表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/267

第140話 エスデスと稽古2

前回のあらすじ

エスデスの説教が終わる

エスデスと模擬戦

アクティブスキル無しでエスデスに挑む

「参り、ました」

 武器を叩き飛ばされたエスデスは不服そうに降参の言葉を口にした。

 それを聞いて俺は構えを解き、エスデスに話しかけた。


「いやぁ良い動きでしたね。負けるかと思いましたよ」

「皮肉ですか?」

 俺が素直にエスデスの動きを評価するとエスデスは苦虫を噛み潰したような表情でそう言ってきた。

「いや皮肉ではなく。まぁまだまだ始めたばかりですし、一試合しましょう。今度は他の武器とスキルも使うんで」

「えっ……。まさか、先程はスキルの補助を使っていなかったと……?」

 俺の言葉にエスデスは心底驚いた様子で目を見開きあんぐりと口を開いた後、あり得ないとばかりにそう言って来た。


「ええ、さっきのはスキルに頼らない純粋な俺の力量ですよ」

「そんなまさか……。いきなり目の前に現れたりあんな速い剣戟けんげきがスキル無しで出来るはず……」

「いやぁ、それほどでも」

「くっ、分かりました。私も今度は本気で行かせてもらいます!」

 俺が身につけた技術を高く評価されたのが嬉しくてつい顔に出してしまった。

 それを見たエスデスはさらに悔しそうな表情を見せ、今度こそはと意気込んでそう宣言した。


「そうですか、じゃあ早速始めましょうか。メルリアさん、合図をお願いします」

 俺がメルリアさんにそう頼むとメルリアさんは頷いてからエスデスの方に視線をやり、エスデスが木剣を構え頷いたのを見て試合開始の合図を放った。

「試合、始めッ!」


 俺は開始の合図早々に無限収納アイテムボックスから魔銃まじゅうを取り出し刻印魔弾を殺傷能力が低く目では見えないエアバレットにセットしてエスデスを撃つ。

 だが流石に目の前で魔銃を取り出せば警戒されるのは当たり前でエスデスはサイドステップでエアバレットを避けた。


「ふぅまさかユーマ様が魔銃までお持ちとは。ですが魔銃は発動時に刻印が魔力で光りますし、魔力感知に優れた者なら見なくても発動は分かります。それに直線上にさえ立たなければ当たりません。一対一の試合では余り良い武器とは言えませんね」

 エスデスは余裕綽々といった様子で魔銃の特性を事細かに説明してきた。


 俺もそれ点については知っていたので特に反応はせずエスデスが攻めてこようと動くタイミングでそれを潰す様にエアバレットを撃ち続けた。

「幾ら撃っても当たりませんよユーマ様」

 エスデスは少し鬱陶うっとうしそうな表情を見せながらも俺が撃ったエアバレットを簡単に避けていく。

 このままだと魔力の無駄遣いなので今度は別のスキルも使って揺さぶりをかける。

(右だ!)

 俺がスキル念話通信を使いエスデスの脳内に直接話しかけるとエスデスは俺の言葉に見事に引っ掛かり首を右に向けた。

 俺はその僅かな隙に闇魔法ハイディングを使いながらエスデスの左側に回り込んだ。


「消えた?!」

 作戦が上手くいった様でエスデスは見事に俺を見失った。

 エスデスが俺を探して首を左右前後に振っているが俺も見つからない様にエスデスの視線から逃れる様に足音を立てずに動き、少しずつ近づいて木刀が届く位置まで来たところでエスデスの首筋に木刀を当てて勝利宣言をした。

「俺の勝ちです」


 俺が言葉を発したのが原因かはたまた木刀で触れたのが原因かハイディングが解けてエスデスはやっと俺の存在に気が付いた。

「なっ、いつの間に……」

「それは秘密です」

 俺がそう言うとエスデスは悔しそうな表情を見せて木剣から手を離し両手を上げ降参した。

「この魔力の残滓、姿を消す魔法ですね。それにユニークスキルの中で簡単に手に入り使い手の多いユニークスキルの念話ですね。まさかそんな魔法とユニークスキルまで習得しているとは……」

 ミステリアスな雰囲気を出しつつはぐらかしたのに一瞬で魔法と念話だとバレた。


 て言うか念話が簡単に手に入るユニークスキルって、簡単に手に入るんだったらもうユニークですらないだろ。それならもう普通のスキルで良いじゃん。俺このスキルにスキルポイント5使ったんだけど。

 ユニークスキルの念話の話にちょっとだけ凹み遠い目をしつつエスデスに話しかけた。

「あはは、まぁね。手札は多いに越した事は無いから」

「そうですね、やれる事が多ければイザという時に助けになるかもしれませんしね」

 俺の言葉を支持する様にメルリアさんがそう言って近づいて来た。

「それにしてもユーマ様には驚かされます。剣技が凄い事は把握しておりましたが、魔法にスキルをここまで使うとは。やはり異世界から来た勇者様ですね」

 メルリアさんがそう言って俺の事を褒めるとそれを聞いていたエスデスが頓狂とんきょうな声を上げた。


「えっ、ユーマ様が勇者!?」

「いえ違います」

 どうやらエスデスは俺が異世界から召喚された事を知らず、メルリアさんは俺が勇者だと誤解していたので勇者であるという紹介は間違いだと否定した。

「えっ、えっ……。団長ぉ、一体どっちなんですかぁ?!」

 エスデスはメルリアさんの言葉と俺の言葉の矛盾に頭を抱え、最終的にメルリアさんにどっちが本当なのか尋ねた。

「ユーマ様は我が国の勇者召喚でこちらにお呼びしていますので勇者様です」

 メルリアさんはそう言って俺が勇者であると言い切った。

 だが俺としては勇者なんて恥ずかしい呼ばれ方は絶対に嫌なので反論をすることにした。

「いえ待って下さいメルリアさん、俺の称号に勇者は存在しません。なので俺は勇者ではありません」

「それは勿論存じております。ですがユーマ様は勇者召喚で我が国にいらして勲章を授与されるほどの功績があります。私は称号ではなく行動によってユーマ様を勇者様として認めています。ですのでユーマ様は勇者様です、異論は認めません」

 メルリアさんはそう言って俺の反論を潰し、メルリアさんの中では俺が勇者である言い切った。

「あっはい」

 あまりのメルリアさんの熱量に押され、俺は折れてメルリアさんの意見を受け入れて仕方なく勇者呼びを受け入れることになった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