第141話 清々しい朝
前回のあらすじ
エスデスとスキルと魔法ありで試合をする
初見殺しの技でエスデスに手も足も出させずに勝利する
エスデスは俺が勇者召喚で前に来た事があることを知らなかった
「という訳ですのでエスデス、貴女も今後は勇者であるユーマ様を少しは敬いなさい」
メルリアさんは未だ訝しげに俺を見つめているエスデスに少しは態度を改める様にそう命じた。
「……はい。ユーマ様数々の無礼申し訳ありませんでした」
メルリアさんの命令にエスデスは渋々といった様子でそう返事をし、その後俺の方に向き直って俺に今までの態度の悪さについて謝罪をしてきた。
エスデスの態度についてはもうどうでもよくなっていたがここで簡単に許すと言うと増長しそうだなと考えていると、タイミングよくメルリアさんがエスデスに続いて頭を下げてきた。
「ユーマ様、私からも彼女の無礼、申し訳ありませんでした」
メルリアさんが頭を下げて謝罪をしてきた事で俺は良い落としどころになると考え、たぶんメルリアさんもそのつもりで頭を下げたんだと思いメルリアさんに感謝しながら口を開いた。
「頭を上げて下さいメルリアさん。俺はもう気にしてませんから」
「そうですか、それは良かったです。ではユーマ様、もう一試合しますか? それとも今日のところはここまでにしますか?」
俺が気にしていないと言うとメルリアさんは感謝の言葉を述べてから直ぐに話題をもう一試合するかどうかに変えた。
「今日はこのくらいにしておきます」
俺は時間も時間だしいい感じに動いて疲れたのでそう言って今日はここまでにするとメルリアさんに告げた。
「わかりました。ではお部屋までご案内しますね」
俺が終わりにすると言うとメルリアさんはそう言って俺を部屋まで送り届け、部屋に帰って来た俺はシャワーで汗を流してから眠りについた。
翌日、久しぶりの運動のお陰かよく眠れた俺は清々しい気分で目覚めた。
こんなに気分良く目覚めれたのは稀だなと思いつつ窓を開けて朝の空気を感じながら身支度を整えているとメルリアさんが朝食の時間を伝えに来た。
俺はすぐに返事をして身支度を整えてから晴れやかな気分で部屋を出た。
部屋を出ると俺と同じように部屋から出てきた田中さんの姿があり、俺が田中さんと挨拶を交わしていると姫姉たちが部屋から出てきた。
廊下に全員が揃ったところでメルリアさんの案内の下、俺たちはいつものように食堂に移動した。
メルリアさんに連れられて食堂に入ると今日は俺たちが一番乗りだった様で、食堂内にはまだ誰の姿も無かった。
俺たちかいつもの席に座って待っていると数分もしない内にウィンダムさんたちがやって来て、ウィンダムさんたちが席に着いて俺たちと朝の挨拶を交わしているとウォレンさんと王女様がやって来た。
ウォレンさんが席に着き、最後に王女様が席に着いて全員に挨拶をしたところで食事が運び込まれてきて、食前のお祈りと頂きますをして俺たちは朝食を食べ始めた。
今日の朝食はきつね色に焼かれたトーストとクルトンが入ったコーンスープ、それにカリカリのクルトンとカリカリのベーコンが入っていて見るからに美味しそうなサラダと少し厚めに切られたハムの上に卵が二つ乗ったハムエッグが全員の前に並べられていた。
俺はまず野菜からとサラダに手をつけた。
シャキッとしたレタスと玉ねぎにシーザーサラダドレッシングがかけられていてカリカリのクルトンとベーコンとも相性が良くパクパクと食べ進められる美味しさだった。
サラダを食べ終えた俺は次にコーンスープを一口飲んでみた。
美味い、熱過ぎずそれでいて温い訳でも無い。丁度良い温かさで口一杯に広がるコーンの甘さを最大限に感じれる。これぞまさにコーンスープといった一品。
俺は心の中でそんな感想を思いながら次はとハムエッグに手を伸ばした。
少し厚めに切られたハムと目玉焼きの白身をナイフで切り分けて一口。これも美味い、塩胡椒でしっかりと味付けがされていてこのままでも充分美味しい。
だがこのハムエッグにはまだ進化を秘めている。なぜならハムエッグの側にはケチャップの入った小さな器が添えられているのだから。
俺はまたハムエッグを一口大に切り分けて今度はケチャップを付けて口の中に放り込む。
うん、美味い。塩胡椒だけとはまた違った、ケチャップの酸味と旨味が更にプラスとなって美味さが増している。
そしてここまで来ればやる事は一つ。俺は残ったハムエッグをトーストの上に乗せて更にそこにケチャップをかけて齧り付いた。美味すぎる。こんがりと焼かれて香ばしい香りの立つトーストに旨さのハーモニーを奏でるハムエッグが絶妙にマッチしている。
俺はコーンスープを途中に挟みながらハムエッグトーストを一心不乱に食べ進め、誰よりも先に朝食を食べ終えた。
どれも甲乙付け難いほど美味しくて満足のいく朝食だった、ご馳走様でした。
そして俺が食後のコーヒーを飲んで優雅な時間を過ごしていると王女様が話しかけて来た。
「ユーマ様、本日の午後からガネトリー卿とその周りの者たちの処刑が執り行われますがユーマ様はどうされますか?」
食後の余韻を台無しにする様な話で少しうんざりしながらも表情には出さず、俺は王女様のその質問にどう返答しようか悩んだ。
わざわざ人が処刑されるのを見に行くのもなぁと思いつつも、見届けに行ってしっかりガネトリーが処刑されるのをこの眼で確かめないといつの間にか替玉と入れ替わってたりしてまた面倒な事になりそうという不安も頭に浮かんでくる。
少しの間どうするか悩んだがやっぱり不安の種は潰しとくかと行く事にした。
「分かりました、見に行きます」
「そうですか、では昼食の後に案内人を遣わせます。それでは私はこの辺で」
王女様はそう言い全員に一礼してから食堂を後にした。
その後をウォレンさんが追うようにして食堂を後にし、ウィンダムさんたちも俺たちに挨拶を交わしてから食堂を後にした。
残された俺たちもメルリアさんに連れられて食堂を後にし、各自自分たちの部屋に戻っていった。