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第161話 貴族たち全員に情報が共有された

前回のあらすじ

司祭の質問で俺が会った神の顔が思い出せないことに気が付いた

公爵たちに残りの動画を全部見せた

司祭が狂信的な信者だと分かった

「そ、そうか。司祭の言いたい事は分かった。他に何かあるか?」

 ウォレンさんは司祭の狂信的な発言に少し引き気味にそう言ってから司祭に他に何か質問があるか問い、そう問われた司祭は「いえもうありません」とやり切った表情でそう言い司祭は目を閉じた。


「そ、そうかではこれにて情報共有を終える。この場で聞き得た情報は正しく自身の派閥の者たちに伝えよ」

 ウォレンさんがそう宣言するとともに会議室の扉が開かれ、しばらくして会議室から出されていた貴族たちが戻ってきた。

 そして戻ったきた貴族たちは派閥ごとに集まり、俺の動画を見た派閥の貴族のトップから知り得た情報の内容を教えられた。

 派閥のトップから俺たちの世界で神が降臨し、その神によってこの世界の人間が原因で扉が現れた事を教えられて知っている事、本来なら勇者召喚の多様で二つの世界が消滅していた事を神が認めた事、そしてそれを神が尻拭しりぬぐいをした事を知らされほとんどの貴族たちは今更事の重大さに気付いたのか顔を青褪あおざめさせていた。


 それから派閥の者たちに情報を行き渡らせ終えたのか全ての貴族が自分たちの席に座ってうつむいて黙り込み、その様子を見てウォレンさんが口を開いた。

「皆に情報が行き渡ったところだろう。それではこれからのことについて会議を始めたいと思う。何か意見がある者はいるか?」

 ウォレンさんのその問いかけに俯いて黙り込んでいた貴族たちは近くの者たちとぽつぽつと話し合いをし始め、少ししてからチラホラと手を上げる者が出てきた。

 ウォレンさんは手を上げた者たちを一通り見た後、その中から一人を選んで立たせた。


「選んで頂き有難う御座います。私の意見ですが、やはりここはそちらに居る勇者様に間を取り持って貰い交渉をするべきだと思います。勿論こちらの非を認めて誠心誠意謝罪をするべきだと思います」

 ウォレンさんに選ばれただけの事はあってこの貴族は俺からすれば比較的まともな意見を述べてきた。

 もしこの場にバカ貴族たちがいればこうはならなかっただろうがそのバカ貴族たちは前回の会議で捕まっている。


 そのおかげか意見を聞いていた他の貴族たちも「やはりそれしかないか」などと口々に言い、ほとんどの貴族はこの意見に肯定的だった。

 それから他の挙手をしていた貴族たちも似たような意見を出してきて、向こうの世界から来た俺に頼ってどうにか交渉に漕ぎつけるという方向で固まった。


 そして会議の方向性が定まったところでウォレンさんが他の貴族たちの期待の眼差しと共に俺に話しかけてきた。

「ユーマ殿、我々は貴殿の世界の者たちとの交渉をしたいと思っているのでどうか力を貸しては頂けないか?」

 ウォレンさんはそう言った後、誠意を伝えるためか立ち上がり頭を下げてきた。

 そしてそれに続くように王女様も立ち上がり「どうかお力を貸してください」と頭を下げてきた。

 一国の王女様が頭を下げたことにこの場に居る貴族たちが驚きの声を漏らし、会議室内に言い知れぬ空気が漂う中、その空気を引き裂くが如くローガン侯爵が立ち上がった。


「ユーマ殿、厚顔無恥こうがんむちなのは承知で私からも頼む、どうか力を貸して頂きたい」

 ローガン侯爵はそう言ったあと誠意を示す為か頭を下げてきた。

 そしてローガン侯爵の言動にローガン侯爵の派閥の貴族たちも感化されたのか次々に立ち上がり、俺に向かって力を貸して欲しいと言い頭を下げてきた。


 ローガン侯爵の派閥の者たちが全員頭を下げたところで今度は王女様を排斥しようと企んでいた派閥のトップであるグラシア公爵が立ち上がり口を開いた。

「ユーマ殿私からも頼みたい。これまで勇者召喚をしてきた我々に罪があり、貴殿たちにも迷惑を掛けた我々は恨まれても仕方がないと理解はしている。虫のいい事を言っているのを承知している。でもどうか頼む。どうか、どうか我々に力を貸して下さい」

 グラシア公爵はそう言って俺の近くまで来たかと思うとその場で土下座をして自身の誠意を示し周りの者たちを驚かせ、慌てて駆け付けてきたグラシア公爵の派閥の貴族たちが止めるのも無視して土下座をし続けた。


 流石にそこまでされて無下にすることは出来ず、ただグラシア公爵の後に続かと思ったグラシア公爵の派閥の貴族たちが一向にグラシア公爵に続かないので俺はグラシア公爵の派閥の貴族は見限って頭を下げてきたローガン侯爵とその派閥の貴族たちとグラシア公爵に向き直り、立ち上がって口を開いた。

「ウォレンさん、ローガン侯爵とローガン侯爵の派閥の皆様、そしてグラシア公爵の誠意は受け取りました。俺も出来る限りの事はしますので頭を上げて下さい」

 俺がそう声をかけると今まで頭を下げた姿勢で緊張しきっていた王女様とローガン侯爵の派閥の貴族たちは皆一様にホッとした様子で頭を上げ、その顔からは喜びの表情が零れていた。

 そしてウォレンさんとローガン侯爵とグラシア公爵は表情には出さないもののその身から漂う雰囲気から緊張が薄れているのが見て取れた。


 そんな空気の中この場で唯一頭を下げず、それどころかグラシア公爵の土下座を止めさせようとしていたグラシア公爵の派閥の貴族たちだけが居心地の悪そうな顔で俺の事をうらめしそうににらんでいるのを俺は見逃さなかった。

 

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