第142話 ガネトリーの処刑
前回のあらすじ
清々しい朝を迎える
ハムエッグトーストを食べる
昼食後にガネトリーの処刑に立ち会う予定が決まる
コンコンッ。
「ユーマ様、メルリアです。お昼の時間になりましたのでお呼びに参りました」
朝食を食べ終えた俺は自室ベッドの上で自堕落にだらけていると部屋の扉をノックする音と共にメルリアさんが声を掛けてきた。
俺はメルリアさんの呼びかけに「直ぐに行きます」と言って寝癖が付いていないか確認をしてから部屋を出た。
廊下に出るとまだメルリアさんしかいなかったが直ぐに田中さんが部屋から出てきてそれから数分遅れで姫姉たちが部屋から出てきた。
廊下に全員が揃ったところで俺たちは食堂に移動した。
食堂に一番乗りをした俺たちは先に席着いておこうとしたところでウィンダムさんたちが食堂に現れ、そんなウィンダムさんたちと挨拶をしているうちに王女様とウォレンさんもやって来て昼食が始まった。
それから恙無く昼食を全員が食べ終え、食後の一服としてそれぞれがお茶を楽しんでいるところで王女様が気まずそうな表情で俺に話しかけてきた。
「ユーマ様、この後のことですが……」
「ええ参加しますよ」
王女様にわざと濁した表現で言われたが俺はわざわざ濁した表現をする必要がある事と言えばでガネトリーの処刑の事だと理解してその先の言葉を遮るように返事をした。
「では後ほど案内の者を向かわせますので部屋にてお待ち下さい。それでは皆様また後程」
王女様も俺が先に返事をしたことで安心したのか気まずそうな表情から落ち着いた様子になりそう言って席を立ち食堂を後にした。
王女様が食堂を退室してそれに続くようにウォレンさんやウィンダムさんたちも食堂を後にし、俺たちも自分たちの部屋に戻った。
俺は部屋に戻り武器の手入れをして十分ほど経った頃、部屋の扉をノックしてメルリアさんが声をかけて来た。
「ユーマ様、お迎えに参りました」
俺は直ぐに「今行きます」と返事して手入れをしていた武器を無限収納仕舞って部屋を出た。
廊下に出るとメルリアさんは直ぐに「ではユーマ様、ご案内いたします」と言って移動を始め俺はメルリアさんに連れられて一つの部屋に通された。
俺はなぜこんなところにと疑問に思いつつ部屋に入ると中にはエスデスを含むメイドたちが待ち構えており、エスデスの手には一度見た事のある質の良い服があった。
それを見て俺は着替えかと一瞬で理解し、着替えを受け取ろうとエスデスの持っていた服に手を伸ばすとそれを制すかのようにエスデスが口を開いた。
「ユーマ様にはまずここで着替えていただきます。ユーマ様はじっとしていてください」
そして有無を言う前に俺は着ていた服を一瞬の内に脱がされ、早業の如く質の良い服を着せられた。
「ユーマ様、勲章を胸につける必要がありますのでお出し下さい」
抵抗する間もなく着替えを済まされた俺をメルリアさんが最終チェックとして全身を見て回った後、勲章を付けるので出すように言って来た。俺は言われるがまま勲章を無限収納から取り出してメルリアさんに渡した。
「これで大丈夫ですね。ではユーマ様処刑の会場に参りましょう」
メルリアさんは受け取った勲章を俺の胸に付けて小さくうなずいた後、そう言って部屋の扉を開けた。
それから俺はメルリアさんの案内でガネトリーの処刑が行われる場所に向かった。移動している途中で薄々気が付いてはいたがやはり処刑場は王城前広場だった。
俺はその中でも城門の上に用意された席に案内され、そこには先に王女様とウォレンさんが座って待っていた。
「ユーマ様お待ちしておりました。これからガネトリー卿の処刑を行いますのでどうか最後までお付き合いください」
「ええ、その為に来ましたから。言われなくても、アイツが死ぬまでは付き合いますよ」
「そう、ですか。では最後までお付き合いください」
王女様は少し引き攣った笑みを浮かべながらそう言った後、騎士たちに指示を出し始めた。
今の状況では手持ち無沙汰でしかない俺はこれから処刑が行われる広場に目を向けた。
処刑が行われる広場の中央には断頭台があり、その周りには騎士たちが立っていて、それを囲むように国民が「家族を返せ!」「地獄に落ちろ!」「絶対に許さない!」など憤怒の言葉を叫んでいた。
俺は今にも暴動に発展しそうな状況にこのまま進めて大丈夫かと心配しながらもしもの場合は自分が動くすか無いかと考えながら待っていると一人の騎士が戻って来た。
「王女様、ガネトリーの処刑の準備が整いました」
「分かりました」
戻って来た騎士が王女様に準備が整ったと報告をすると王女様は一言そう言い、行き成りウォレンさんが立ち上がり口を開いた。
「注目! これより王女様がお言葉を発せられる、心して聞く様に!」
ウォレンさんの言葉で騒々しかった辺りは徐々に静寂に包まれ、一切声がしなくなったところでウォレンさんと入れ替わる様に王女様が立ち上がり一歩前に出た。
「これより国家に反旗を翻したガネトリー・ダイカーンとその家族、そしてそれに協力した者たちの処刑をラグアシア王国第一王女アウリア・フォン・ラグアシアの名において執行いたします」
王女様のその宣言と共に王城前広場に設置された処刑台にガネトリーが騎士によって連れられてきた。そして見せしめかのように断頭台にガネトリーの頭が固定され、それが見える位置に他の罪人たちを他の騎士達が連れて来た。
そして全ての準備が整ったと騎士が伝えに来たところで王女様が立ち上がり今まさに処刑の合図を出そうとしたところで何かが割れる音と共に世界が揺れた。