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第168話 ウィンダムさんは貴族らしくない

前回のあらすじ

脱獄計画を阻止する作戦会議をする

途中で昼食を挟む

王城の優一かもしれないのは食事の美味しさだと思う

「グラシア公爵、ユーマ様、お待ちしておりました。まずはこちらにお掛けください」

 メイドの案内で移動してきた俺とグラシア公爵が部屋に入ると王女様がそう声をかけてきて、俺とグラシア公爵は王女様に促されるままにメイドに案内された席に座った。


「それでは昼食前の話の続きを始めたいと思います。まず私たちがするべき事ですが王城の牢屋に囚われている者たちの脱獄を補助する者の捕縛、そして脱獄の阻止。次に脱獄の計画を立てているグラシア公爵の派閥の者たちの捕縛。こちらは証拠をユーマ様から提供して頂いておりますので問題ありません。ですが脱獄の実行犯の特定がまだ出来ておりませんので警戒をする必要があります。グラシア公爵は何か心当たりはありますか?」

「すみません王女様。お恥ずかしながら派閥の者の交友関係までは把握しておらず」

 王女様の問いにグラシア公爵は頭を下げた後、不甲斐ないとばかりに顔を俯けたままそう返答した。


「いえ、グラシア公爵の派閥は大人数です。それを全て把握するのは困難な事。私ですら把握出来ずに他の者に迷惑を掛けています。ですので構いません。ですが何か思い出せばすぐに知らせてください。さて次にユーマ様にお聞きしますが誰かにお心当たりはありますか?」

 王女様はグラシア公爵へのフォローの言葉を掛けた後、俺にも同じように質問をしてきたが俺は出せる情報はもう出し切っているので「無いです」とだけ答えた。

 王女様もそれが分かっていたのか特に表情も変えずに「そうですよね」と流したので俺はある提案をしてみることにした。


「でも犯人を炙り出す方法なら有りますけど」

「えっ?! それは一体何ですか?!」

 俺がそう言うと王女様は驚きの表情を見せ前のめりになりながら問い質してきた。

「簡単ですよ。牢獄の警備を今まで通りにして犯人が来たら信用のできるウォレンさんやバカ貴族たちを捕まえるのに協力してくれた者たちに取り押さえれば良いんですよ」

「はぁ、ユーマ様。それができれば苦労はしません。ウォレン老師は声を掛ければ直ぐにでも動けますが他の貴族の方たちは他の仕事をしている者が殆どです」

  俺がそう答えると王女様は一気に落胆した表情になり椅子に座り直してから落ち着いた様子で諭すように俺にそう言ってきた。

 俺は王女様のバカを諭すような言い方に少しだけイラッとしたがそこは一旦置いておいてそこもしっかり考えている事を伝えるために口を開いた。


「ええ分かってますよ。だから俺が言ってるのはスライムの館の支配人とか本来なら此処に来ていないはずのウィンダムさんたちの事ですよ。特にウィンダムさんとアリシアさんなら王城にずっと居るので多少の警戒はされているでしょうが新たに人を入れるよりかは比較的警戒され難いはずです」

「確かにウィンダム様方はこちらに留まっており警戒はされ難いかも知れません。ですが戦力とするには少し手が足りないのでは?」

 俺の補足を聞いて王女様はウィンダムさんの事をよく理解していないのかウィンダムさんたちの力量を疑ってきた。

 俺からすれば初めて会った時の威圧だったり護衛や衛兵を平然と撒いたりする実力から見て力量不足とは到底思えないが王女様にその事をどう伝えるかと悩んでいるとグラシア公爵が話に割り込んできた。


「宜しいですか王女様」

「何ですかグラシア公爵?」

「ユーマ殿の言うウィンダム卿を味方にするのに私は賛成したいと思います」

 グラシア公爵が何を言うのかと思ったら俺の意見に賛成の意を示してきた。

「?! んっん、グラシア公爵がそこまで言うからには何か理由があるのですよね?」

 流石に来れには王女様も吃驚した様で目を見開いてグラシア公爵を見ながらその真意を問い質していた。


「はい、ウィンダム卿は今は一線を退いているとはいえ元辺境伯。実戦の経験ならばそこらの一般兵士よりも豊富です。それとあまり褒められた事では無いのですが今でも護衛を撒いて冒険者紛いの事をしていると専らの噂でして……。腕ならば問題無いと思います」

 思ったよりもウィンダムさんのやらかしは有名だったようでグラシア公爵もウィンダムさんの事を知っていたから俺の意見に賛成したというみたいだった。

 だが王女様はそれでもグラシア公爵から語られたウィンダムさんの評価を信じ切れなかったのか流石にそれは盛り過ぎではと感じたのか疑う様な目でグラシア公爵を見て「それは事実なのですか?」問い返していた。


 まぁウィンダムさんが普通の貴族と違うのは貴族をよく知らない俺でも思っていたので疑うのは仕方ないと思いながらグラシア公爵がなんと返すのか耳を傾けた。

「いえ、事実です。我らの世代の貴族たちの中では有名な話です。少し前の事ですが我が家までお一人で冒険者の様な格好で来た事も有ります。因みにその時のお土産として倒したてのレッドバッファローを渡されました」

「えぇぇ」

 グラシア公爵のウィンダムさんのとんでもない話に王女様は困惑した様子でそう声を漏らして天を仰いだ。

 そして俺も何やってんだあの人と呆れ半分、面白半分で笑いを堪えていた。




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