第129話 ガネトリーの尋問の準備
前回のあらすじ
朝食を食べる
王女様がガネトリーの尋問をこの後すると言う
迎えが来るまでの間コピーした書類で予習をする
コンコンッ。
「ユーマ様、メルリアです。お迎えに上がりました」
扉をノックする音が聞こえた直ぐ後に扉を叩いたメルリアさんから俺に要件が伝えられ、それを聞いた俺は直ぐに「今行きます」と返事をした。
その後、俺は手に持って読んでいた書類を無造作に無限収納に仕舞い、軽く身だしなみを整えてから忘れ物が無いか最後の確認をして部屋を出た。
部屋を出た俺はメルリアさんに「お待たせしました」「それほど待っていませんよ」と社交辞令を言い合った後、王女様が待っている部屋までメルリアさんに案内して貰い入室した。
部屋に入るとそこには机一杯に広げられた紙の束と椅子に座って俺が来るのを待っていたであろう王女様とウォレンさんの姿があった。
「ユーマ様、ご足労いただきありがとうございます。そちらにお掛け下さい」
王女様は部屋に入って来た俺に社交辞令の言葉をかけつつ椅子に座るように促し、俺はそれに従って空いている席に座った。
そして王女様は俺が座ってから一拍置いて口を開き話し始めた。
「ではこれからガネトリー卿の尋問の内容について詰めていきたいと思います。早速ですがユーマ様、これとこれと後はこれに目を通して頂けますか?」
王女様は尋問の準備をすると宣言した後、机に広がっていた書類の山から三つの束を抜き取り俺に一通り読むようにと手渡してきた。
俺も情報の共有は必要な事だと思い「わかりました」と王女様に返事をして王女様から手渡された書類をパラパラっと斜め読みした。
一つ目の書類を読んでいる途中でなんか読んだことあるなと思い最後の方まで飛ばして読み、二つ目と三つ目の書類の最初と最後の部分だけ読んでこの書類の束がここに来る前に部屋で予習として読んでいた書類の一部だと気付いた。
これならさっき読んだばかりで頭に入っているし、読みたかったらわざわざこれを読まなくても自分の持っているのを出せばいいなと判断して、渡された書類を王女様に返しながらその事を伝えるために口を開いた。
「この内容ならここに来る前に確認して頭に入ってますのでこれはお返しします」
「は……。んんっ、それはあり得ません! 書類は全てこちらにあるというのにここに来る前に確認したなど不可能です!」
俺が書類を返しながらもう頭に入っていると言うと王女様は酷く驚いて口を開けたまま少しの間呆然としていたが直ぐに気を取り直し、そんな事は不可能だと反論してきた。
俺は説明不足だったかと思い王女様の反論に対しての答えとして無限収納から王女様に返した書類と同じ物を取り出して見せながらどうやって確認したか説明をすることにした。
「実はこの通り王女様たちに渡した書類はもしものことも考慮して全部コピーして無限収納の中にあります。ですのでここにある書類が無くなったりしても大丈夫ですよ。それと一応言っておきますが王女様に渡したそっちが本物でこっちがコピーです。コピーした物を渡したりはしてないので安心してください」
俺がお道化た様子で説明と王女様に渡した方が本物だと伝え終えると王女様は口をあんぐりと開けて唖然とし、一連の話を傍観して聞いていたウォレンさんは「ククッ」と笑いを堪えていた。
それから少しの間、静寂がこの場を包んだがそれを引き裂くように王女様が口を開いた。
「いつの間にそんな事を?」
王女様が尤もな疑問を投げかけてきたがわざわざ馬鹿正直に手の内を晒す必要も無ければ、話す義務もない。
そう判断した俺はこの話で時間を使うのは無駄だなと思い本題に戻るように王女様に促すことにした。
「それは言う必要ないでしょ、それよりも本題を続けましょう。それで今日はこの三つ書類の事について尋問を行うって事で良いですか?」
「んんっ、待って下さい、本当なら午前中はユーマ様にこれらの書類に目を通して貰ってから午後に尋問を行うつもりでした。ですがユーマ様が本当に書類に目を通されているのであればもう少し内容を詰めたいと思います。ところで書類は何処まで読んでいますか?」
王女様も俺にそう言われて本題を思い出したのか咳ばらいをした後、俺がどこまで把握しているのか質問をしてきた。
「ああそれなら交渉する前に姫姉と一緒に一通り目は通してますよ」
「そうですか……、ではこれとこれについても読んでますか?」
俺が王女様のどこまで読んでいるかの質問に一通りと答えると王女様は少し考えるそぶりを見せた後、新たに二つの書類の束を渡しながら内容を把握しているか尋ねてきた。
俺は王女様に渡された書類を流し読みして、その内容が今朝読んだ物の中に含まれていてまだ頭の中から消えていない事を確認した。
「これなら大丈夫です、しっかり覚えてますよ」
「そうですか、では本日はこれら五つの書類についてガネトリー卿を尋問したいと思います。それでは尋問の内容を詰めてきたいと思いますのでもうしばらくお付き合いください」
俺の返答に王女様は何か呆れた者を見るような目で俺を見つめながら尋問の内容を詰めていくと言って、俺たちは昼食の時間がやって来るまでみっちりとどういう質問をするか、そしてどの順序でしていくかを話し合った。
新年あけましておめでとうございます。
今後もこの作品をよろしくお願いします。