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第162話 悪だくみは寂れた個室で

前回のあらすじ

トップ会談が終わり派閥の貴族たちに内容を伝える

内容をした者たちが協力を頼みこんでくる

公爵の派閥の貴族だけ協力を頼みこんでこなかった


 俺が頭を下げてきた貴族たちに協力をすると伝えると頭を下げてきた貴族たちはさらに感謝を伝えるためにまた頭を下げ、俺がそれを止めるという状態が繰り返され収拾がつかなくなってきたところで鶴の一声と言わんばかりにウォレンさんが口を開いた。

「皆の者静まれ! 感謝を伝えるのは構わんがそれで迷惑を掛けるのは本末転倒。今日のところはこれまでにして会議を終える。各々速やかに退室せよ」

 ウォレンさんがそう宣言して王女様と共に会議室を出て行きやっと俺に頭を下げてきていた貴族たちももう一度俺に向かって頭を下げてから各々会議室を後にして行った。


 会議室から続々と出て行く貴族を眺めながら俺の事を忌々しいと言わんばかりに睨んでいたグラシア公爵の派閥の貴族たちに目を向けると何やらコソコソと言葉を交わしつつ人の波に流されるように会議室を出て行くところだった。

 俺はそんな彼らに不信感を持ち眺めているとメイドが話しかけてきた。

「ユーマ様、王女様から応接室までご案内するようにと言い付かっております。ご同行願えますか?」

 どうやら王女様に呼ばれているらしい。

 俺はメイドのその言葉に「分かりました」と答えメイドに連れられて会議室を出て応接室まで移動した。


 応接室の扉を開けると先に来ていた王女様とウォレンさんが座って待っており、俺が入ると直ぐにウォレンさんが王女様の対面に座る様に促してきたので俺はそれに従って王女様の対面に座った。

「ユーマ様本日は情報の提供、並びに今後の力添えの件、誠にありがとうございます」

 俺が座るなり王女様はそう俺に感謝の言葉を掛け座ったままとはいえ深々と頭を下げてきた。


「儂からもユーマ殿、感謝する」

 俺がどう返そうか言い淀んでいるとウォレンさんもそう言って頭を下げて来て、応接室内に偶々残っていた俺を此処まで案内してきたメイドは王女様とウォレンさんのその行動に驚いたのか小さく「えっ」と声を漏らしたのが俺の耳まで届いた。

 

「お二人の気持ちは分かりましたので頭を上げて下さい」

 俺はメイドにいらぬ誤解を与えたんじゃないかと少しだけ心配になりながら二人に頭を上げる様に言い、俺の発言でやっと二人は頭を上げ王女様が「ありがとございます、ユーマ様。それで本日は今後特に予定はありませんが夕食の時間までどうされますか?」と尋ねてきたので俺は「部屋で休みます」と返した。


 それから俺は再度王女様とウォレンさんにお礼を言われてから応接室を出て、メイドに連れられて自分の部屋まで戻った。






 所変わって寂れた風体の閑古鳥が鳴いていそうなバーにて。

 目深にフードを被った男がバーの扉をノックした。

 バーの中から店員らしき男が出て来てその男にフードを被った男が何かを伝えると店員は店の外を見回してからフードを被った男を店の中に通し、個室になっている部屋の前で立ち止まるとフードを被った男が扉をノックした。

 中から「星は?」と問い掛けられてフードを被った男は直ぐに「太陽に」と答えると扉が中から開かれ、フードを被った男は部屋の中に入って行った。


 窓も無く薄暗い部屋には先客としてグレー、ブラック、ブラウン、ネイビー色のマスカレードマスクをつけた四人の男が座って待っていた。

「おい誰にもつけられてないだろうな」

 フードを被った男に部屋で待っていたグレーのマスカレードマスクをつけた男がそう尋ねた。

「大丈夫です。後をつけてくる者はいなかったし店の者にも確認させました」

 尋ねられた男はグリーンのマスカレードマスクをつけてからフードを脱ぎそう答えた。

 グレーのマスカレードマスクをつけた男はグリーンのマスカレードマスクをつけた男その言葉に満足したのか「そうか、それなら大丈夫だろう。とりあえず座れグリーン」と言ってグリーンを空いている椅子に座らせた。


「それで何故我々を此処に呼び出した? グレー」

 ブラックのマスカレードマスクをつけた男がグレーにそう尋ねた。

「それは皆も分かっているだろう、あの異世界人の事だ」

 グレーのその返答にこの場にいた全員が不機嫌そうに唸り、それを見たグレーは続けて言葉を放った。

「皆に集まって貰ったのは言うまでも無くあの忌々しい異世界人を排除し、今実権を握っている王女とあのジジイから公爵様へ王権を移譲する為だ」

「確かに王権は公爵様にこそ相応しいが忌々しい事に当の公爵様がアレではどうすることも出来んぞ」

「それは分かっている。あの忌々しい異世界人風情と役立たず王女の事だ、奴等が結託して公爵様を騙しているに違いない。我々が公爵様の目を覚まさせて今度こそ王権を公爵様に渡すべきなのだ」

 グレーとブラックがそう言い合っているとそこにネイビーが口を挟んできた。


「お二人とも私に良い考えがあります」

「ほう、それは一体何だネイビー」

 話に割って入って来たネイビーにグレーとブラックは言い合いを一旦やめ、ブラックがネイビーにどんな策か問い掛けた。

「それはですねまず今現在王城の牢に囚われているバカ貴族たちの牢に細工をして脱獄させます。脱獄したバカ貴族を我々が捕まえて王女に責任を追及し、まずは王女とそれに従っている貴族と騎士たちの発言力を低下させます。さらに王女に従っている貴族たちに仲間割れをさせる様に噂を流せば後は勝手に自滅してくれます。さらに異世界人に罪があると噂を各地で流せば国民全体が挙ってあの異世界人を勝手に排除してくれるはずですよ」


 ネイビーがそこまで言うと黙って聞いていたブラックとグレーとグリーンは良い策だと言わんばかりに頷いたが一人ブラウンが口を開いた。

「それでもしその策が失敗すればどうするつもりだ?」

「それも抜かりはございません。そもそも王城の牢の細工にはまだ捕まっていないバカ貴族の仲間の騎士に情報を流して細工させます。その騎士も我々が脱獄したバカ貴族を捕まえるときに殉職して貰います。もし脱獄前に気付かれた時は先にその騎士の不正を見て捕まえようとしたが抵抗されて死んでしまったことにします。そして噂を流す者たちは我々にはたどり着けない様に裏の者たちを使いますし、その者たちにも噂が広まったところで人知れず消えて貰います」

 ネイビーはブラウンの質問に顔色一つ変えずに当たり前のことのように証拠になる者たちを消すと発言し、それを聞いた他の者たちも「そこまで考えているとは流石だ」と手放してネイビーを褒め称えた。




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