第172話 さらに動く公爵派閥
前回のあらすじ
昼間から公爵派閥が動き出す
真夜中にも賊が襲撃を仕掛けてくる
賊の後ろから奇襲を仕掛けて全員倒す
「……という訳でアリシアさんと一緒に襲撃犯を倒しました」
俺はアリシアさんの説明の後、一人で戦っていたアリシアさんを援護するために襲撃犯の後ろから奇襲を仕掛け相手が動揺している隙に全員を倒したと自分の行動を王女様に報告した。
「お話しいただきありがとうございます。お二人共お疲れさまでした、アリシア様には引き続き牢獄に不審な者が現れないか監視をお願いします。ユーマ様は就寝中のところ賊の無力化に協力頂きありがとうございます。後の事はこちらお任せ頂き部屋に戻ってお休みください。騎士数名は城の兵士と共に襲撃犯とは別の賊が入り込んでいないかの確認をお願いします」
王女様が連れ立ってきた騎士にそう命じたところで何処からか爆発音が響いた。
爆発音が聞こえてすぐ俺は音のした方向をスキル透視盗撮を使って音の発生源を探り、その場所を見つけ舌打ちをし現状を報告するために口を開いた。
「ッチ! 王女様、爆発は向こう側だ!」
俺が方向を指さしそう言うと王女様は一瞬硬直し、ポカンと口を開いて驚きを隠せていなかったが直ぐに気を取り直し騎士に命令を出した。
「ここに居る者の半分はここに残り牢獄の警戒を! 残りの者たちは私と共に爆発の現場に向かいます!」
王女様はそう言うや否や直ぐに爆発の現場に走り出し、一拍遅れて騎士たちも王女様の後を追い走り出した。
王女様が思ったよりも早くに動き出したことに今までの王女様よりも成長してるなと俺は少しだけ感心しつつ、賊が爆発物を持っていたことに気が付けなかった事を反省しながら自分も爆発の現場に向けて走り出した。
爆発の現場に辿り着くとそこは原形を留めていない賊と爆発の衝撃で傷だらけだったり瓦礫に埋もれた状態の騎士たちが呻き声を上げている惨状だった。
先に来ていた王女様と騎士たちはまだ息がある瓦礫の下敷きになった騎士たちを助けようと手前の瓦礫を除けようとしている所だった。
「ここは俺がやります」
俺は瓦礫を撤去しようとしている騎士たちに割り込んでそう言い放ち、何かを言ってくる騎士たちを無視してスキル透視盗撮でどこの瓦礫を撤去するべきか判断してからその瓦礫に触れて無限収納に仕舞うを繰り返して全ての瓦礫を撤去した。
瓦礫の撤去が終わったところで周りに居た騎士たちが俺に感謝の言葉を掛けてから仲間たちの治療を開始した。
「ユーマ様、騎士たちの救助に尽力して頂き有難う御座います。それで賊なのですがどうやら体内に爆発を起こす魔道具を仕込んでいたようです」
騎士たちを助けられたことにはホッとした様子でそう言った王女様だったが賊たちの事を話す時には悔しさが表情に滲み出ていた。
体内か、確かに戦闘中俺は相手の武器や服などを奪い無力化するように動いていたから体内までは透視で視ていなかった。倒した時に口の中に毒物が無いかはチェックしたがまさか体内に爆弾まで仕込んで自爆テロまがいの事をするなんて思いもよらなかった。
「自爆か、誰かが起爆したか。どっちにしろ振り出しですね」
「そうですね、せっかくユーマ様とアリシア様に殺さず捕らえて頂いたのに……申し訳ありません」
王女様は悔しそうに声を震わせながら謝罪の言葉を言った。
「いえ、毒物のチェックだけで済ませた俺も警戒が足りてませんでした」
「いいえユーマ様は悪くありません。そもそも身体検査はこちらの仕事です。今回の事を教訓にし今後同じような事が起こらない様に徹底します」
俺と王女様が互いに反省をしていると怪我人の救護をしていた騎士が一人こっちに向かって来て王女様に話しかけて来た。
「王女様、報告します。賊の連行を行っていた騎士二名が死亡、他は全身に火傷、骨折、裂傷の重症でしたので治療室へ搬送しました」
「分かりました。新たに兵士を呼び賊の死体から何か情報が得られないか調べて下さい。他の者たちは」
王女様が次の言葉を紡ごうとした時、異常を知らせる為の魔道具がけたたましく鳴り響いた。
「これはグラシア公爵から! 向こうでも何かあったようです! ユーマ様、グラシア公爵の様子を見て頂けますか?」
「もうやってます!」
俺は王女様の問いにそう答えながらマーキングでマークしたグラシア公爵の周囲をスキル透視盗撮で視ると今まさにグラシア公爵が派閥の者たちに取り押さえられている瞬間だった。
「グラシア公爵が派閥の者たちに捕まりました」
「そんな! グラシア公爵は無事ですか?!」
王女様にそう言われ俺は直ぐに公爵を鑑定と解析で視て怪我はない事を確認した。
「怪我は無いようですが複数人から剣や杖を向けられています」
「そうですか。流石に派閥の者たちもグラシア公爵を害することは無いと思いますがもしもの事があるかもしれません。ユーマ様は引き続きグラシア公爵の事を視ていて貰えますか?」
「良いですよ」
「ではお願いします。その間に私の方でもグラシア公爵を救出する手筈を「急報です!」は?!」
悪い事は連鎖するのか遠くから騎士が二人そう叫びながら駆け寄って来た。