第146話 世界の変革
前回のあらすじ
ウォレンさん目覚めて寝てる間の事を知る
司祭が神託を持ってくる
地震がまた起きて異世界に通じる扉が現れる
光が弾けたそこにはMITSULINと書かれた小サイズの段ボール箱が足下に落ちた。
「へぇーMITSULINって異世界まで送れたんだ……、っておかしいだろ!? なんで、どうやって来たのコレ?!」
あまりの現象についノリツッコミをしてしまった俺だが足下に落ちた段ボールを拾い上げ、上部を見てみるとわざわざ送り状が貼ってあり、依頼主の欄には凪滝宗弥と父親の名が書かれていた。
「はぁなんだ、父さんからか……。なら仕方がないか」
父親からの贈り物と分かり俺は父ならやりかねないと考えることを放棄して、まずは箱の中身が何なのか確認する為に箱を開けた。
箱を開けると中には封筒と緩衝材のプチプチに包まれ段ボールの底に丁寧に固定された一台のスマホが入っていた。
スマホと封筒を見比べてどちらから見るべきか悩んだが俺はまず封筒から見る事にして封筒を開封し中の手紙を取り出した。
『最悪の事態になったから迎えに行けなくなった。詳細はスマホの方に動画を入れているから絶対に姫菜ちゃんと見てくれ。それじゃ姫菜ちゃんとの異世界デート大いに楽しんでくれ』
「えっコレだけ……?」
取り出した手紙の上半分にも満たない量の文章に俺は何枚か読み飛ばして最後の一枚だけ読んでしまったかと思いもう一度手紙が入っていた封筒の中を確認するが、本当にコレ一枚だけしか封筒に入って無かった。
俺はもうちょい情報寄越せよというとかわざわざ冷やかしを手紙に書くなよとか色んな思いが湧いてきてイラッとしてつい手に持った手紙を地面に叩きつけて叫んでしまった。
「ふざけんなァァァ!」
俺が地面に叩きつけた手紙を執拗に踏ん付けていると俺の叫びを聞いて何事かと、王女様が驚いた様子で駆け寄り俺に話しかけてきた。
「ユーマ様どうかされたのですか?」
「いえ、なんでもないですよ」
「ひっ」
俺は王女様に八つ当たりしそうになるのを何とか堪えて返事をしたつもりだったが怒りが漏れていた様で、王女様は怯えた様子で小さく悲鳴を上げて一歩下がった。
俺は王女様を八つ当たりで怯えさせてしまった事にほんの少しだけ罪悪感を抱きながらも特に謝りはせず、踏ん付けていた手紙を拾い上げて王女様に話しかけた。
「王女様、俺は姫姉の所に行く用事が出来たので先に戻ります」
「ちょっと待って下さい! ユーマ様その手にもたれている物は何ですか? 先程は持っていなかったようですが」
俺は王女様にそう言って手紙の事を伝えに姫姉に会いに行こうとすると王女様が目敏く俺が手に持っている物に興味を示し、俺が姫姉に会いに行くのに待ったをかけてきた。
「いや、何でもないですよ」
俺はそう言いながらMITSULINの箱の中にあるスマホを無限収納に仕舞って何でもないかの様に王女様に箱の中身を見せた。
「封筒だけですか。他に何か入ってませんでしたか?」
「いやぁどうだったかな?」
俺は王女様のその質問にすっとぼけて答えた。
「怪しいですね。あの扉から出た光がユーマ様の手元に集まってその箱が出てきた様に見えたのですが?」
やっぱりあの派手なMITSULINの箱の登場は見られていたらしく王女様が物凄く怪しんできた。
「さて何のことやら?」
「ユーマ様、あの謎の扉から出てきた物ですので一度こちらでお預かりしてもよろしいですか?」
王女様は何故かMITSULINの段ボール箱をしつこく調べたがってくるので俺はスマホは抜き取ってあるのでまぁ良いかと思いつつ段ボール箱を王女様に渡す事にした。
「いいですよ、はいどうぞ」
「えっああ、ありがとうございます。コレがあの扉の謎を解く鍵になれば良いのですが……」
俺が素直に段ボールを手渡した事で王女様は少し戸惑った様子を見せたが直ぐに俺にお礼を言って段ボールに視線を落とした。
「っえ!? ユーマ様、ここに書かれている名前なのですが……」
段ボール箱を見回していた王女様はわざわざこちらの言語で書かれた送り状の依頼主の名前を見つけたのか、困惑した様子で俺に声を震わせながら尋ねてきた。
「あっはい父親の名前ですね、王女様も一度会った事ありますよ」
「っ!?」
俺は特に隠す必要もないので王女様のその質問に送り主の正体を父だと明かすと王女様は段ボール箱を手から落とし絶句しその場に固まってしまった。
「まぁ父親からの個人的な贈り物だったんですけど言い訳を用意してまでソレが欲しかったみたいですし差し上げますよ」
王女様が固まってしまい反応しなくなったのでそう言って揶揄って見ると王女様は気を取り直したのか勢い良く口を開いた。
「ちっ、違います! 私は純粋にあの扉から出てきた物だから国のトップとして調べる必要があると思ってコレを調べさせてほしいと頼んだのであって、ユーマ様からコレを奪い取るとか、コレが欲しいかったとかでは断じてありません!」
「あはは、そうですか。ならソレ返して貰っても?」
「はい、コレはお返しします。それと落としてしまい申し訳ありませんでした」
王女様は足下に落としてしまった段ボール箱を拾い上げ俺に渡してきた後そう言って頭を下げた。
「別にいいですよ、箱なんてどうせ捨てる物ですし。それじゃ今度こそ先に王城に戻りますね」
俺はそう言って王女様の返事を待たずに王城に向けて歩き出した。