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第125話 スライムの館で侯爵に会う

前回のあらすじ

街で食べ歩きをする

露店で買い物をする

お土産を買いあさる

「よし姫姉たちのお土産も大量に買ったし、今度こそスライムの館に行くか」

 俺は今度こそ寄り道をしない様にそう呟いてスライムの館に向かった。

 スライムの館に向かうまでに目を引かれる露店は現れず、俺は寄り道をせずにスライムの館に辿り着いた。


 スライムの館に辿り着いた俺は館に入るためにドアを開けようと手を伸ばすと俺が触れる前にドアが開かれ、中からスライクさんが顔を出して声をかけてきた。

「いらっしゃいませユーマ様。本日はお一人ですか?」

「まぁはい、今日は別行動でして」

「そうでしたか。立ち話もなんですしどうぞお入りください」

 俺はスライクさんに促されて館の中に入り、日当たりの良い窓際の席に通されスライクさんは一度奥に行ってからティーカップとティーポッド、それにクッキーを手に戻って来た。


「お待たせしました。それで本日はどのようなご用件でしょうか?」

 スライクさんは手早くティーカップにお茶を注いだ後、俺の対面に腰掛けてそう話を切り出した。


 俺はスライクさんのその発言といい俺が開ける前に扉を開けた事といい、エスパーかしくはそれに類するスキルでもあって、実は全部分かっていて聞いてきているんじゃないかと思いながら口を開いた。

「今日はスライクさんにこの間助けて頂いたり、ウォレンさんに会わせて頂いたりしたお礼を言いに」

「お礼ですか、あれは私の方が勝手にしたことですのでお気になさらずとも良かったのに」

 俺がお礼を言いそびれていてそれを言いに来たとスライクさんに伝えるとスライクさんは笑みを携えながらそう答えてきた。


「いや流石にそれは不義理な気がするので……」

「そうですか、ユーマ様はそう言うところを気になされるのですね。ではユーマ様の言葉、心してお聞きしましょう」

 スライクさんは俺を揶揄からかうようにそう言い居住まいを正した。


「そう言われると恥ずかしいですが……。っん、では改めて、この間は本当に助かりました、ありがとうございます」

 俺はスライクさんの言葉に少し照れながらスライクさんに倣い、居住まいを正して出来るだけ感謝の気持ちが伝わるようにお礼の言葉を言った。

「お礼の言葉、確かに受け取りました。この後ご予定が無いのでしたらゆっくりしていってくださいお茶とクッキーは私からのサービスです。ではごゆるりと」

 スライクさんは俺のお礼を笑顔で受けてくれた後そう言って席を立ち、スライクさんが使っていたティーカップとティーポッドを持って奥に消えていった。


「はぁ、変に緊張して喉が渇いた。……ふぅ、いつもながら美味しい」

 残された俺は緊張の糸が解けて喉のかわきに気付き、スライクさんが用意してくれたほんのりと温かみが残った紅茶を飲み人心地ついた。

 それから少しの間紅茶とクッキーを楽しんでいると誰かが背後からこちらに近づく気配を感じ、レはすぐさま全域マップと透視盗撮を同時に使い武器の類が無い事を全方位から確認しつつ、集音盗聴を使い気配の主が魔法を唱えたり、仲間に指示を出したり受けたりしていないか気を配り振り向いた。


