第153話 貴族からの質問タイム
前回のあらすじ
姫姉がダンジョンの秘密を漏らす
貴族たちが三つの派閥に分かれる
派閥ごとの会話を盗み聞く
王女様かローガン侯爵か、いっそのこと両方に告げ口してしまうか?
俺は盗聴して手に入れた三つの派閥に分かれた貴族たちの会話の内容が記録されている魔石を手にどう使うか悩んでいた。
俺の独断と偏見で決まっているのはバカ貴族たちの派閥を潰す事だけで、それ以外はまだ何も決まっていない。
そんなこんなで悩んでいると王女様を排斥して公爵に王になって貰おうとしている派閥の貴族の一人が声を上げた。
「王女様、お尋ねしたい事が御座います」
蒼い顔をしながらブツブツと何か呟いていた王女様は貴族からのいきなりの言葉に驚いたのかビクッと体を震わせ、周囲の目が自分に向いている事に気が付き慌てて口を開いた。
「っ!? んんっ、どうぞ質問を許可します」
「ありがとうございます。ではお尋ねしますがそちらの異世界から来た者に質問をしても宜しいですか?」
どうやら王族排斥派の貴族は俺に用があるみたいなので王女様が返答する前に俺が答えた。
「ふざけた事でなければ答えますよ」
俺がそう言うとまたも貴族たちが騒ついたが前回で理解したのか今度は直接文句を言ってくる者はいなかった。
騒つきが落ち着いたところで質問があると言った貴族が口を開いた。
「では質問ですが、貴方の国と我が国とで交渉の余地はあると思いますか?」
この貴族王女様と姫姉の会話でも聞いていたのか、ただ単に偶然なのか、王女様が姫姉に質問したのと似たような事を俺に質問してきた。
何か狙いがあるのか? と考えながらも姫姉が王女様にした返答と矛盾が出ないように気をつけながら答える事にした。
「たとえ相手が誘拐犯であっても誠心誠意謝れば少し位は交渉の余地はあると思いますよ」
俺がそう皮肉を交えて答えると質問をしてきた貴族の派閥の者たちは苦虫を噛み潰したような顔になりながらも何処か険悪な雰囲気が少しだけ薄れた様だった。
「貴重な意見ありがとうございます」
質問をしてきた貴族は少しだけムッと顔をしたが直ぐに顔を戻して落ち着いた様子でそう言い腰を下ろした。
質問をしてきた貴族が座ったので周りに目を向ける余裕が出来、他の派閥はと思いローガン侯爵の派閥の者たちを見るとこちらも苦虫を噛み潰したような顔の者がチラホラと見受けられたが質問をしてきた貴族の派閥とは違い険悪な雰囲気は無かった。
だがバカ貴族たちの派閥の者たちは違った様で、今にも怒鳴り散らしてきそうな位に顔を真っ赤にして俺を睨んで来ていた。
「何か言いたい事でも?」
火に油を注ぐ様な真似をしてくるバカ貴族たちの自分たちの非を一切認めないその姿勢に苛立ちを覚え、バカ貴族たちを睨み返して言いたい事があるなら言えと分かりやすく煽った。
「巫山戯るな! お前らの様な平民風情が貴族の為に働ける機会を与えてやっているのに何が誘拐だ!」
やはりバカはバカな様で煽り耐性が無いのか簡単に俺の煽りに乗って来た。
「ははっ、この国では他国の住民を誘拐して無理矢理働かせても良いんですか王女様?」
「っ?! ……誘拐は犯罪です。たとえ王族であっても罪になります。それに異世界からの人の召喚は国際条約で犯罪と決まっています。ですから私は父を捕らえました」
王女様は話を振られるとは思っていなかったのかオロオロしながらも震える声で俺の質問に答えた。
ただまさか異世界召喚が国際条約で犯罪と決まっているとは思っても見なかったが。
「だ、そうですよ」
俺が水を得た魚のようにバカ貴族どもにそう言うとバカ貴族たちは言葉に詰まってしまって何も言い返せないでいた。
「何も言い返さないならついでにこれでも聞いてもらいましょうか」
俺はそう言って徐に録音に使った魔石をひとつ取り出して再生した。
『
「こうなったらやはり王族を彼らの国に渡すのが一番なのでは」
「だが王族がいなくなれば」
』
俺が格好つけて再生したのに間違えてバカ貴族たちの録音では無く、王族を排斥しようとしている派閥の録音を流してしまった事に焦って不覚にも「あっ」と間抜けな声を出して魔石を無限収納に仕舞った。
再生された音声を聞いた全ての貴族が驚愕の表情を見せた後、王族の排斥と公爵を王にする為に動こうとしていた派閥の貴族たちが恨みのこもった目で俺の事を睨みつけて来た。
その視線に気がついた俺はすぐに気を取り直し、咳払いをして無言でバカ貴族たちの会話が記録されている魔石を取り出して何事もなかったかのように音声を再生した。
『
「なぜ我々があのように言われねばならんのだ! 忌々しい!」
「そうです、ここはやはり平民共を煽動して勇者を殺させましょう! あの災害の原因は勇者たちが来たことが原因なのですから」
「それは良い、教会の連中も勇者が原因だと神託が下ったと言っていたな」
「そうと決まれば各自早急に平民共に噂を流せ。これでこの国は我々のモノだ」
』
そこまで再生したところで一度音声の再生を止めて、悪だくみが俺にバラされて青い顔をしているバカ貴族たちを俺は笑顔で睨みつけた。