第148話 レアー様による説明
前回のあらすじ
ストーカー能力で姫姉に会いに行く
父からの贈り物を一緒に見る
女神が地球に降臨してた
1番の動画が終わった所で俺と姫姉は困惑の表情を浮かべながら顔を見合わせた。
「姫姉、どう思う?」
「どう思うって何よ?」
「いや、この動画が本物かどうかって事だけど」
「流石に宗弥さんがわざわざこんな手の込んだ悪戯するとは思えないんだけど」
「だよなぁ」
「それよりも他の動画も見てみましょ」
姫姉はそう言うとスマホを手に取り1番の動画を閉じてその横にある2番の動画を再生した。
工事現場でよく見る白い壁の前でヘルメットを被った女性が立っている映像が流れ、直ぐに女性が話し始めた。
「こちらは北海道の旭川市です。地震の後、突如この壁の向こうに現れた扉は現在自衛隊によって周囲を囲まれ中の様子を確認する事はできません。取材に来た当初はこの壁は無く、扉を見ることが出来ましたが直ぐに自衛隊の方たちがやって来て扉を囲う様に壁が建てられました」
それから何度かスタジオの人から質問があり、現場の女性がそれに答える掛け合いがあったものの、重要な情報は特になかった。
「……こちらからは以上です」
女性がそう言って締め括った後すぐに画面が切り替わり、今度はヘルメットを被った男性がまた白い壁の前に立っている映像になった。
今度はどうやら大阪府からの中継の様で男性が言うには大仙古墳の直ぐ近くにある公園の中に扉が現れたらしい。
こちらも自衛隊によって扉の周りに壁が設置されて中を見ることが出来なくなったとの事で北海道中継の女性とあまり変わらない情報しか得られなかった。
それから二回ほど場面が変わったがどちらも扉が現れた長崎県の雲仙岳の麓と沖縄県の恩納岳の麓でそこでも新たな情報は無く、中継の映像が終わり、スタジオで扉が現れた直後に撮られたと思われる映像が流れてそれにスタジオの人たちが自身の意見を言った所で動画が終わった。
「似てるな」
動画を見ていて気づいたが動画内の最後の方に流れていた扉がさっき王城前広場で見た扉と同じじゃないのかと思うくらいに似ていた。
とすれば本当に広場の扉と地球に現れた扉は繋がってるのかもしれない。
「似てるって何が?」
俺が一人で勝手に納得していると俺の呟きを聞いていたのか姫姉がそう訊ねてきた。
「ああ、いやこの映像にあった扉が王城前広場に現れた扉と似てたんだよ」
「へぇ、ならやっぱりその扉の向こうにあるダンジョンを攻略しないと帰れなさそうね」
「多分、でも帰り方が分かっただけでも一歩前進だろ」
「そうね、でもこっちとあっちを繋ぐダンジョンなんでしょ。そう簡単に行き来できるとは思えないんだけど?」
「そうだよな。簡単に行き来できたら今頃父さんたちが乗り込んで来そうだもんな」
「それはあり得るわね」
「でも来ないって事は果てしなく遠いか、来れない事情があるか」
「そのどっちもか」
「はぁ、頑張るしかないか」
「そうね、帰るためにも情報は必要よ。取り敢えずまだ他の動画もあるんだしそっちも見てみましょ」
姫姉はそう言って3番の動画を再生した。
動画が始まると自称女神レアー様が日本の総理大臣と記者会見をする様な部屋で並んで座っている映像から始まった。
「これより女神レアー様による会見を始めたいと思います」
司会者の男は緊張からか少し声を震わせつつ前代未聞の女神による記者会見の始まりを宣言した。
動画が始まって早々に色々突っ込みたい所満載だがまだ動画は始まったばかり。
姫姉も横で何か言いたそうにしているが俺は首を横に振ってもう少しだけ我慢して見る様に態度で示し、姫姉も溜息を吐きながら画面に目を戻した。
「本日はお集まり頂きありがとうございます。まずはサミット会場にて私が言った事が嘘では無いとお分かり頂けたと思います。それを踏まえあの扉について説明したいと思います」
自称女神レアー様がそう言うと会場が一気に騒つくがそれが落ち着く前にレアー様が口を開き衝撃の情報を落とした。
「まずあの扉ですが扉の向こうにはダンジョンが広がっています。そうあのゲームとかで出て来るあのダンジョンです」
レアー様の口からダンジョンという言葉が出て会場内の騒つきは一層大きくなり、更に困惑の声が漏れ聞こえてくる。
それもそうだろう。いきなりダンジョンが出来ました、なんて言っても異世界に行ったり何か超常的な事にでも遭遇したりした経験でも無ければ信じられないだろう。
俺がそんな事を思っているとレアー様は困惑の声を上げている記者たちに向かって口を開く。
「困惑するのは当然ですがこれはれっきとした事実ですので受けいれて下さい。ではダンジョンについて大まかに説明しますね。まずこちら側から入るダンジョンですが、勿論ダンジョンですので死の危険は有ります。がそれに見合うだけの財宝もあります。それとダンジョンですがこれから先増えるのでお気をつけ下さい。必要最低限の情報は話しました。後は皆様でダンジョンを攻略して世界を豊かにして下さい。では時間ですので私はこれで」
レアー様は言いたい事だけ言い立ち上がると光に包まれて一瞬の内にその場から姿を消した。
記者会見場は暫くの沈黙の後、我に返った記者たちの質問が残された総理大臣に押し寄せる。そんな所で動画は終わった。