「ほぉ、この距離で気付くか」

 俺が振り向いた視線の5m先には初老の男が一切の隙無く近づいて来ており、俺と視線が合うと立ち止まり眉を上げ独り言のようにそう呟いた。

 俺は初老の男に敵意をまだ感じなかったが怪しい雰囲気を出していたので念とためと鑑定を使った。


名前 リ@ア%&*

性別 無

年齢 000

種族 RTY


 俺はその鑑定結果を見て一瞬訳が分からずほうけたが、直ぐに失敗したと思い至り今度は鑑定と解析を同時に使った。

 だが結果は変わらず、正しい情報が出てこなかった。

 俺はその結果に初老の男に対する警戒を最大にして、いつでも武器を取り出し対応できるように立ち上がり両手を空けて構えた。

 俺が構えたのを見てか初老の男はニヤリと笑い、再び歩を進め俺に近づき始め、俺の1mほど手前で立ち止まり口を開いた。


「初めまして、私はローガン、ローガン・フォン・アルガシアだ。この国では侯爵の地位を王より賜っているしがない貴族の一人だ」

 初老の男は笑顔を浮かべながらそう自己紹介をしてきて、男の自己紹介を聞いた俺は色んなことが脳内を駆け巡った。


 どこまで信用すべきか、鑑定や解析では本名はおろか性別や年齢すらも分からなかった相手だ。何を考えて俺に接触してきたのか、目的が一切分からない。こうなったらいっそのこと解析のスキルレベルを上げて再挑戦すべきか。判断に迷うがとりあえず時間稼ぎとして何か言わないとな。


「これはどうもご丁寧に。俺は凪滝優真、ただのDランク冒険者だ」

 俺は悩んだ挙句に意趣返しとしてそう答えるとローガンと名乗った男は噴き出して笑い出した。


 俺は男が笑っている隙にステータス画面を開いて解析に残っているスキルポイントを注ぎ込んで解析のレベルを8まで上げ、ローガンと名乗った男に鑑定と解析を同時に発動して情報を読み取ろうとしたが読み取れたのはこれだけだった。


名前 ローガン・フォン・アルガシア

性別 男

年齢 56

種族 人族

職業 魔剣士Lv.26

レベル 73

状態 老化(ステータス低下)


 ローガンのステータスの一部を読み取れた俺だったが今度は読み取ったステータスと自分のステータスを見比べてどう動くか思考を巡らせた。


 あの職業はまだ見たことが無い。たぶん俺の予想だと魔法が使える剣士ってところだろうけど、レベルも職業レベルも高い。老化の状態異状でどこまでステータスが下がっているか分からないしここはまだ動かないほうが良いか、いやこのままでは事態は一向に好転しない。ここはこっちから何か手を打った方が良いのか。


 俺がどう動くか悩んでいると笑い終わったのかローガンの方から声をかけてきた。

「いやなかなかユーモアのある少年だな君は。それで私のステータスを見て私が嘘を言っていないと分かってくれたかい?」

 そうローガンに言われて俺は愕然がくぜんとした。

 今までは鑑定しても相手が気付いた事は無かったはずなのに、このローガンは俺が鑑定した事に気付きそれを指摘してきた。


「あぁ、貴方がローガン・フォン・アルガシアなのは分かった。それでそのローガンさんがただの冒険者である俺に何用ですか?」

 俺は動揺を隠すように鑑定した事を認めたうえでローガンが何の目的で俺に接触してきたのか尋ねた。

「ふふっ、ドラゴンを倒した貴方がただの冒険者ですか。他の連中共は貴方の力の恐ろしさを理解していないようですが私は違う。君に一つ問います。君はそのスキルと王女様から与えられた権力でこの国をどうするつもりだ?」

 ローガンは他の貴族と自分は違うと言った後、警戒の眼差しを俺に向けながら俺の強みであるユニークスキルと権力者から身を守るために王女様から得た権力を持って何をする気なのかと問うてきた。

 俺はローガンのしてきた質問にどう答えるべきか返答に困った。


 ローガンの口ぶりから察するにもしかして俺が国を乗っ取ろうとしているって勘違いされてるのか。確かにあの王女様から貴族連中に対する保険として契約を結んで貰ったけど、まさかここまで警戒されるとは。

 はぁ、一応問答無用で攻撃仕掛けてくる様子ではないし、このまま本当のこと言って帰って貰おう。


「俺はこの国をどうこうするつもりは無い。俺が王女様と契約書を交わしたのは自分たちの身を守るためだ」

 俺がきっぱりとそう言い切るとローガンはしばらくの沈黙の後、俺に向けていた警戒の眼差しを解き「そうか、なら今は君のその言葉を信じるとしよう」と言うと身を翻して、スライムの館を出て行った。



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