第16話 親友登場その名は……
前回のあらすじ
ゴブリンキングをやっつけた
馬車に揺られること一時間、俺たちは離れに帰って来ていた。
「ふぃ~疲れたー、流石に初めての戦闘でゴブリンキングはキツイわ~」
誰かが意図的にやってるのかと勘繰りたくなるぐらいに絶妙なタイミングで現れやがるし、逃げようにも囲まれてしかも人質まで用意してやがるし、出来すぎだろ。
「はぁ~、早くお風呂に入りたいよ。体中汗だくだし」
「そう言われると思って湯浴みの準備は出来ております。お入りください」
さすがは出来るメイドのメルさん。俺たちの事を気遣ってお風呂の準備をしているとは、御見それしました。
「じゃあお言葉に甘えて入らせてもらいます」
「俺も」
俺と姫姉は二人して浴場に向かった。
「じゃあ姫姉また後で」
「優君はしっかり洗った方が良いよ。少し返り血浴びてるし」
「あっ、ホントだ気付かなかったわ。教えてくれてありがと」
こうして俺は男湯に入って行った。
数十分後。
「ふぁぁ、さっぱりしたぁ。さてそろそろ飯の時間だし食堂にでも行くかな」
食堂にはまだらにクラスメイトがいた。
「よう、優。お前いきなり外に出たらしいな」
話しかけてきたのは親友の慎夜だった。
「ああ慎夜か、大変だったよ。いきなりゴブリンキングたちに取り囲まれたからな」
「俺がいない間にそんな事があったのか」
訳があって今は別行動をとっているが、普段ならよく俺と姫姉と慎夜と慎夜の片恋中で姫姉の親友の橘美耶の四人で行動していることが多い。
「そういうそっちはどうだったんだ?」
「それなりに情報は手に入ったよ。特に重要なのは他の国でも勇者召喚が行われたらしいという噂が流れてきている」
慎夜は情報収集を得意としており、持ち前の話術と影を薄くしながら周りに溶け込む事により色んな人から情報を集めてくる。
「そうか、他の国でも召喚しているのか。今噂になっているってことは俺たちよりも早くに召喚されたっぽいな」
「僕もそう思う。この世界での情報伝達は魔法具か鳥か人づてしかないらしいから」
そうなると召喚された勇者の数はそれなりになるはずだから、もし手を組めれば早くに帰る方法が見つかるかもしれないな。
「取りあえず情報収集が終わり次第合流してくれ」
「わかった、明後日までには終わらして合流できるようにするよ」
そんな話をしていると、姫姉が橘さんを連れてこっちにやって来た。
「二人でコソコソ何の話をしてるの?」
「慎夜の集めた情報を教えて貰ってるとこ」
「ああ美耶ちゃんとのデートの話ね」
「えっ情報収集しながらデートしてたのお前ら」
「別に、頼まれたから仕方なく付き合ってあげただけよ。別に深い意味なんてないわよ」
俺が色んなのに絡まれてる間に二人がイチャイチャしてたのかと思うとなんかムカついてきた。
「おかげさまで良い時間を過ごせました」
「慎夜、うらやましすぎるぞッ!俺なんか昨日は冒険者ギルドに行けば酔っ払いに絡まれて、それを排除したら今度は副ギルドマスター達に絡まれて、今日はゴブリンキングにまで絡まれたんだぞ」
「大変だったんだね。まあ明後日からは僕も合流するから」
この調子だと明日は何に絡まれるのやら。
「ちょっとマテ、明日は二人とも何をするんだ」
「僕は情報収集だよ」
「私はソコの馬鹿にデート誘われてるから」
「橘さん正直に教えてくれてありがとう。慎夜、テメェ明日もデート入れてんじゃねーか!」
「ち、違うんだ。デートじゃなくて、デートの振りをした情報収集だよ」
「そんな私とのデートは本気じゃなかったの」
「違う美耶ちゃんの事は本気で好きだよ」
「でもデートじゃないって言ったよね」
「それは言葉の綾っていうかなんて言うか」
橘さんが慎夜の事を言葉巧みからかっている。
この調子だと慎夜の奴また橘さんの尻に敷かれるな。
「じゃあ慎夜、明後日にちゃんとした報告待ってるからな。デートに集中して忘れるなよ」
俺はそう言い残しその場を姫姉と後にして夕食を頂いた。
今日の夕食も美味しく満足した俺はゴブリン退治で疲れた体を休めた。
テイムしたスライムの抱き心地が最高であったことをここに記す。