頭で動いてミスをしても問題だしお言葉に甘えて寝るか、と思い俺は再度漏れそうになった欠伸を噛み殺して口を開いた。
「そうですね一度寝に行きます」
「ぜひそうして下さい」
王女様にそう言葉を貰い俺はメイドさんの案内で自分の部屋に戻った。
部屋に辿り着いてからもしもの事を考えて姫姉に一言言っておこうと姫姉の部屋の扉をノックして声を掛けた。
どうやらもう起きていたようで直ぐに扉を開いて姫姉が顔を出した。
「どうしたのゆう君?」
「いや夜中に起きてから今まで色々あって今から寝るから俺が寝ている間は姫姉に警戒をして貰おうと思って」
俺がそう言うと姫姉は納得したような表情を見せて「任せて」と心強い返事を貰えた。
俺は安堵し部屋に戻ってベッドに倒れ込み目を瞑ると眠気が一気に来て俺はその眠気に身を任せて眠りについた。
泥の様に眠っていた俺だったが騒々しい音によって眠りの邪魔をされ目を覚ました。
寝惚け眼を擦りながら体を起こして一体何が起こっているのか調べるためにスキル透視盗撮を使って王城内を視渡した。
どうやら一か所に人が集まっているようでそこを詳しく視てみるとグラシア公爵派閥に捕まっている筈のグラシア公爵が何故かそこに居た。
一瞬自分の目を疑い目を擦ってからもう一度視てみたがやはりそこにグラシア公爵が疲れた表情をしてはいるものの怪我の無い状態で居た。
いつの間に救出が行われたのか不思議に思い今がどの位の時間なのか外を見たが太陽がまだ頂上付近に会ったので昼頃だと分かった。
経った数時間で救出が成功したのかと感心しながら俺は着替えてから部屋を出ると何処からかメイドさんが現れ声を掛けてきた。
「おはようございます、ユーマ様。どちらへ向かわれますか?」
「グラシア公爵のところまで」
メイドさんの質問に俺は短くそう答えるとメイドさんは「ご案内します」と言って歩き出し、俺はメイドさんの後に付いて行った。
メイドさんに案内された俺は食堂に入ると丁度グラシア公爵が飲み物を飲んでいる所で俺と目が合ったグラシア公爵は静かにカップを置いた。そしてグラシア公爵の前には他にも食べ終えたのであろう食器が並べられていた。
「元気そうですね」
食後のティータイムを嗜んでいたグラシア公爵に俺は嫌味にならない様に軽い口調で声を掛けた。
「ああ、ヒメナ嬢のおかげで何とか無事だ」
俺の気遣いを分かってか嫌な顔をせず苦笑いを浮かべそう答えた。
どうやら捕まっていたグラシア公爵を助けに行ったのは姫姉だったらしい。
確かに姫姉の透明化に影移動なら誰にもバレずに侵入することは朝飯前だろう。最悪戦闘になっても創造と付与強化があれば人質を強化してしまえば人質が人質にならないしそもそも姫姉が普通に強いし負ける事を想像する方が難しい。
俺がそんな事を考えているとメイドさんが料理を乗せたカートを押して俺の傍で止まり、カートの上に乗った料理を俺の前に配膳していった。
「ユーマ様は朝食も昼食もお食べになっていないと伺っておりましたので御用意いたしました」
目の前に広げられた料理を見て腹の虫が早く食べさせろと言わんばかりに鳴った。
俺は少しだけ恥かしくなりながらメイドさんに「ありがとうございます」と言ってから頂きますをして料理を食べ始めた。
朝食兼昼食として出された料理は温野菜のバーニャカウダにコンソメとオニオンの香りが沸き立つオニオンスープにメインの野菜を鶏肉で包んで蒸した物、そしていつもの白パン。
寝起きの胃にも優しそうな温かくてあっさりした料理に料理人の気遣いが感じられるラインナップだった。
俺はまず良い香りとまだ温かさを主張する湯気が立ち昇るオニオンスープを一口、口に運んだ。
一口飲んだだけで分かるコンソメの濃厚な旨味にオニオンの甘みが溶け出し、いつもながら最高の味を引き出している。
オニオンスープでホッと一息ついた俺は次に温野菜のブロッコリーを添えられているバーニャカウダソースに付けて食べた。
確りと茹でられていて噛み切りやすくなったブロッコリーと食欲を引き立たせるニンニクの香りがするバーニャカウダソースがちゃんとマッチしていてこれならいくらでも食べられそうなくらい美味い。
最後は人参とインゲン豆が鶏肉で巻かれて蒸されて輪切りにされソースが掛けられた料理を一つ食べた。
鶏肉や野菜自体はあっさりとしていてそこまで美味しいと思わない程度だったが掛けられている酸味の効いたソースが抜群でこれもまたいくらでも食べられそうなくらいに美味しかった。
それから俺は出された料理に舌鼓を打ちながら淡々と食べ続け、気が付けば料理は無くなり腹も満腹になりご馳走様をして食事を終えた。
朝食兼昼食の献立
温野菜のバーニャカウダ
温野菜はブロッコリーと人参とヤングコーン
バーニャカウダソースはアンチョビにニンニクと粉チーズとオリーブオイルが入った物
オニオンスープ
食事回で前も出た物と同じ
ガランティーヌ~バルサミコソースを添えて~
鶏胸肉の上に鶏挽肉と人参とインゲン豆乗せて巻き蒸した物
ソースはバルサミコ酢を肉汁と一緒に煮詰めた物
白パン
柔らかくて美味しいパン